本編4 ミルキーウェイ前
目を瞑って無我夢中に走っていた貴方がふいに目を開けて顔を上げると、そこは空中ブランコ【ミルキーウェイ】の前だった。
ブランコには多くの子どもたちが乗り、上下に動きながらクルクルと回転している。
でも、なぜか上に上がる度に子どもが減ったり増えたりしていた。その光景を呆然と見つめていた貴方は、その下に子どもよりも明らかに背の高い人がいることに気が付いた。
ここに来てから初めて見つけた大人の人に、貴方は助けを求めようと駆け寄り声を掛けた。
すると、見上げていたブランコから顔を逸らし、ゆっくりと貴方の方を振り返る。
人体模型のように、顔の皮が剥がれ落ちて筋肉が丸見えになった男が。
貴方は小さく悲鳴を漏らした。他の子どもとは違い目が見えるが、閉じるための皮を持っていないその大人は瞬きすることもなく、ただジッと大きな目で貴方を見つめている。
口は大きな三日月を描いたまま動かない。まるでずっと笑顔でいることを強制させられているかのように――――
「あれ、どうしたの。ここには出入口しかないよ」
貴方は逃げたい気持ちでいっぱいになっていたが、【出入口】という言葉に震える足を抑えながら出たいと告げた。すると大人は笑顔のまま首を振り、
「まだ今日は始まったばかりなんだ。1年に1度の。いや、正確には4年に1回は来られないけど。まだ楽しんでいくといいよ」そう言うと、ジッと貴方を見ていた大人の視線がその後ろの方に移った。
「ほら、お友達が迎えに来たよ」
バッと後ろを振り向くと、そこには一人の少女が手を振って走ってきていた。その少女は頭に赤いピンを付けているから、先程の少女なのだろう。
でも…………
その見た目は、ところどころが血で染まった服。ぶらり、ぶらり、と奇妙なリズムで振られる腕。
ぽろっ。
「あ、取れちゃった」
走っている勢いで、先程までは見えなかったはずの目が外れて宙ぶらりんになった。そのことで足を止め、目を掬い上げて元に戻そうとしている少女。
貴方は大きな叫び声を上げ、また走り出した。
走って、走って、走って。
逃げて、逃げて、逃げた――――
どこに行けばいいのかも分からず、心の中を恐怖で埋め尽くされながら。
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