第2話

 そのころ、おじいさんは湿った雪が膝の下まで積もった中を渾身の力で足を運びながら、とぼとぼ歩いていました。せっかく山を越えて町まで行ったのに一つも笠が売れなかったからです。


 ふつうの笠では売れないと思い、笠に藁でつくった花をつけたのがよくなかったようです。それを見た人から「こんな玉ねぎをのせた笠なんか使えるか!」といわれてしまいました。これはおばあさんのアイデアだったので、おばあさん思いのおじいさんはよけいに打ちひしがれていました。


 山を越え、雪もくるぶしぐらいになりあと家まで一里ほどになりました。傷心のおじいさんの目にお地蔵さまが並んでいるのが目に入りました。お地蔵さまは十体ありました。とても穏やかな顔をしていて信心深いおじいさんはそのお地蔵さまを見ていると、さっきまでの打ちひしがれていた気持ちがやわらいできました。それどころか大みそかに食べるものもない貧乏の悲しさや、おばあさんに楽をさせてやれない不甲斐ない自分の悔しさもスッと消えていきました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る