12日目


 鎧の錆が気になったので研磨に出した。

 貸し鎧はどれもこれもサイズが合わない。


「それが一番大きな鎧でね」

「だったら要らぬ」


 鎧を脱げば服はそこらの町民と変わらない。

 ちなみに、ちゃんと毎日洗濯している。

 また加工場の仕事にいそしむことになった。


「屈辱だ……」

「真面目に働いてる人たちに失礼では」

「私は騎士だぞ。ここで魚を捌いて一生を終えられるか!」

「手を動かす」


 思わず熱くなってしまった。

 胸で手元は隠れるが心眼さえあればなんのことはない。

 国民においしい塩辛を届けるためにクラーケンを捌き続ける。




 仕事が終わった。

 適当な屋台で買ったものを広場に置かれた簡易机に並べる。

 飲まずにやってられるものではない。

 隣ではラーナがホットミルクを冷ましながら飲んでいる。


「加工場のおばあさまに誘われましたが、断りました」

「モテモテではないか」

「自分には監視の役目がありますので」


 ロバ竜が大気中の魔力を咀嚼している。


「ムッチャムッチャ」


 子供と謎の生物を連れて新たなパーティに入るのは難しい。

 どうにかして別行動が取れないかと考えながら、つまみで腹を満たす。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る