第26話 失われたもの

ぼちぼち準備が出来て榊原と矢花はもう出発した。俺は柚希に手を会わせてから行こうと思って、死体が置いてある部屋のドアに手をかける。そしてドアを少し開いた所で異変に気付く。いくら死体とはいえ数時間でここまで匂うか?しかも何気なく開けたドアも鍵がかかっていたはずだ。

「桑川さん、この部屋の鍵って開けました?」

「いや、置いた時から机に閉まってある。どうかしたか?」

「来て下さい。」

俺は桑川さんと、横で聞いてた北沢とドアの向こうを改める。そこには赤黒くなったシーツの上に利き腕を失った柚希の姿があった。

「嘘!?柚希!え?なんで?」

「見ろ。窓が割れてる。リノ、お前の言っていた不審な烏、本当にお前の部屋から入ってきたのか?」

「…分からない。」

「榊原さん、なまじ自分が強いからセキュリティを重視しないからな、俺達の失態だ。」

「大会中で良かった、いや良くはないか」

「とりあえず片付けは俺がやるから二人は行ってこい。榊原さんに電話しておく。」


「…リノ。」

「どうした?」

「探そうよ、犯人。」

「…賛成だ。だけど本来の目的もこなすぞ。」

「…うん。」

こうして琴方の全員がやるべき事をやり始めた。俺はもっとしっかり対策して置いたら、とこの日を何度も何度も後悔する事になる。


「龍くん、良いよ、一人で行動しても。」

「どうしたんですかぁ?榊原さん。」

「何のためにかまでは分からないけど君のそれは琴方の為になる。」

「なぁんだ、やっぱりバレちゃってたんですねぇ。ではお言葉に甘えて。」


「すいません、榊原さん。」

「あぁ岩くんか。」

「急な事だったので連絡したのですが、柚希が…」

「それはいけないねぇ。あ、それと私と龍くん、別行動する事になったんだ。」

「…はぁ、貴方達二人はいくら言っても聞かないですよね。」

「柚希くんの件は私の方でも考えて置くよ。じゃあ。」


「やっぱりバレてたなぁ。じゃあ期待に応えないとですねぇ。今日は良い天気ですねぇ。ご老人。」


数時間前

「猫刄、貴女には榊原を殺す命が下ったはずです。なぜ見逃したのですか?」

「ん~、なんか萎えたから?」

「猛豹は死に、嗔猪も録に手柄を立ててはいない。私達には優勝以外の選択肢はないのですよ?」

「悪かったっすね。役立たずで。でも死ぬよかいいでしょ。てか俺は歩兵どもに指示出してんだよ。そこんとこは認めて欲しいね。」

「分かりました。猫刃、貴女は必ず榊原を殺して下さい。奴の力に抗えるのは貴女はだけです。」

「気がむいたらね~」

「嗔猪、貴方は歩兵半分を自由に行動させて貴方も動きなさい。」

「へいへい」

「私も参加者を刈り取ります。我らが王の為に尽力を尽くしてくださいね。今回は分かりかねますが前回、任務に失敗した駒がどうなったか」

「…りょーかい。」

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