Episode 3. 4:35の露出狂

目が覚める。水を飲む。

不確かな形のそれは、ようやくおぼろげな輪郭を得て僕のもとへやってきた。

目の奥に鈍痛。昨日は飲みすぎたのだろうか。

じんわりと広がる視界の惨状に僕は頭を抱えた。

ツマミの食べ残しが散らかる机の上、空き缶や空き瓶が無数に転がる床、零したのかなんなのか、正体の分からない液体が水たまりを作り、無造作に投げ捨てられた下着がそこらかしこに存在するカオスな空間。そして横たわる3人の女。

窓から見える外は薄暗い。まだ日が昇る前だろう。僕はタバコを1本咥えてベランダに出た。

夏の朝らしい涼し気な一陣の風がふわりと僕の髪を撫でた――と同時に、自分が一糸纏わぬ姿であることにも気付いた。が、別にどうということはない。そうしてベランダに仁王立ちしていると、なんだか自分が露出狂になった気がしてくる。


妙な気になってきた頃、手にした携帯が短く震えた。

――今日休みだよね?朝から家行っていい?――


時計を見ると、まだ4時35分を指していた。メッセージの主は、ここにはいない――つまるところ今この状況をいちばん見られてはならない人物ということでもある。僕は焦って返事を送信し、まだ疲れからか眠りこけている3人を叩き起こした。

するとあろうことか、いちばん髪の長い女がおもむろに僕を押し倒した。次いでボブヘアの女と、スラリとした手足の長い女が僕の両手足をそれぞれ掴み、部屋に落ちていたブラと、どこからか持ってきたガムテープを器用に使って縛ってしまった。これでは起き上がることはおろか、裸身を隠すことも出来ない。髪の長い女が口を開いた。


「これから『あの子』、来るんでしょ?」


ニヤリと笑ったボブヘアの女、少し悲しそうな眼をしたスレンダーな女へと僕は視線を順繰りに滑らせる。


「もうちょっと遊ばない?」


ボブヘアの女が僕の一部分を掴むとゆっくりと刺激し始めた。


「このまま置いてってあげるから」


スレンダーな女がその行為に加わった。


ふと時計を見るともうすぐ5時を指そうとしている。机の上の携帯が震えた音がした。


――わ、こんな時間に起きてたんだ。じゃあ支度してすぐ行くね!――


そんなメッセージが来たことは知る由もなく、僕はただ快楽と一筋の絶望に身を委ねるほかなかった。

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