第2話

 風呂上がりの化粧水、乳液、ドライヤーがいつも以上に面倒くさい。早くベッドに入って、加湿器をつけながら寝たい。ずっとそう思っていると乳液が指の間から洗面台に一滴垂れてしまった。指先ですくい上げて頬に塗り広げた。

 いよいよ寝ることができる。リモコンを加湿器に向けてボタンを押すと静かに稼働し始める。やっぱり作動音は静かで気にならない。部屋の隅で青い光を放ちながら静かに働く加湿器にお休みと言って目を閉じた。

 薬を飲んだ瞬間に効果を実感するのと近くて、加湿器をつけてまだ間もないのに喉の張り付く感覚がなくなった気がした。心の中で感激している間に眠りに落ちていた。

 目を開けるとわずかに視界の隅に青い光を感じた。加湿器だったことを思い出した。光自体は気にならないが、なんだか臭いがする。寝ぼけている頭で臭いの記憶をたどっていくと、それは鉄の臭いだった。というより、口の中を切ったときや鼻血が口内に逆流したときに感じる生々しい臭いに近かった。どこからするのだろう。加湿器から? 首だけを加湿器に向けるけど異常はなさそうだった。わざわざベッドから出て確認に行くほど気になるものではない。もう一度目を瞑るとすぐに眠りに落ちた。

 でも日を重ねるにつれて鉄、血の臭いが強まっていった。一度加湿器を調べなきゃとは思うものの、いつも思い出すのはベッドに入ってからだった。朝には出勤の支度に追われていて確認することすら忘れてしまう。

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