第28話 残り香漂う夕
「あらあら、そんなコーフンしちゃって、ちっとくらい話をしようってんだ。」
「今までも数人いた。話術で勝とうとしてくる奴は。」
「そりゃあ一理あるな。だが俺は頼まれたからお前らに会いに来たんだ。」
「誰に?」
「いやね、あんたは知らんと思う。実際、関わりは深いがね。おは、今のは危なかったなぁ。やっぱブランクきちぃなぁ。」
目の前の飄々としたおっさんは俺の打撃を躱し、何なら毒も出しているのに効いてる感じがしない。俺達に話がある風に言ってるがなら今この瞬間に話せばいいだけの話だ。依然信用出来ない。
「うん、体術も能力もできてんな、だが基礎がなってねぇ。よし、兄ちゃんはこんなとこかな。んじゃ一つタネ明かし。そんな便利じゃないが俺も能力者だ。よし、じゃ次はそっちの姉ちゃん来いよ。」
男は能力者だった。そして俺はそれによって拘束された。何か煙のようなガスが俺を包み、動きを止める。筋肉が普段通りに動かない。結局攻撃を当てられないまま、いや、当たった攻撃も対して効かずに終わってしまった。
「リノ!これ食べて!」
北沢が渡してきたのは、小さい試験管みたいなのに入った血液だ。いや、食べないが。
「なるほど、そっちの能力かぁ。なかなか。で、話は聞いてくれるようになった?」
「いや。私も戦えるし。」
北沢はナイフを取り出して斬りかかる。ろくに使ってなさそうな動きでただ振り回してる。
「ははは。姉ちゃんは基礎も基本もなってねぇな。」
結局どちらも捕まってしまった。
「血気盛んなのはやっぱ若者の特権だなぁ。だが話は聞いて貰うぜ。まず、あんたらにゃぁ優勝して貰わなきゃいけない。俺が優勝してもいいんだが面倒臭ぇのがいるからな。んで次。師匠を作れ。見たところ義務教育と自己流だな。師を置いたら見違えるぜ?そうだな、厳しい人が望ましいな。最後、これがいっちゃん大事。大会が終わったら俺のとこで一回殺す。」
「は?」
「あんたらがそう思うのも分かる。まぁ榊原に聞いてみてくれ。」
「待て待て待て。そんな曖昧な説明で納得すると思うか?優勝すんのは当然。二つ目も分かる。そもそも何者だよあんた。」
「死ねって言われても私あんまり死なないよ?」
「あーうん、そうだな。こればっかは百聞一見だからまぁ今日明日で考えて見てくれ。じゃな。一応俺も優勝狙うから頑張りな。」
あの五味とかゆう男、疑問と敗北だけ残して帰ってった。訳が解らん。一回死ねって何だよ。榊原のことを知ってる感じだったな。帰って榊原に問い詰めよう。
「最悪!なんか服が煙草臭いんだけど!これお気に入りだったのに~!」
「なら着てくんなよ。こんな大会で。」
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