5.亡骸を見つめる
結界の先にある扉を開くと巨大なカプセルが並んでいた。それぞれの天辺に巨大な鎖が繋がっている。
これで神父モルーを囮にし、亡骸に干渉するつもりだったらしい。
そのうちの一つに俺とケイは入った。
不吉な夢を思い出しながらも帰る気にならなかったのは、俺も知りたかったのかもしれない。
「海と繋がる暗渠があるはず」
ケイの声。ガラス床を覗くが暗い闇が澱んでいるだけだった。
「見えるか」
「ちょっと待って」
青い光。
「待て」
カプセルが大きく揺れた。
強く、引きよせられている。
もう一度大きく揺れた。カプセル全体にヒビが走る。
鎖が音を立てて送られていく。下へと、降りていく。
次の一撃は絶えられない。
俺は気の層を厚くし……
「ちょっと待って、アキ」
ケイが俺の髪を引いた。
「あなた魔術使えたの!?」
「使ってない」
「これ!!」
「魔術じゃなくて、なんというか、気功だ。お前たちとは体系が違う。瘴気の除去にはならない」
「何で今まで使わなかったのよ!」
「死ねないからだろ!」
間の抜けたやり取りのあと、ケイがふと真面目な顔をした。
「今は?」
「まだ死にたくない」
食われてはならないと無意識が警告する。カプセルの底を割られぬよう、気を込める。
三度、四度と衝撃波が来る。黒い水が近付いてくる。俺たちが降りているだけではなく、水位も通路を飲み込んで上がって来ている。飛沫がガラスを叩く。
助かりましたわ。あたしだけではもたなかったので。
ティナの念話。魔術でカプセルを引き上げようとしてくれている。
「喜べ。どうやら奴め、聴覚はあるらしい」
いつの間にか乗り込んでいたローディが言った。
「次が最後の機会だ。外へ出て飛べ。それしか方法はない」
「お前は」
「当然連れていけ。お前のように死ぬ気はない」
鯉口に手をかけたまま言う。
「勇者を信じてみよう」
ローディの口角が僅かに上がったように見える。
「アキ」
ケイの呼びかけに、俺は頷く。
「すまん、お前たちだけで逃げてくれ」
カプセルは半分ほど沈んでいる。
「アキ! どういうつもりで」
「ローディの剣だけでは食い止められない」
「何?」
「俺を信じると行っただろう。ケイも、飛行魔術くらいわけないよな」
二人を頼む。上層にいるティナへ届くように念じる。
赤銅色の眼が俺を見ている。
「生きて帰って」
ケイの言葉には応えなかった。
二人が飛ぶ。
俺は青い光に向かって、潜る。
背後から迫る気配があった。
魔術の竜巻に乗っ 沈んで来たのは錆びた戦斧 った。
それを掴 取 。
夏の よ な青い 中心に、白い が える。
長い 髪。
四 に 貼 い 異 姿。
突き立 。
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