第12話 【怪談】テテの四十九日
Mさんという主婦の友人がいる。
そのMさんから聞いた話だ。
十三年前の冬。
Mさんの愛猫キジトラのテテが亡くなった。
十九歳で大往生の末の老衰だったという。
当時Mさんは仕事で忙しく働いていたため、
テテの最期を看取ることが出来たのは、
中学一年生になる息子だけだった。
その後、テテの火葬を終えてから不思議なことが起こるようになった。
亡くなったはずのテテが家の中に現れるようになったのだ。
ドアの隙間からふとテテが覗いていたり、家族で炬燵を囲んでいるとテテがノソノソと横切ったり、餌置き場の前でちょこんと座っていたりと、生前と変わらぬ姿のテテが現れたのだ。
決して家族の近くにすり寄って来たりはしないのだが、家族の傍には必ずいる。しばらくそんな奇妙な同居生活が続いたという。
しかし、テテの姿を見ることが出来たのは息子だけだった。
最初は息子からテテの話を聞くたびに、
少し疑っていたМさんだったが、
息子の話す描写は、本当にテテがそこにいるようで、
嘘を言っているとは思えなくなっていった。
テテの話を聞いては、見えないテテの存在を近くに感じていた。
本当はMさんもテテの姿を見たかった。
テテが見えている息子のことが羨ましくて仕方なかった。
だからその分Mさんは、見えないテテに精一杯の愛情を注いだ。
テテが過ごしやすいようにドアをちょっと開けたりだとか、テテの好物を皿に乗っけて置いてあげるなどして、見えないテテに愛情を持って接していたという。
そして、息子から「今日のテテはねー」と話を聞いては、穏やかな日々を過ごしていた。
しかし、そんな見えないテテとの同居生活も突如として終止符を打つ。
あんなにテテのことばかり話していた息子が、テテのことを話さなくなったいう。
それはちょうどテテの四十九日が過ぎた頃であった。
「神経質だが、甘えん坊の所もあるテテらしい四十九日だったのではないか」とMさんは振り返る。
季節は冬から春になる頃で、テテの新しい門出を祝うかのように、庭にはテテの大好きな草の新芽が芽吹き始めていた。
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