第五話

 山道に動物の死骸が横たわっていることがある。

 触ると穢れが移ると言われていたので、道行く人は避けて歩いた。

 ただ、耳のない人間の死体があるときは話は別だ。

 その場合は死体を決して触れないようにまたぎ「お恵みくださいお恵みください」と唱え山を出るまで声を出してはならない。声を出すと後ろから何かがくるという。

 実はその人間の死体は餌であり、神仏に慈悲を祈ることでその餌を仕掛けた何かから神仏が守ってくれるのだということになっている。

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