第24話 私に絡まないで下さい
アリスと別れた後、1人ホールの端っこにやって来た。さて、これからどう過ごそうかしら?そう思っていると
「ジャンヌ様、ごきげんよう。やっとシャーロン様と婚約を破棄されたそうですね。ショックで寝込んでいらっしゃると伺ったのですが、大丈夫ですか?」
何人かの令嬢たちが私の元へやって来たのだ。
「皆様、お久しぶりですわ。まあ、私が寝込んでいるだなんて、一体どこからそんな出鱈目な情報が流れたのかしら?私、また騎士団に戻りましたの。毎日楽しく稽古に励んでおりますのよ。やはり私には、シャーロン様とは釣り合わなかった様ですわね。これからは騎士団で、伸び伸びと生きていこうと思っておりますの。ただ、私も伯爵令嬢ですので、社交界にも定期的に顔を出すつもりでおりますの。これからもよろしくお願いしますね」
極力穏やかな表情を作って、そう答えた。
「まあ、騎士団に戻られたのですね。ジャンヌ様は顔からして非常にお強そうですものね。それにシャーロン様とジャンヌ様は、なんと申しますか…あまりお似合いではなかったですし」
顔が強そうとはどういう意味よ。失礼な人ね。でも、ここで引き下がるわけにはいかない。
「シャーロン様は、他にも沢山のご令嬢がいらっしゃいましたし。私もなんだか疲れてしまって。シャーロン様にとっても、私にとってもよかったと思っておりますわ」
オホホホホ!と、扇子で口元を隠しながら話をする。この令嬢との駆け引きみたいなのが、あまり好きではないのだが…
その時だった。
「ジャンヌ、久しぶりだね。会いたかったよ」
ん?この声は…
ゆっくり声の方を振り向くと、そこにはシャーロン様の姿が。どうしてこの男が私に話しかけているのだろう。
「お久しぶりですわ、シャーロン様。ここにいらっしゃるご令嬢たちとお話ししたくていらしたのですね。それでは私は失礼いたしますわ。皆様、どうぞごゆっくり」
にっこりとほほ笑むと、その場を急ぎ足で立ち去ろうとしたのだが…
「待ってくれ、ジャンヌ。僕はずっと君に会いたかったのだよ。ジャンヌ、ちょっとだけ話をしたいのだが、いいかな?」
「申し訳ございませんが、今更あなた様と話すことはございません。それから私たちは、正式に婚約を解消したのです。それなのに、気安く呼び捨てにするはいかがなものかと。それに、父とのお約束でもう二度と私に近づかないという事だったはずですが」
正直もうシャーロン様とは関わりたくはないのだ。
「ジャンヌ、聞いて欲しい。僕が君に冷たくしていたのには理由があるのだよ。決して君の事が嫌いだった訳ではない。それに4年前、僕が君の無実を証明し、君を助けた事を忘れたのかい?僕は危険を冒してまで君を助けたのに」
「確かに4年前、私はあなた様に助けていただきました。でも、それとこれとは話は別です。とにかくこれ以上私に関わるのは止めて下さい」
これ以上この人と話をしていると、頭が痛くなる。とにかくこの場を後にしたい。
「シャーロン様、一体どうされたのですか?もうジャンヌ様とは婚約破棄をなされたのでしょう?彼女に気を遣う必要はありませんわ。さあ、こっちでゆっくりお話しをしましょう」
「僕は…」
「さあ、行きましょう。それではジャンヌ様。ごきげんよう」
有難い事に、令嬢たちがシャーロン様を連れて行ってくれたのだ。なんだか急に疲れたわ。
1人フラフラと中庭に出る。綺麗にライトアップされた中庭を見ながら夜風に当たっていると、少し気持ちも落ち着いて来た。
近くにあったベンチに座り、夜空を見上げた。綺麗な星空ね。この綺麗な星空を見ているだけで、少しだけ心が軽くなってきたわ。
そろそろホールに戻った方がいいかしら?でも、またシャーロン様に絡まれると面倒だし。
その時だった。
「ジャンヌ、こんなところにいたのだね」
私の元にやって来たのは、シャーロン様だ。この男、どこまで追いかけてくるつもりなのよ。スッと立ち上がり、その場を去ろうとしたのだが…
「待って、ジャンヌ。少しだけ話がしたいんだ。どうか僕の話を聞いて欲しい。あの日、一方的に婚約破棄をさせられたせいで、全然君と話が出来なかっただろう。僕が前に進むためにも、きちんと君と話がしたいんだ」
必死に訴えてくるシャーロン様。確かにあの日、こちらの話ばかりで、彼の話はほとんど聞かなかった。今日話を聞いて、シャーロン様がすっきりして前に進めるのなら、まあいいか。
「分かりましたわ。あなた様の話を聞きます。ただし、話しは聞きますが、私の気持ちが変わる事はございませんので。今後一切私に接触してこないで下さい」
「…分かったよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。