岸本と砂川の関係は、ただの旧友とは少し違います。かつて官能小説を書いて停学になった二人は、無邪気な情熱と奇妙な絆を共有していました。しかし、再会の場は病室。岸本は軽口を交わしながらも、死を前にして静かに自分の終わりを見つめています。
「妹にハムスターを買ってやってくれないか?」――この一言は、ただの頼みごとではなく、彼の人生に対するある種の問いかけのように響きます。砂川はその言葉をどう受け止めるのか。
生と死、芸術と欲望、友情と未練が交差する中で、残された者がどのように生きるのかが描かれています。劇的な展開はなくとも、読み終えた後にじわりと残る余韻が、本作の存在をより強く感じさせます。