パーリーナイト~笠地蔵~

おおかど ときこ

第1話

 昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。ふたりは藁で笠や蓑をつくって生計を立てていましたが、とても貧乏でその日食べるのもやっとでした。ふたりは山で採った山菜や川で釣った魚を保存食にしたりして、なんとか食いつないでおりました。


 ところが節約に節約を重ね、山と川からの少ない恵みを駆使しているにもかかわらず、大みそかの日には食べ物が底をついてしまいました。雪がちらつく寒い夜のことでした。


 笠や蓑を作ろうにも材料の藁がありません。仕方がないのでおじいさんとおばあさんは屋根の藁を抜きとって10コばかり笠をつくり、おじいさんがそれを売りに出かけました。その間、おばあさんはすることがないので笠が売れますように、おじいさんが無事に帰ってきますように、と仏さまに手を合わせてとりあえずミニマムな家の中を掃除しました。


 壁に張った蜘蛛の巣やホコリを払いながら上を見上げると、屋根の大きな穴から星がまたたいていました。おばあさんはぶるぶるとふるえて「あー寒い」と言いました。


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