第3話  フィニアスとの出会い

 わたしの名前は、エリア-ド、フリードリヒ。みんなは縮めてエリーと呼ぶ。


 大陸の西の国、アルデバラン王国の貴族の家系の生まれだ。

 家名だけのために王族の母上と結婚をした父は、公然と外に女を作った。当然、両親は不仲であったが、そんな夫婦にもわたしが生まれ、少しは家に足が戻るのかと思えば、愛人の方に先に子供が出来ていたのだった。王族の母には、我慢が出来なかったのだろう……。わたしは、母に溺愛されて育つも、 結局父母は、わたしが13歳の時に離婚してしまった。家のために父方に引き取られたが、早々に再婚をして愛人を家に連れ込んだ父に愛想が尽きて、家を出たのは17歳の時だった。


 世の中、17歳の男の子が一人で生きて行くのは簡単ではなかったが、幸い、わたしには剣と弓のたしなみがあった。


 この世界には、魔物が蔓延はびこっていて、らを駆除するクエストを受け付ける冒険者ギルドが存在するのだ。


 わたしは、父の友人の伯爵に推薦状を書いてもらって、初めて冒険者ギルドの登録所へ行った。

 17歳で一人立ちは、早いと父は反対したが、義母との仲がしっくりいかなくて、義兄との関係もギクシャクしたものであった。

 何より愛してくれた母親を追い出した父が許せなかったんだ。


 そして、門をたたくことになった冒険者ギルドにがいた。

 フィニアス・ブラン。

 本名なのかも怪しいものだ。

 長い銀髪、銀色の瞳の長身の謎の美少年。

 人を見下した態度は、その時から変わらない。

 東方の国の出身だそうで、本人も自分の事はあまり詳しく話そうとしなかった。


 わたしは、フィニアスの女と見違えるほどの美貌に見とれてしまった。


 フィニアス自身も、冒険者ギルドの登録所で、みんなに注目されて戸惑っていた。


「なんでぇ、なんでぇ!銀髪が珍しいのかよ!見せ物じゃねぇぜ!」


 超絶世の美少女から、わりと甲高い声で、とても乱暴な言葉が出てきたのだ。

 周りはみんな、男装した美少女だと思っていたが、声はしっかり少年のものだったので驚いている。


 フィニアスは、後ろの方で順番を待っていたわたしを見つけて、こちらにやってきた。

 そして、自分を取り巻いて見ていた、冒険者候補の人達のまん中にわたしを連れていき言った。


「金髪碧眼の美少年ならここにもいるじゃないか!!」


 誰の事だよ?


 何か、わからないけど、わたしまではやし立てられてる?


「良いぞ、美少年コンビ!!」


「金と銀のコンビ誕生だな」


「お前らコンビを組めば良いぞう!! Fランクのコンビ誕生だ」


 周りの大人に笑われながら、いつの間にかフィニアスの相棒にされていた。


 だがフィニアスは、Fランクに不満があるようで、しっかり自分の登録順番を待った上で、


「これ、神殿の紹介状ね。それから、剣の師匠の推薦状と使える魔法の種類とランク、これでもFランクにする? お姉さん」


 フィニアスは、二-ッコリと笑って、受付嬢を悩殺してしまった。


「まぁ……しっかりとした紹介状ですのね。困りましたわ、皆さん初めは、Fランクスタートですのに」


「俺にはもう、帰るとこはないの!! 金も稼がなくちゃなんねぇの!!」


「では、特別にCランクにいたしますわ。後は経験を積んでください」


 次はわたしの番だった。フィニアスの次の番に割り込みさせてくれてたんだ。


「エリアード・フリードリヒです。わたしは、Fランクビギナーからで結構です。冒険者になるのは、初めてですから。剣と弓が使えます。実戦経験はありません」


「ふ~ん、アルデバラン王国の貴族出身かぁ~」


 フィニアスはわたしの契約書を見て言った。

 これが後に『銀のフィニ』と呼ばれる勇者、フィニアスと相棒になったわたし、エリアードの出会いだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る