第422話 分身たちの行動 サバゲダンジョン その1
次の日の朝。
サバゲダンジョン内。
マセラティはベッドの上で目を覚ますと、静かにお茶を飲んでいる2号を見つけ、その向かいの席に着く。
「お早うございます。マセラティさん。」
「お早う、2号。何だか懐かしいわ。」
「本当に。あれから如何ですか?仕事も人生も。」
「仕事は充実しているわ。護衛をしながら、他の兵士たちを鍛えているの。魔法は教えていないけどね。人生の方は、それなりにかな。大きな変化はまだないの。」
「そうですか。でも、多くの人と会うことになったのですから、今までとは違うことが起きそうですね。」
「そうかも知れない。」
「幸せになってください…朝食を食べますか?」
「他の3人が起きるのを待つわ。それよりも、今回の特訓はどういう意味なのか教えてくれない?何か危険があるの?」
「そうですね。ただの老婆心でしょうか。何もはっきりしたことは分かりませんが、漠然とした不安です。ただし、力があれば振り払えるだろうと私の依頼主は考えています。そして、貴方たちを鍛えることが一番の近道と判断した。逆に言えば、貴方たちが守れなければ、非常に危険な状態になるということです。」
「そうなのね。」
「期待が重すぎますか?」
「そうね。でも、期待されることは素直に嬉しい。後は、頑張るだけよ。」
「そうですね。頑張って1週間生き延びてください。かなり強い相手ですから。」
やっと、他の3人も起きてきた。
2号は席を立ち、朝食の用意をした。
「では、皆さんの食事中に武器を確認させて下さい。』
全員の武器を預かり、席を外す。
4人は楽し気に食事をし、マセラティが聞いた内容を説明し、喜んでいるようだ。
「軽く砥いでおきましたが、問題ないですね。では、お返しします。」
2号はこっそりと4人のステイタスチェックをする。
名前:フェラーリ
種族:人
年齢:36
レベル:60
HP:385/385
MP:190/190
能力:剣術:70 状態異常耐性:68 物理耐性:68 魔力操作:35 身体強化:32 魔法耐性:52 短剣術:11 馬術:20 弓術:21 消音:19 盗聴:10 魔力感知:31 火魔法:32 生活魔法:15 指揮:2
所属:蘇る狼 エリザベス・フォン・ダスカーの部下
名前:ランボルギーニ
種族:人
年齢:33
レベル:56
HP:368/368
MP:190/190
能力:剣術:66 状態異常耐性:65 物理耐性:70 魔力操作:34 身体強化:40 魔法耐性:50 馬術:20 筋力:39 加速:33 消音:19 弓術:33 魔力感知:33 生活魔法:15 無属性魔法:15 教育:2
所属:蘇る狼 エリザベス・フォン・ダスカーの部下
名前:マセラティ
種族:人
年齢:22
レベル:55
HP:265/265
MP:270/270
能力:剣術:10 短剣術:51 状態異常耐性:50 物理耐性:54 魔力操作:42 身体強化:37 魔法耐性:55 弓術:35 歌:24 馬術:23 礼儀作法:34 音楽:34 学習:25 読解力:32 風魔法:37 生活魔法:18 消音:24 毒合成:29 投擲:43 魔力感知:47 教育:2 土魔法:5
所属:蘇る狼 エリザベス・フォン・ダスカーの部下
名前:ロータス
種族:人
年齢:27
レベル:57
HP:385/385
MP:210/210
能力:剣術:65 状態異常耐性:57 物理耐性:62 魔力操作:40 身体強化:36 魔法耐性:55 馬術:20 加速:30 俊敏:30 感知:39 罠発見:14 罠解除:14 消音:30 魔力感知:36 生活魔法:15 土魔法:34 教育:2
所属:蘇る狼 エリザベス・フォン・ダスカーの部下
食事が終わったテーブルの上をクリーンで片付けながら、
「皆さん、訓練を続けているようで、安心しました。教え子が出来たので、その手の能力も上がっていますし、全体的に伸びています。魔力も伸びていますし、しごき、いえ、訓練が楽しみです。」
「2号、話はマセラティから聞いたが、どうも漠然としていてよくわからん。鍛えてくれるのは嬉しいが、相手は分からないのか?」とフェラーリ。
「はっきりは分かりません。ただ、心技体、どれも強くなっていないと今後大変ではないかと考えられるだけです。何も起こらないかもしれません。止めますか?」
「俺は強くなれれば何でもするぞ。」
「今回は少し勉強もしてもらうつもりです。」
「…」
「何故そんなに俺達やエリザベス様に肩入れするんだ?」
「縁でしょうか。あと、実力と信用ですか。
エリザベス様も貴方たちもこれからまだまだ伸びるでしょう。ですが、予想外の災難も多い。将来が見てみたいそうですから、その災難を乗り越えられるだけの力を持ってほしいと言うことでしょう。ですが、実際体を張るのはあなた達です。止めるならば今が最後です。50階層から下は、更に強い魔獣であふれています。下手をすれば簡単に死にます。どうしますか?」
「行く。」「試練だ。」「やるわ。」「当たり前。」
「では、早速行きましょう。最初は慣らしの為にもゆっくり、慎重に行きましょう。」
2号が片付けを終えると、4人と1人は洞窟へ踏み出した。
*****
先ずはオークが3頭前からやって来る。マセラティが矢で攻撃する。
「だめだわ、硬くて、深く刺さらない。」
「目を狙えるか?」
「やってみるわ。」
流石に移動するオークの目を狙うことは難しい。が、一頭の眼に刺さる。
「ぐおおおおおお。」
だが止まらない。
フェラーリとランボルギーニ前衛組が飛び込んで、怪我をしたオークを狙う。その間は、
「アースバインド。」ロータスが左側の2頭の足止めをした。
「ウィンドカッター。」オークの腕が切り裂かれる。そこへフェラーリとランボルギーニが1頭を終わらせて、乗り込んできて、切り伏せた。
「ふう、思ったより大変だったな。」
「そうね。弓矢では効果が薄いわ。」
「鈍ってるな。俺達。」
「あー、スッキリした。思い切り振れた。」
「次に行きましょう。すぐそこまで来ていますよ。」
次はオークが4頭だ。
1時間後。
50階層を1/3程進んだ所に在る、洞窟がへこんだ部分に、結界と幻影魔法で避難所を作り、休憩している。
「どうぞ。」
串焼きとお茶をテーブルに乗せた後、2号は武器の点検をしている。
「思っていた以上に鈍っていたのか、敵が強いのか。」
「両方だろう。硬いしな。」
「そうね。魔法は効果あるけど、弓矢はあまりなくなったわ。」
「やはり、簡単に察知されているから不意打ちもできないしな。前回は50階層何とかなったのにな。」
「10階層づつ、かなり強くなりますから。」
「ねえ、2号。何か良い方法は無い?」
「ありますよ。」
「教えて頂戴。」
「少し難しいですが、やって見せましょうか?」
2号は剣を一本取り出して、地面に刺した。
「皆さんの武器は強化されているのでかなり切れますが、この状態の剣を切れますか?ロータスさん、試してください。」
ロータスは体をきめると、フンッと力を入れて剣を横に払う。立ててあった剣は折れた。
「なかなかやりますね。切り口を見てください、切れてますが、どちらかというと折れたというべきでしょうか。では、私がやります。ロータスさん、剣を借りますよ。」
2号は大して力も入れずに、水平に剣を薙ぐ。シャッと音がして、剣が切れた。
「これが切り口です。」剣を拾って、皆に見せる。
「切れてるな。」
「俺にもやらせてくれ。」とランボルギーニ。
ランボルギーニの大剣は立てた剣をフッとばして、壁に当たる。
「確かに折れてるな。全然切れてない。」
同様に、2号がやると、シャっと切れる。
「なんでなんだ?」
「皆さん、良く剣を見ててください。感知を使って。魔力操作で目に魔力を集めて。」
2号が剣を持ちあげて皆の前に出す。
「あれ、この剣、魔力が通てるわ。」
「本当だ。」
「確かに。」
「うん。」
「これが手品のタネです。武器に魔力を通しておくと、更に強化できるわけです。そして、魔力を通し易い武器としてはミスリルが有名ですね。皆さんの武器はミスリルが少し入っているようですから、高価な武器です。まだまだ役に立ってくれますよ。では、今から暫く、武器に魔力を乗せる練習をしてください。」
「2号私はどうすれば?」
「矢ですから、更に難しくなりますが、同じことです。」
2号は矢を取り出して、それに魔力を込めて、足下に置く。
「まだ、魔力が乗っているでしょう。」
「分かるわ。」
「先ずは手に持った矢に魔力を乗せるようにしてください。それからです。」
2時間後。
皆げっそりした状態で、昼食を食べている。昼食は焼きオーク(隠し包丁を入れて味を染みこませ、柔らかく口の中で解けるようにした)とキャーベッジの千切りのサンドイッチだ。
「まあ、皆さん、少しづつ進歩してますよ。それに、魔力を使い切ることは、目標の一つでもありましたから。丁度良いです。」
「コツは無いのか?2号。」
「コツですか?先ずは指先に魔力を集めます。これは既に皆さんは簡単に出来るはず。体中の何処にでも集めることが出来る。そうですね?」
頷く。
「何故、身体の外にある物に魔力を送ることが難しいのか?それは、自分でそれは体の外だと考えているからです。」
「その通りだからな。」
「そうです。ですが、その認識が邪魔なのです。では練習として、髪の毛に魔力を通してください。」
「あれ、結構難しい。」
「どうだ!」
「ランボルギーニさん、出来てますよ。」
「それを3分維持してください。」
*****
「お疲れさまでした。」
「では、次は皮膚の表面に魔力を集めてください。これは出来ると非常に便利で強力な武器となります。私も常にしています。先ずは指で反対の手の甲でも触って、そこに魔力を集めてみて下さい。どうぞ。」
「おっ、髪の毛よりも簡単かも?」
2号は片付けを終わり、お茶を入れ直して、テーブルに置く。
「お茶をどうぞ。皆さんも、出来てますよ。」
「では、次に、この棒を持って貰います。そして、私が暗示をかけます。」
「では、ここに魔力を集めてください。」と2号は棒の先を指さす。
「はい、よくできました。」
「え、何で、凄く簡単にできたわ。」
「俺もだ。」
「おかしい。」
「うん。これはミスリル?」
「ロータスさん。正解です。それはミスリルを含んだ棒です。練習用に作っておきました。ただし、ミスリルだから成功したわけではありません。それは楽にするためだけです。その前の私の暗示で、その棒は体の一部だと錯覚させたのです。安心してください。暗示はもう解きましたから。まとめると、武器を自分の体の一部と思えば、簡単に魔力を通すことが出来るということです。」
「理屈は分かるんだが、簡単に出来るだろうか?」
「人に寄ります。ランボルギーニさんは簡単にできる気がします。やってみてください。」
ランボルギーニは立ち上がると、大剣をもって目を閉じる。10秒もすると、
「おい、ランボルギーニ。出来てるぞ。」
彼は目を開けて、剣を振りまわす。
「おおー、なんか気持良い。」
その後、20分程皆練習を続けて、形にはなった。
「皆さん、最低限のことはできているようです。すぐ外にオークが4頭いるので、練習してください。結界を解除します。準備はいいですか?」
「「「「はい。」」」」
先ずはマセラティの矢が、1頭のオークの腹を打ち抜いた。ランボルギーニはその隣のオークの腹を切り裂く。左の2頭はフェラーリとロータスがすれ違いざまに抜き打ちで足を切り落とし、止めを刺した。
「うまくいったな。」
「さっきまでとは切れ味が全然違う。」
「矢で射抜けるなんて。」
「これからもっとスッキリしてやる。」
「後は鍛錬あるのみです。意識しなくても出来るように。簡単に切り替えられるように。」
午後6時になる頃、4人は50階層を攻略し、51位階層の階段の前でへたばっていた。。
「以前とは桁が違う。」
「流石に疲れた。」
「あー、魔力が足りない。」
「…」
「皆さん、お疲れさまでした。これからは、毎日お風呂に入ってもらいますが、そのお湯を当番で入れてもらいます。皆さん生活魔法は最低限使えるので、魔力を枯渇する為です。そのほかの人も魔力を枯渇するために、寝る前に攻撃魔法を使い、魔力を使い切ってください。今日はフェラーリさんにお湯を貯めてもらいます。お願いします。」
2号は風呂を設置し、フェラーリを促すと、自分は料理を始めた。
フェラーリは足を引きずりながら、風呂桶に湯を溜め始める。やっと一杯になったので、マセラティから風呂に入った。足元にはフェラーリが失神していた。
「初日なので、ステーキにしました。ニャークもたっぷり使っています。どうぞ。」
「あー、2号のご飯は美味しいのよね。」
残りの三人はひたすらステーキと格闘している。
「ありがとうございます。」
「2号、今回の目標は何処なの?」
「そうですね。出来れば皆さんのレベルが80ぐらいまで上がるか、ここの70階層まで行ければ満点ですね。」
「…先は長いわね。」
「地道に行きましょう。ただの目標です。」
「そうね。心配するより、どうやって達成するか考えた方がいいわよね。」
「その通りですよ。」
「「「お替わり。」」」
寝る前の攻撃魔法の連打を終わらし、4人は気絶した。俺は4人をトランポリンベッドに押し込んで、もう一人と話す。
『スコット。いいですか?』
『ああ、大丈夫。そっちはどうですか?』
『初日ですから、様子見をしましたが、かなり鈍っていました。神経が戦いから離れていたから緩んでいて、締め直している所です。後は武器に魔力を乗せる練習中。進歩はしています。』
『基礎は大事です。戦いから遠のいていたので、緩むのは仕方がない。まあ、その一瞬で死にますが。』
『ジョージは来ましたか?』
『ジョージは明日来ます。今日中に種まきを終わらせるそうです。』
『さて、ジョージがどれぐらいぬるくなっているか。何階層から始めるんですか?私達は今51階層にいます。』
『60階層から、様子見をしようと思っていたんですが、どうしましょうか。ジョージにも連携は大事だと思いますが、先ずは戦いの中で一人で安定させたい。ジョージ英雄化計画第四弾では、我々がいない状態に対応できないといけませんから。』
『じゃあ、55階層位から始めたらいいんじゃないですか。最後には合流して、連携の練習も良いかもしれない。』
『ふむ。そうします。合流については今は未定でいてください。』
『了解。』
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