第33話 【着火】マンはファイヤードレイクと戦う①
乗合馬車ぐらい大きいドラゴンの頭が曲がり角からにゅっと突き出してこちらを見ていた。
ランタンの灯りで真っ赤な鱗がテラテラと光る。
「ど、どうしてこんな浅い階に……」
ドラゴンはこの世界の最強種の一つだ。
普通のドラゴンでも一匹を倒すのに軍隊が二連隊必要と言われている。
それぐらい人間とドラゴンの強さは隔絶しているんだ。
しかも、こいつ……、普通のドラゴンじゃ無い。
真っ赤な鱗、黄金色の目、見上げるばかりの巨体。
「ファ、ファイヤードレイク……」
伝説級のエンシェントドラゴン、ファイヤードレイクだ。
ファイヤードレイクは口を開けた。
キュウウウウウウと音を立てて吸気している。
「ブレスが来るっ!! 全員防衛姿勢!! 姫さまと子供を守れっ!!」
騎士団長の号令で近衛騎士たちがタワーシールドを構え、下側を床に突き刺し、防衛体制に入った。
盾からふわりと淡い光が漏れる。
魔法の盾だ。
「はやく、みんな、盾の内側に」
「お、おうっ!!」
「ありがとうっ!」
子供達と姫様が走る音が聞こえた。
「あは、あっはっは、おもしれえ、おもしれいじゃねえか、ああっ!!」
「ばっ、ペネロペ!!」
ペネロペが大剣を抜きファイヤードレイクに向けて駆け出す。
「
「
「
ズドドドン!!
青い火柱がファイヤードレイクに向けて立ち上がる。
竜の体を火柱が貫く、と思ったら、表皮に沿って火柱が歪曲した。
「障壁まであるのか」
ファイヤードレイクは火属性の竜だ、
ペネロペが竜の頭の下に着いたが、位置が高すぎる。
ジャンプして斬り下ろしたが、大剣は届かなかった。
竜は依然吸気を続けながらゆっくりと曲がり角からその姿を現した。
でかい!
三階建ての冒険者ギルドの建物ぐらいの大きさがあるぞ。
圧倒的な質量だ。
竜の目はまっすぐ私を見つめている。
狙いは私だな。
ドドンと、踏み出してさらに竜は口を大きく広げた。
ペネロペが前足に近寄り、斬撃を繰り出す。
ガキーーン!!
耳障りな金属音がしてペネロペの大剣が折れ、きりきり回って壁に当たった。
「ブレスが来る!! マレンツ先生もこっちへっ!!」
「いや、それはできない」
私は歩いた。
射線を変えてリネット王女と銀のグリフォン団のメンバーを守らないと。
竜の
竜は口を大きく開いた。
……、この、タイミング、だ。
「
ズドン!
ドカドカドカーン!!
竜の口の中に
具体的に言うと、舌の上で火柱を上げ、発射する瞬間のブレスガスに誘爆させた、火柱は口の中を斜めに通り、脳を焼く。
ブレス誘爆のショックで竜の頭は打ち上げられて激しく壁に激突した。
「やったか?」
騎士団長の声が聞こえた。
「まだだっ!!」
ペネロペがそう言いながらこちらへ駆け戻ってきた。
竜がゆっくりと頭を持ち上げている。
残念ながら火柱は脳には達しなかったようだ。、
「ペネロペ、リネット王女と銀のグリフォン団を地上に送り届けてくれ」
「マレンツはどうする」
「どうやら狙いは私みたいだ、囮になって奴を引きつける」
「解った、S級の応援を連れてくるから、それまで死ぬなよ」
「わかった、たのむ」
私は駆けだした。
脇道に逸れて、ドラゴンを誘導する。
狭い通路があれば良いのだが。
「こっちだ、デカ物!! お前の獲物はこっちにいるぞっ!!」
私が怒鳴ると、竜は憎しみの表情を浮かべ、口を開け、そして慌てて締めた。
よし、口の中に
「
「
ズドドン!
竜の左右の目の近くで
青い火花が暗い迷宮で花火のように華開く。
チョリソーが落としたランタンを拾い、脇道に駆け込む。
追ってこい、追ってこい。
リネット王女の方に行くな。
銀のグリフォン団の方に行くな。
「ハカセー!! 死ぬなーっ!!」
遠くフロルの声が聞こえた。
後ろを振り返る。
竜は口から、ポッポと火を吹き出しながら、私を追ってくる。
よし!
「
ズドン!
竜が慌てて口を閉じた。
また障壁に火柱が曲げられる。
あの障壁さえ無ければ。
「
ジャバジャバと水をまき散らしながら駆ける。
ズンズンと後ろから竜が近づく気配がする。
GOWAAAAAAA!!
吠え声が意外に近くで聞こえる。
ブレスを封じたとはいえ、あの巨体に一発殴られただけで、私は死ぬ。
振り返る。
「
ズドバアアアン!!
逆さに発生させた火柱が
くそっ、水の量が少ない。
水蒸気爆発にはならないか。
でも、水が一瞬で蒸発してちょっとした目くらましにはなった。
竜はぎょっとして、一瞬動きを止めた。
どこかに水は無いか。
チラリと見たチョリソーの二階の地図。
たしか、北の方に水場があった気がする。
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