第34話 【着火】マンはファイヤードレイクと戦う②
ズガガーン!!
前方にジャンプをしてギリギリでドラゴンの前足の攻撃を避けた。
そんなに命中精度は良くない。
体格差があるからね、人間がネズミを狙うぐらいの感じなのだろう。
ブレスを封じれたのも大きい。
奴は小さい目標はブレスの一撃で倒していたのだろう。
手足で小さい対象を攻撃する経験はあまり無いようだ。
それでも気を抜くと、ギリギリの攻撃が飛んで来る。
地面で前転したりして何とかかわしているが、どこまで幸運が持つのか。
小部屋のドアがあったので急いで開く。
中にはゴブリンが居て、私を見つけてギャーと叫び襲って来た。
私はそのまま小部屋の前を通り過ぎ、北の方へと逃げる。
「ギャ? ギャアアアア!!」
出てきたゴブリンは、迫り来るファイヤードレイクを見て絶叫した。
ガガン! ガガンと鈍い音がして、ゴブリンの残骸が私を追い越して床を転がっていった。
――すまないね、囮にしてしまって。
心の中でゴブリンに謝って、さらに走る。
だんだん体が熱くなって汗が滝のように噴き出してきた。
息も荒い。
やばい、体は鍛えていたつもりだけれども、もう体力の底が見えた。
やばいやばい。
竜に追いつかれたら死ぬ。
私は死ぬ気で走った。
後ろ頭に風の気配を感じて横に跳ぶ。
ズガン!
竜の大きな前足が床を砕いていた。
壁を蹴って姿勢を立て直し、さらに走る。
水場はまだか、それとも私の勘違いか。
竜が入れないような路地があれば良いのだが。
小部屋で籠城はまずい、逃げ場が無いしブレスを打ち込まれて私は死ぬ。
水の匂いがした。
ちょろちょろと通路に水が流れる音がする。
あった!
水場は噴水のようなオブジェクトだった。
水を出す彫刻の周りが池のようになっていた。
この水量なら。
水場はちょっと広めの広場みたいになっていた。
石で出来たベンチなどもある。
そのベンチを砕きながらファイヤードレイクが近づいてくる。
引きつけろ、引きつけろ。
ファイヤードレイクはあざ笑うように目を細めた。
前足を掲げて私に向けて振り、下ろす。
「
ズドン!
まずは水場の縁を
真っ青な光に照らされて、竜は紫色に見えた。
前足が下りてくる。
風を切る音がする。
水は、竜の、腹の下にまで達した。
「
ズドドドガン!!
GAOOOOO!!
巨大な白い水蒸気爆発が起こり、竜の体が持ち上がり、後ろに吹き飛ばされた。
す、凄い威力だな。
竜は信じられないというように、キョロキョロと辺りを見回した。
伏兵がいるとでも思ったようだ。
「
ズズズドン!!
「
ズズドンム!!
竜の真下に
そのたびに竜の巨体は宙を舞った。
もうもうとした水蒸気で視界がわるくなる。
熱が籠もって暑い。
だが、さらに重ねる。
「
ズドドム!!
「
ズドバーン!!
GAAAAAAAAAAUU!!
竜は怒り狂って吠えた。
なんとかこちらに近づこうとする。
「
ズドドン!!
水蒸気爆発の爆音が体を叩き、耳がキーンとなった。
竜はそのたびに後ろに跳ね上げられる。
はあはあ。
鞄を開けてマジックポーションを取り出して一息に飲む。
はあはあはあはあ。
竜が羽を広げた。
バッサバッサと羽ばたき、水蒸気の雲が巻き上げられ、竜は空中に浮いた。
「
ズドドム!!
水蒸気爆発が竜を巻き込み空中を回転させて壁に激突させた。
もう少し。
もう少し。
「
ズドドン!!
大気をかき回せ。
「
ズドドン!!
地下迷宮に積乱雲を作るんだ。
辺りはもうもうとした水蒸気に包まれ、竜の姿もぼんやりし始める。
もの凄い湿度。
雲の中にいるみたいだ。
よし!
「
土風属性混合第零階層の
ピシャーン!!
GYAAAAAAAAA!!
私の手から出た小さな放電が積乱雲状になった大気で増幅されて太く大きい稲妻となって竜の腹に直撃した。
竜が痙攣しながら悲鳴を上げた。
よし、雷属性の攻撃は障壁で止められないようだ。
腹に響くゴロゴロという音が辺りから伝わる。
水蒸気は電荷して私の体のあちこちから、竜の体の尖った部分から放電をしている。
「
ピシャーン!!
GYAAAAAAAAA!!
竜は体をくねらせて苦しんでいた。
GAOOOOOON!!’
竜は怒りのあまり口を開きブレスを吐こうとした。
「
ドガガガガガーン!!
口の中で盛大に爆発が起こり竜は後ろにひっくり返った。
はあはあはあ。
竜は、まだ、動いている。
水蒸気爆発、放電攻撃、ブレス誘爆と、これだけの攻撃をぶち込んだのにあまり弱っている感じがしない。
さすがは世界最強種だけはある。
決め手が欲しい。
「マレンツ博士~~~」
泣きそうな声でウジェニーさんが駆けよってくるのが見えた。
「土風属性混合第五階層!
「は、はいっ!!」
ウジェニーさんが詠唱に入った。
後からウゴリーノさんと他の人が二人駆けてくるのが見えた。
よしっ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます