第13話 【怪談】DVDプレイヤー

私が社会人3年目の頃。

一人暮らしをすることになったので、物件を見て回った。

初めての物件探しで此処も違うあそこも違うと

何件か見た中で、ひと際いい物件と出会った。



都心中の都心、最上階角部屋、オートロック。

部屋がキラキラしていた。そして何より、家賃が5万円。



この場所で同じ条件の部屋と比べてとても安い。



私は見学した当日に物件を契約して、すぐに引っ越した。

一目惚れだった。初めての物件探しで、こんな良い物件とすぐに出会えるなんて思って正直思ってもみなかった。



初めての一人暮らし、一人だけの気兼ねない生活。

新生活は楽しかったものの、

収納のための家具が揃っていなかったりして、

なかなか段ボールの荷ほどきが終わらなかった。



引っ越ししてから二、三週間し、ようやく重い腰を上げ、

荷ほどきに取り掛かる。



靴をしまうために玄関の戸棚を開けた時だった。



戸棚を開くと、一番下の段にDVDプレイヤーの機械があった。

当時は、まだ映画見放題のサブスクがない時代だったので、

「ラッキー!これでDVDプレイヤーを買わなくて済む!」と思った。



まだ使えそうな綺麗なDVDプレイヤーだったので、

私は喜び勇んでそれを玄関の戸棚から取り出すと部屋まで持っていき、

部屋のテレビと接続した。



DVDプレイヤーは、しばらく放置されていたこともあって、

埃まみれであり、部屋中にキラキラと埃が舞った。



窓を開けて換気をしてから、

DVDプレイヤーの表面の埃を吹き払おうとした時だった。

表面に”えり”と書かれていた。



前の持ち主はえりというのかと考えながら、

埃をウェットティッシュで拭きとると当然ながら埃の落書きは消えた。



それからDVDプレイヤーの色んなボタンを押して電源をつけようと、

ボタンというボタンを押してみた。



しかし、結果からいうと壊れているのか電源がつかなかった。

私は考えなしに再びDVDプレイヤーを元あった玄関の戸棚へとしまった。



その時だった。

「えりちゃーん!ごめんねー!」という絶叫と共に、

外のトタン屋根の上にズドーンと肉塊が落ちる音が聞こえた。

ただの肉の塊ではなく、人の体重くらいの重さはある肉塊の音だ。



自殺があったと思った。

しかし、初めての一人暮らしのマンションで、

自殺が起きたとは考えたくなくて、

外は絶対に見なかった。

誰かが処理してくれとも思った。



しかし翌朝、何かが落ちたと思われる

疑惑の場所を見ても何もなかった。

綺麗さっぱりだった。



不思議に思って、同じエレベーターに乗った隣の部屋の人に

昨夜の件を聞こうと思ったが、

引っ越し早々変人だとは思われたくないのでやめておいた。



だが、日々部屋で過ごしていると、

「えりちゃーん!ごめんねー!」という絶叫と

ズドゴーンという肉塊音は繰り返し起こるようになった。



当時仕事が激務だった私は、

そのような現象が起こっていても、

そのまま放置していた。

悪戯なら心霊現象なら気が済むまでやらしといてあげようと思った。

特に実害が出ている訳ではないから。



しかし、実害が出て来るようになった。

夜中、私が寝ている時に”えり”と叫ぶ男が、

「えりー!」と叫びながら私の首を絞めて来るようになった。

苦しかったし気持ち悪かったし、そもそも人違いなので「私はえりじゃないんだよな~」と思っていた。

これで分かったが、生きている人間の悪戯ではなく死んでいる者の悪戯?なんだなと悟った。

「えりじゃ…ない……ゴホゴホ」と言っても、私の首を絞めた後には大概いなくなってる訳で、途方に暮れる日々が続いた。



だけど、そんな日々も唐突に終わった。

正月の元旦も折り目正しく絶叫男が私の上に来たと思ったら、

「迷惑かかってるでしょ!いい加減にして!」と女性の怒声が部屋中に響き渡ったのだ。

それ以降は絶叫男が私の元に現れることはなくなった。

結局、部屋が事故物件だったのかも、男が何で女も何者なのか分からずに終わった。

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