第493話 第一回未来を考える会 閉会
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30分経ち、2号が帰って来た。一時的に作ったユートにお嬢様を寝かせておく。
「2号さん。誘拐ですか?」
「いいえ。合意していただき連れてきました。」
「良かったです。」
「ダムディ隊長、起してあげましょう。」
「私だけで行くわけにもいかないので、女性に頼みましょう。マセラティを呼んできます。」
「大丈夫ですか?」
「いつかは皆に説明しなくてはいけないので、いいですよ。」
「お任せします。」
連れてこられたマセラティがお嬢様を起こしに行った。
*****
「初めまして。私はこのコラのダンジョンのダンジョンマスターです。よろしくお願いします。」
「こちらこそ初めまして。メリル領のエリザベスです。よろしくお願いします。」
「初めまして。蘇る狼のマセラティです。よろしくお願いします。」
今、テーブルにはさっきのメンバーに加え、エリザベス様、マセラティ、マックスが付いている。皆の前にはワインのカップが置かれている。バイソーンの串焼きと共に。
「さっき聞いた方は気にせずにワインでも飲んでいてください。私は今までの流れと状況の説明を新しい3人にしますから。
…
…かくかくしかじかというわけです。」
エリザベス様とマセラティのワインは3杯目になっていた。
「エリザベス様にして頂きたい事は、ユリーザ領についての王様への説得です。内容はグルゴウィル領の北半分ほどを魔獣の保護区にして欲しいということとです。最悪1/3でも仕方が無いですけど。」
「貴方は、それが可能だと思われるのですね。」
「確信しています。魔獣の侵攻を早い段階で止められればですけれども。それもエリザベス様の努力によってです。そうすることで、王様は落としどころとして、領地の割譲を認めるでしょう。他の領主が文句を言わないことは分かっていますし。」
「魔獣の侵攻を止められますか?」
「可能です。その場合はマックスだけでも十分ですが、ダムディ隊長率いるメリル領軍が参加した方が、より効果的だと思います。マックスと共同作戦を敷くことになりますね。」
「魔獣の数は?」
「約4000ですが、5000とみて置けば問題ないでしょう。大半の魔獣はオークのお二人が説得してくれるはずです。どうしても応じてくれない魔獣たちを強制的に連れ帰るか討伐します。あからさまな犠牲が必要ですから、討伐が妥当だと思います。その時の素材の処理ですが、エリザベス様にお任せします。」
「分かりました。手が打てることは私がします。ダムディ隊長は納得しているのですね。」
「はい。これが一番被害が少ない解決法だと思います。」
「分かりました。すぐにでも、各領主様宛に手紙を書きます。スニード領には直接私が説明に行きましょう。陛下には父を通して、陳情します。許されれば、直接説明と交渉しに参ります。しかし、まだ確実ではないですよ。」
「はい。私のことを使って脅してもらっても結構です。ダンジョンマスターにも多くの種類がありますが、私はとても能動的なダンジョンマスターです。私のダンジョンに魔獣が安心して住めている間は、問題は少ないと思います。よろしくお願いします。」
「理解しました。」
「短い間でしょうが、エリザベス様はこの後何処を拠点にしますか?スニード領ですか?それともここにしますか?」
「私は、スニード領に一度行った後は、ダムディ隊長に合流しようと思っています。やはり現場を知らないと、説得力が落ちると思いますので。」
「流石ですね。敬服します。エリザベス様の為の護衛も用意しましょう。」
『ヴラ。マックスと同じようなゴーレムをもう一体お願いするわ。エリザベス様の護衛につけるの。』
『分かりました。一度生産したのですぐです。今回は女性型にします。』
『その方がいいわ。ありがとう。』
『送り出しました。』
セミロングの金髪で青い目のすらりと背の高い冒険者風の衣装の女性が来た。
「いらっしゃい。貴方はナターシャにしましょう。世界を守るために戦った強い女性です。いいですか?」
「はい。気に入りました。」
「ナターシャ、エリザベス様の護衛を命じます。この領の問題解決まで、エリザベス様をお願いします。」
「かしこまりました。」
「本当にゴーレムなんですか?」
「はい、そうです。」
「触ってもいいですか?」
「はい。どうぞ。」
「完全に硬くは無いですね。でも、確かに人種とは違います。納得しました。」
「これで今できる全てのことに対応したと思います。皆様、お疲れさまでした。明日の朝の朝食後にここで会いましょう。エリザベス様には馬車を用意しておきます。では、第一回未来を考える会は解散にします。エリザベス様とマセラティさんには寝室を用意しますし、女性用の温泉も用意しましょう。」
「ありがとうございます。」
5階への通路が開かれて、先ずは5階層へ。そこでダムディ隊長と分れる。
『ヴラ。5階層から7階層に人種2人とゴーレム1体連れて転移できる?』
『出来ます。マスターが認識した者たちは同時に転移できます。勿論、制御室とコアの在る部屋は例外です。』
『分かったわ。7階層の温泉の近くに家を一軒建ててくれない。寝室は三つで。家具付き。それと馬車って作れるのかしら?』
『可能です。』
『馬車は後で作りましょう。では、家をよろしく。今から連れて行くわ。』
『分かりました。』
歩いて6階層へ案内する。
「6階層は迷路と罠です。時間が無いので7階層へ行きます。」
いきなり景色が変わる。
「7階層です。水の階層です。」
「わあー。」
「凄い。」
2人とゴーレムを連れて、
「これが温泉です。今はこの階層には貴方たち3人しかいませんから露天風呂でも問題ないでしょう。こちらが家になります。(中に入り家具が入っていることを確認して)着替えなども用意しておきます。温泉へどうぞ。」
「その前に一つ質問があります。」とエリザベス様。
「何でしょうか?」
「この事件に私が関係があるとダムディ隊長からの手紙に書いてありましたが、あれはどういう意味でしょうか?」
「ああ。この事件はグルゴウィル領領主の欲望から始まったと説明しましたが、欲望の一つがエリザベス様を手に入れたいということだっただけです。」
「…」
私は一度制御室へ戻る。
「ヴラ。服とかあるのかしら?」
「ありますよ。種類はそこまで多くないですが。」
空に浮いた画面に服の選択肢が表示されている。寝巻と下着と明日の為の軽めのドレスと正装のドレスは必要かな。一通り選択して生産する。マセラティは持っているだろうから、いらないだろう。欲しがるだろうけど。詳細を見ると、防汚、防水、防臭、状態維持、大気制御、自動調整等のオプションが基本設定として付いている。あげてもいいのだろうか?まあ、無理を頼むんだ。いいだろう。カーズ以外でもこんなことが出来ると知られた方が、マスターへの監視が緩むかもしれないから、あげよう。
生産して、ベッドの上に置いておいた。
次は馬車だ。この馬車は戻ってくるので、少々羽目を外しても良いわね。
「馬車はどんな種類があるの?」
画面に数種類の馬車が表示される。荷馬車に箱馬車、幌馬車。箱馬車でしょうね。詳細を見ると、更に3つの中から選べる。上中下。下は質素でそのまま箱馬車。中は贅沢になったけどそのまま。上は空間拡張がされていて、中は10m四方ぐらいの大きさだ。
ベッド等の家具もすべてそろっているし、トイレも風呂もついている。風呂は自動ではなく、自分で湯を沸かして入れないといけない。それぐらい問題ない。2号に魔石を譲ってもらって設置すれば。サスペンションもついているから、お尻も痛くないだろう。
しかし、馬車の戸を開けたら、直ぐこれでは、何とも嫌だわ。もし、万が一私が着替えていて、マスターが戸を開けたら、恥ずかしい。いつかこの馬車は私が使う予定なのだし、エリザベス様も同様に考えるだろう。オプションで、この部屋は居間として使い、奥に寝室を二つ別につける。寝室は二つ無いと不味いわよ。絶対。
それぞれに家具を入れて。ベッドはキングサイズにしておこう。添い寝することもあるかもしれないから。トイレとお風呂も別にオプションでつけよう。馬車から見えない部分にも欲しい。等と考えて作っていたら、家一軒付け足したような形になってしまった。危なくバルコニーや庭まで付けそうになって、流石にやり過ぎだと気が付いた。最低限に戻して、生産した。馬はスレイブニル1頭引きだ。
「ヴラ。もう2頭スレイブニルが必要よ。1頭はマックスを乗せてもらわないと。そして、もう1頭は、エリザベス様の馬車を引いてもらおうと思うの。どう思う?」
「はい。良いと思います。ユニコーンでは問題がありそうですから。」
「ユニコーンは、そういう印象あるわね。では、スレイブニルを生産してくれる?」
「はい、今すぐに。外に待たせてありますが、どうしますか?」
「外の森の温泉の近くにとどまらせておいて頂戴。明日出発前に馬車とつなぐわ。」
馬車は収納してあるし、後で2号と改良すれば良い。
スレイブニルとは明日の朝マックスに紹介したり、馬車と繋げれば良いだろう。
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