第13話 同窓会出席へ

 小学校、中学校と良い思い出も悪い思い出もあるが、悪い思い出の方がよく思い出される。

 ヤンキー全盛の時代だった。

 決していじめられていたというわけではないが、運動ができないことで、嫌な目にはあった。楽しい思い出もあるにはあり、同窓会に顔を出してみんなに会いたい気持ちもある。

 同級生のうち何人かの消息は、今連絡を取っている森下ほか二、三人を通じて聞くが、他のほとんどの同級生については、今どこで何をしているのか、どういう人生を送っているのか、全く知らない。

 配達の仕事をしている僕の現状は、良くもないが、最悪でもない。金銭的な苦労はあるが、どうにか家庭を維持している。

 もし同窓会に顔を出すことで場違いな思いや、集団の中での孤独を感じるようなことがあれば、抜け出して、街をほっつき歩けば良い。今生きている世界とは何の関わりもない集まりなので、それで良い。

 だんだんと、気持ちが前向きになってきた。今日の最後の一軒を配り終え、営業所へ向けて出発する直前、森下宛てに、出席します、との返信メールを送った。

 エンジンを掛け発車してから、しまった、取り返しのつかないことをした、と思い、車のライトの群れと大型チェーン店の電飾に埋め尽くされた夜の幹線道路のいつもの光景を見ながら、どうやってドタキャンしようか、と思い悩んでいた。雨がぱらついてきた。ワイパーを動かす。今年も梅雨入り宣言が出された、とのニュースが聴こえる。


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