第7話 【怪談】蠢く顔

私が最近、体験した出来事。


朝の通勤ラッシュの時間帯に地下鉄に乗っていた時、

座席に座り到着までゆっくりしていた。


何個目かの駅に着き、

電車が動き出したぐらいのタイミングで、

ふと目の前に、子供連れの女性が立った。


その瞬間、

突然その女性に腕を掴まれると、

ものすごい腕力で何も言われず座席から引きずり降ろされた。


「!?」

女性の顔を見ると、

顔の中で虫が這っているかのように、

顔の表面がウネウネと波打つように歪んでいた。


「関わっちゃいけない―――」


言いたいことはあったが、

そう思いながらその場で立ち尽くしていると、


席を強引に奪い取った女性は、

今度は子供の席を確保したいのか、

隣に座っていた妊婦さんの腕をつかんだ。


女性の顔の中ではまだウネウネと何かが動いており、

さらに徐々に動きが激しく増していっているように見えた。


女性は私の腕を引っ張ったときのように

勢いよく妊婦さんの腕を強く引っ張った。


「妊婦さんが危ない…!」


そう思った瞬間、

意外なことに妊婦さんが強く「ダメ!」と言い、

その妊婦とその女性とで激しい言い争いとなり

車内は騒然となっていた。


結果として、妊婦が腕を振りほどき、

妊婦がそのまま座席を勝ち取っていた。

勝ち取った時には、拍手をする人もいた。


そのことが気に食わなかったようで、

腕を振りほどかれた女性は、

一度勝てた私に再度喧嘩を吹っ掛けてきたのだ。


「〇▽×□△××××!!!!!」


その時、女性の顔を見て思った。


「鬼だ――鬼に憑りつかれている」


顔の造形が激しく虫が蠢くように波打つ。

凄まじい形相で私を睨みつけ、

私のことを罵ってきた。


その時、ちょうど電車のドアが開いたので、

私は逃げるようにその電車から降りた。

いつまでも遠くから私を罵っていた。


それからだ。

ふとした瞬間に液晶画面や窓ガラスなど、

何か反射して映る素材のものを通して自分の顔を見ると、

自分の顔がウネウネウネウネと動くようになってしまった。


しばらく見ていると、顔の左半分の蠢きは止まるのだが、

顔の右半分はいつまでも蠢いているのだ。


そしてふと、あの時の腕を掴んできた女性の顔を思い出す。

あのウネウネと蠢く顔を―――。


私は未だにあの女性に恨まれているのだろうか。

それとも私も鬼に憑りつかれてしまったのだろうか。



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