第27話 煙草臭

「全く、何故このような単純明快な任務なのに手こずっているのでしょう。一般人相手ならば苦戦はしないはず何ですけどねぇ。」

「今日は良い天気ですねぇ。ご老人。」

矢花は刀を携え、その老人に話しかける。

「貴方の事は知ってますよぉ。日本の裏社会じゃ名の知れた組織八司御会のメンバーだ。確か名前は『醉象』でしたっけ。」

「…私共も有名になりましたな。もっとも、表の人間は知る由もないはず何ですけどね。琴方の矢花さん?」

「昨日はやられましたよぉ。いきなりうちのメンバーがやられちゃって。という訳で、仮を借りを返さなきゃなんですよねぇ。」

矢花が醉象の首筋に留めていた刀を振り上げる。対して醉象はサーベルを交える。日本の刀と、西洋の剣、構えは違えど両者譲らない攻防を繰り広げる。

(このままじゃぁ僕の体力が先に切れますねぇ。桑川さんが来なければいいんですが。)

「ほう、何故そのような淡い青の刀かと思いましたが、まだ隠しダネがあったとは。これでは私も少しばかり苦戦を強いられますねぇ。」

「それは良かった。このまま溶けてくれると嬉しいんですけどねぇ。」

「ハハハ、私も阿呆ではない。逃げさせて貰いますよ。」

「それは困りますねぇ。」

矢花は逃げようと体を反らす醉象に能力による追撃をする。すると、路地から急に男が顔色一つ変えず矢花に突っ込んで来た。その男は矢花を掴んで離さない。

「歩兵ですか。」

「その通り。便利なものでね、雑に使っても換えが利く。では、また機会があったらその時は相手いたしましょう。」



リノ、北沢視点

「本当に明日生き返るんだよね?」

「ああ。開会式にいた、あの真壁って人の能力は総統って立場上かなり公開されている。今まで予言が外れたことはないらしい。」

「悔やんでも悔やみきれないな…。私も死んだ訳だし。私は何回も死んだことあるけど柚希は違う。」

春のまだ寒く感じられる風が二人の間を縫う。

「俺も慌てていた。『欠損禁令』を使えば…いや、能力が使えなかったのか。にしてもやりようはあったはずだ。しかも俺は戸締まりさえ出来なかった。」

「絶対犯人見つけ出してやる。」

「あのガキにも何もしないわけには行かないな。」

二人で同調しながら殺意が膨れ上がっていく。その間も参加者を倒していて、気付けば影が自分の身長をこしていた。そして、また一人倒した時、急に話しかけられた。

「そんだけ殺しておいて自分らの仲間が死んだらその時だけ恨むのか。」

そこはかとなく薄汚いおっさんが煙草をふかしながら現れた。

「いや、失礼。会話を少しばかり聞かせて貰ったがね、こんな大会に参加した以上、殺した奴を恨むのは幼稚何じゃあないか?」

「誰?何者?」

「俺ぁ五味って者だ。あんたらがいま伸した奴は俺のツレでね、で、まあそんなこたぁどうでもいいんだ。見る限りあんたらは危なっかし過ぎる。俺ぁこう見えて教育者でね、君等みたいな若人をほっとけないんだなぁ。」

こんな煙草臭い教師がいてたまるか。しかも他の参加者を倒す大会なのにコイツは何を言っているんだ?

「北沢、やるぞ。」

「あらあら、話は聞いちゃいねぇのかよ。ならこっちにもやりようはあんぜ?」

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