第8話 【怪談】天才脚本家
私には脚本家の知り合いがいる。
名前はKさんといい、今も第一線でバリバリと活躍している。
自他ともに認める天才脚本家である。
誰もが一度は観たことのあるドラマを書いていて、
私とは年齢が親子くらいは離れているが仲良くさせてもらっている。
そのKさんの話でも。
Kさんはいつも私に突然電話をかけてきてくれるのだが、
話し終わったら嵐のように去っていく人だ。
いつもが突然始まり、突然終わる。
そんなKさんが何故私に電話をかけてくるのか?
とにかく誰かと話していなければ自分がもたないのだという。
Kさんは霊感体質である。
この霊感体質が厄介なもので、悩まされているようだった。
文化人でちょっとした有名人でもあるし、クリエイターなので他の人よりも感受性的な面で色々と大変なのかもしれない。
「こうして誰かに話を聞いてもらえると癒されるの。常に誰かが私の後ろにいて、あれこれ言っているのよ? 十人くらいがいつも一斉に話しかけてくるの」
「何が何を言って来るんです?」
「お化けさんがね、言いたいこと言って来るの。勝手よね!」
当たり前だが、
Kさんもそんな一斉に
十人もの話を同時に聞けはしないので、
常日頃からノイローゼ気味らしく、
毎回疲れている様子で電話をかけてくる。
「あなたに話聞いてもらえると助かるのよ。なんか後ろの声が一時的にだけど減るの」
「減るってどういうことですか?」
私が不思議に思って尋ねたのだが、
恐ろしい答えが返って来た。
「つまりね、電話をかけたら私に憑りついていた存在が電話先の向こうに移るの。最近、そのクレームがすごくて。憑りつく存在が変わるっていうのかな。それだけなんだけど!」
ぬけぬけと言うKさんに私は開いた口が塞がらなかった。
どうやら憑りついた何かを私に移動させているらしい。
「これでも気を使ってるのよ? 私がこうやって何十人もの人に電話をかけているのはね、なるべく皆の負担を減らすため。耐えられないでしょ? 私からの電話。あははははは!」
何人もの霊能者に除霊してもらっているし、
それだけでは足りないのだそうだ。
本人が言っていたのだが、
自分にしか興味がなく、他人には一切興味がないらしい。
だから私が何かに憑りつかれても気にならないという理論。
そんなもんだから私が、
「他人に興味がなくて、よく人間ドラマを書こうと思いますねぇ?」
なんて言うと、
「私だってどうでもいいのよ? だけどある時に、脚本のイメージがバアアアアと入ってきて、勢いだけでガアアアアと物語が作れちゃうからしょうがないじゃない? ほら、私天才だから。それに……」
「それに何ですか?」
「私の後ろにいる何かたちが、私に天才的な才能を強化してくれてるのかなって。ほら、私って他の脚本家なんかより群を抜いて天才じゃない? ……だから悪いことだけではないのかも!あなたにもきっと良いこともあるはずよ。私一人では抱えきれないからおすそ分けね(笑)」
私は言葉が見つからなかった。
それというのも一つ心配なことがあったからだ。
それはKさんの体は悪い所だらけだということ。
しかもどれも医者に匙を投げられ治らないところばかり。
何年か前に難病にかかり内臓の一つを摘出している。
本当にKさんは後ろにいる存在の話を聞いていて大丈夫なのだろうか。
今でもKさんはドラマ業界の第一線で働いている。
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