第2話 【怪談】大きな満月の下で

今は近畿地方に住む友人Mさんに聞いた話。

私の友人Mさんは非常にモテる女性で、男性歴が途切れたことがない。

そんなモテモテなMさんが体験した話。


二十年前、当時Mさんはやんちゃな彼氏と付き合っていた。

深夜に山や畑の畦道にドライブに行ってはMさんをいきなり車から降ろし、

走り去っていく悪戯をして、あとから車で戻って来ては「ごめんごめん」という彼氏だったそうだ。

だが、そんな事をされてもMさんは泣かないし、怒らなかったという。

何故なら、彼氏との間で度胸試しが流行っていたからだ。

Mさんは強い女性だった。


ある夏の丑三つ時、またMさんは彼氏と度胸試しに行くことになった。

場所は、桃畑の畦道を越えた先にある墓地だ。

彼氏の運転する車で街灯もなく暗い桃畑の畦道を越えて墓地に到着する。

墓地の入口の鉄の扉をギィと開ける。

「綺麗なお墓が並んでるだけやね」とMさんは言うと、彼氏と一緒にお墓の周りを歩いた。

お墓の周りをしばらく歩いたのち、段々と彼氏が飽きてきたようで「この中を周るだけじゃつまらない!」と彼氏は言うや否や、Mさんを墓地のベンチに座らせると覆いかぶさって来た。

若い二人なので、勢いに任せ情を交わす。

ひっそりと静まり返った午前二時の霊園に二人のカップル。だけではなかった。

空中に止まった大きな光る桃が二人の体を煌々と照らしていたという。

私が「怖くなかったんですか?」と聞くと、どちらもお互いにビビる姿を見せたくないから、大きな桃には反応しなかったという。

情事が終わるとその大きな桃はゆらゆらと動きながら、とある墓へ消えていったらしい。

桃畑をもつ知り合いの爺さんの墓だった。

最後にその爺さんのお墓に手を合わせて帰ったそうだ。



(おわり)

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