第17話 開会式

いよいよ開会式。会場となる馬鹿デカい競技場は俺達がついた頃には八割方埋まって、参加者だけでなく運営もせわしなく動いている。俺達六人は横一列になって席についた。どうやらあと数分で始まるようだ。


「皆さん本日は当大会にご参加いただきありがとうございます!3日間司会を務めさせていただく、アイドルの富士見レイラと申します!」

そんな口上で出てきたのは、最近自身のアルバムがミリオンヒットを記録した国民的アイドル、通称「ミレイチャン」。

その後ミレイチャンが大会を行った経緯とかスポンサーについて長ったらしく喋り始めた。その間に北沢、矢花、柚希はトイレに行った。ようやくミレイチャンが舞台からはずれようとすると今度はスーツに身を包んだ若い男が演説台を後ろに運ばせてやって来た。

「レディースアンドジェントルマン。世界均衡調整軍、第四部隊総統、真壁応と申します。」

舞台の男が軽く口を開くと会場に一気に歓声が沸き起こった。俺でも名前は知ってる。世界を股にかける軍には部隊ごとに一等兵から総統まで定められており、全12隊にそれぞれ一人のみ総統と名乗る事が許されている。

世界中に拠点がある軍の総統には二人の日本人がいる。彼はその内の一人だ。中学校の義務教育範囲。彼一人で大国の統治者三人位の権力があるらしい。

「今大会、盛大で開放的な催しにするために私真壁が呼ばれました。私の能力により物品や地形など、延いては人命までこれから3日間で壊れた物は三日後に限りなく元通りになります。なので皆さん、罪には問われませんので安心してお過ごし下さい。では皆さん、三日後の夜、決勝戦でお会いしましょう。さぁ大会開幕です。皆さん1階ゲートまでお越し下さい。」

そう言って舞台を降りた。3日間に壊れた物、人命まで元通りに復活するなんてどんな能力だろうか。

「榊原さん、あの人の能力ってどんなものなんですか?」

「うーん、総統の能力は本当は国家秘密なんだけど、まぁイイヨネ。彼の能力は『予言』。あらかじめ三日前に言った事が実際に起こる。それが総統たる由縁でもあるんだよね。」

榊原さんがさらに何かを言おうとした時、北沢と柚希が帰って来た。

「榊原さん何話してたんスか?」

「いや大した話じゃない。それより龍君は迷子?」

「いやぁこの座席からトイレめちゃくちゃ遠いとこにあって行く途中で離れちゃったんだよね。それより、皆にこれ渡しとこうと思って。」

北沢が小さな試験管みたいな容器に入った指を全員に渡す。

「まぁ三人なら大丈夫だと思うけどいざって時に回復出来るから。」

俺肉食べられないんだけどなぁ。

「じゃあ矢花が帰ってきたら下に行きましょう。どこに飛ばされても帰って来られる用に柚希には18切符渡したよな。あと三回分残ってるから響とリノに渡しておこう。最後のは矢花に渡しておく。」

「私のはないの?岩君。」

「5枚ひと組なんです。一人分なら買わない方が安上がりなんです。行きましょう。矢花があそこで迷ってます。」

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