第三話

 大戦中、ある軍医のところに重傷を負った兵士が運ばれてきた。ものの見事に歯が吹き飛ばされている。

 もう物を食べることもしゃべることも難しいだろうと軍医は諦めていたが、 数日して歯は元通りになった。

 驚いてそのことを指摘すると、神様が補ってくれたと言う。

 話は理解できなかったが、兵士は驚異的な早さで回復しまた戦場に出ていった。

 それから幾日か経ち、今度はその兵士が死体となって運ばれてきた。

 解剖しても異常な点は見つからなかったが、荼毘に付せずに火葬してみたところ、尾骨だけが綺麗さっぱりなくなっていた。

 軍医は神様の器は小さいものだと呆れたらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る