第421話 分身たちの行動 その10 蘇る狼

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メリル領 領都エプスタイン 領主館



同じような頃、同じようなことを考える分身がいた。

エリザベス様もトラブルメーカー気質、俺達がいなくなった後、どうなるか分からないな。マーガレット様程じゃないけど…ここは出来る限り戦力強化をしておく方が良いだろうな。

『伝言君2号、エリザベス様付の分身だけど。出動できますか?』

『お仕事ですか?大丈夫ですよ。誰でどこですか?』

『前回同様、蘇る狼をサバゲダンジョンでレベル上げしてきて欲しいと思います。可能ですか?』

『はい。問題ありません。期限は?他の人はいいんですか?』

『期限は1週間。ダムディ隊長やアリアートですが、流石に護衛面で心配になります。先ずは蘇る狼を強くして、その後機会があればしたいと思います。』

『分かりました。では、前回同様招待状を出しておいてください。明日夜8時に、正門前にある屋台で待っていてください。』

『了解しました。』


*****


「おはよう。」げっそりした顔のロータスが食堂に入ってくる。

「おはよう。」「おはよう。」「おはよう。」

「ロータス。何か元気が無いな。どうしたんだ。」とフェラーリ。

「皆、実は、また、招待状が来た。それも、俺が起きたら、俺の顔の上に置いてあった。」

「「ぶふっ。」」とマセラティとランボルギーニ。

「残念だったな、ロータス。」

フェラーリは顔を上げないように、手紙に目を通しながら、気にしたふうもなく、言葉を漏らした。そして、読み始めた。

「ご無沙汰している。

鍛錬を積んで、かなり自信がついたのではないかと思うが、見た所、まだ足りない。新たな特訓が必要なようだ。1週間の休みを取り、明日の夜8時に正門を出た所の屋台に向かえ。4人だけで来るように。」

ランボルギーニ、マセラティ、ロータスは順番に目を通す。

「やはり、見られていたんだな。俺達の訓練…。前回と同様、1週間の特訓に参加することを望むとある。」

「俺は行くぞ。腕試しだ。」

「私も行くわ。今生きていられるのも、あの特訓があったからだし。」

「俺は今度こそ感知を極める。そうじゃないと、恥ずかしすぎる。」

「俺も賛成だ。今、この領は安定しているから、許可は出るだろうからな。腕を磨ける機会をくれているんだ。無駄にするわけにはいかない。」

3人が頷く、そして、

「じゃあ、許可を取ってきてね。リーダー。」

「「よろしく。」」

フェラーリは目をつぶりながら、

「まあ、そうなるよな。」

「「「当然。」」」

フェラーリは静かに席を立った。


*****


夜8時。4人は正門を出て、屋台に向かって歩き始めた。屋台には1人の男がデーコンをつついていた。

「ご馳走様でした。おでん、美味しゅうございました。また来ます。」

金を置き席を立ち、振り向く。

「皆さん、お久しぶりです。訓練は続けていますか?」

「「「「2号!」」」」

「質問は有るでしょうが、早速向かいましょう。付いて来てください。」

2号はスタスタと歩いて、スラムを目指す。そして、暫く移動してから、一つの家に入って行く。4人もすぐに続く。奥の部屋に入ったとたん、4人は意識を失った。

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