第24節 一人称や三人称って?




 小説を書く際によく詰まりがちなものの一つに、人称があります。

 地の文の視点の話ですね。この節では二人称(読者に語りかけるようにして物語を進行するもの)は説明しません。というかできません……すみません。


 人称の違い、使い分けについてここからは話していきます。

 

 前提として、小説は『カメラに映ったもの』だけを描写します。

 今は意味が分からないと思います。先に行きましょう。


 まず一人称。

 地の文が、登場人物の視点で物語が動いていく方式です。カメラをある一人の登場人物の視点に合わせて動かし、ファインダーに見えたものを綴っていきます。


 私はキーボードで素早く文字を打ち込むと、エンターキーを押下した。


 ……のようなものです。簡単に言うと、僕は、や私は、です。

 この方式が意外に難しいのは「僕や私」以外の心情を描写できない点にあります。「彼女はそう思った。」などの文章が使えないという事ですね。


 また、「僕や私」が見えているものしか描写できません。

 カメラに映るものしか描写できないからですね。

「僕や私」がいない場所で起きた出来事は、場面自体を切り替えて別の誰かの視点で描くか、誰かからそれを聞いた、といった方法でしか説明できません。


 また、一人称は地の文を主人公視点で書くことになる都合上、あまりに難しい言葉を使うと違和感が生じます。

 ──私は汪然として涙を流した。とか、違和感がありますよね。

 私の頬を一筋の涙が伝った。等の方が無難です。


 この使い分けがまた難しいのですが……ここで生じる違和感は、読者の小説への没入感を阻害してしまう恐れがあります。頑張って慣れましょう。

 とりあえず、やや難しい言葉を使いたい場合は三人称がおすすめです。



 次に、三人称です。「彼は、彼女は、佐藤は、香織は」です。登場人物の名前や代名詞等を使って物語を進める方式になります。神視点とも呼ばれます。

 これがまた難しいです。特に、風景などの描写が難しい点が挙げられます。


 一人称と違ってカメラを動き回らせることができるため、様々な場所の説明ができる反面、読者の頭の中にその風景を想像させることが非常に難しいのです。

 三人称を使う場合、これを解消する簡単な方法が二点あります。


①基本的には主人公の視点を追って描写する

②情景描写は大きいもの→小さいもの。或いは関連度の順で描写する


 ①は、疑似的な一人称として小説を綴る方法になります。一人称よりは臨機応変に描写できるため、私はこの方式が気に入っています。


 ②については、一人称でも応用できますが、情景描写を分かりやすいものにするためのやり方です。視界(カメラ)に映るものを、大きい順・関連度順に書きます。


 机上にはデスクトップがある。すぐそばにはワイヤレスのキーボードとマウスが置いてあって、その隣には卓上クーラーが涼しい風を吐き出している。

 デスクトップに繋がれているゲーム用コントローラーは、最近使われていないのか机の隅でやや埃を被っていた。


 ──のように、まず机上で一番大きいパソコン→関連するキーボードやマウス→次に大きい卓上クーラー→ゲームコントローラーと続きます。


 この描写方法をマスターしてしまえば、情景描写には困らないかと思います。


 少し複雑な話になってしまいましたが、覚えておくべきは、


・カメラがどこにあるのか


 だけです。それさえ守れば、一人称でも三人称でも書けます。


 ……しかし、数多あるWeb小説の中には、一人称と三人称が入り混じっている作品が見受けられます。作者様自身も気付かれていないこともあります。

 これは読みづらさを感じさせるだけでなく、やはり違和感のタネになります。


 書いていて、地の文がなんだかおかしいな? 感じた際、人称がごっちゃになってしまっている可能性があります。

 文章表現は人それぞれだからいいんだ! という方はそれでもいいかと思いますが、やはり人称が統一されていない小説は敬遠されてしまいやすい傾向にあると思います。ちゃんと、自分に合った片方の人称で統一しましょう。




 まとめです。


・一人称は、「僕や私」の見えている(考えている)ものしか描写できない。

・一人称では難しい単語をあまり使えない。

・三人称はカメラの位置が固定でないため難しい

 →・基本的に主人公の視点を追って描写する

  ・情景描写は大きいもの→小さいもの。或いは関連度の順で描写する。

・どちらの人称にせよ、「カメラの位置」を意識して描写する。

・人称は片方で統一する(ごちゃ混ぜにしないほうがいい)。


 以上です!




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