第175話 面接
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コンコン。
「入れ。」
「フレデリカ、戻りました。」
フレデリカと俺は扉を開けて、部屋に入る。かなり広い部屋だ。奥の方のテーブルには男が3人座っている。鑑定ではファニー商会とBS商会所属と出ている。他にも商会名があるね。まあ、フレデリカもそうだが。
「フレデリカ、その男は何者だ。」
「この男は現場で新しく雇った護衛ですが、我が商会で働きたいということなので、面接に連れてきました。」
「ほう。それ程の男か?」
「腕は立ちます。」
「では、面接をしよう。そこの椅子に掛けてくれ。フレデリカはこちらに来て、一緒に面接官をしてくれ。」
フレデリカは少し離れたテーブルに回り込んで、席に着く。
「では、何故君は我々の下で働きたいのかね?」
「大きな商会のようですし、金周りも良さそうなので、安定した生活がしたいと思い、お願いしました。」
「確かにそうだが、仕事の内容は知っているのかね?」
「詳しくは知りませんが、護衛から始めて、おいおい学んでいけば役に立てると思っています。」
「少しは知っているということかね?」
「領や国の乗っ取りや奴隷商売ぐらいですね。」
(大分魔獣も近づいてきているな。この辺りの魔獣除けも全て回収したしな。地下に保存してある分も。遠距離回収の練習した甲斐があった。)
「どうやって我々のことを知ったのか?」
「フレデリカに訊くまでははっきり知りませんでした。ただ、獣人誘拐事件に関係している商会だぐらいですね。」
「他に我々について知っていることは無いかね?」
「そうですね。魔獣除けを手に入れているところを見ると、もしかしたらスニード領主とつながりがあるんですか?それともこの商会で開発しているのかな?かなりの数を持ってますよね。」
「何故そう思うんだ?」
「ここに来るまで魔獣に全く会いませんでしたから。この量の魔獣除けを手に入れるのは大変そうですし、以前スニード領で手に入ると聞いていたので。」
「ほう。他には?」
「そうですね。貴方たちの顔を見た覚えがありますよ。BS商会の方ですか?こんな所で遊んでいていいんですかね?」
「どういう意味だ?!それに何故BS商会のことを知っている。」
「いやー、結構有名じゃないですか、BS商会。少ない元手で大金を稼ぐって。俺の報酬もかなりの額が出そうで、嬉しいですよ。」
「フレデリカ、こいつは何者だ?」
「いや、普通の冒険者のはず…何者なの?」
「名乗るほどの者ではないので、それはいいでしょう。」
「殺せ。」
俺の横の壁が反転して30人の護衛が。後ろの扉からも20人の護衛が入ってきた。
「BS商会とは話がしてみたかったんだが、何だか敵対的だね。こんなことしてる暇ないと思うけどね。」
「何を言ってるんだ?」
「まあ、俺は高みの見物をさせてもらうよ。あんた等いつもそうなんだろう。昔貸した元金の何百倍も利子を取り立てるし、一般人を奴隷扱いだし、王国や領を乗っ取ったりしてきただろう。自分達の手を汚さずに。まあ、それが金持ちや権力者のやり方だけどさ。いつ自分が逆の立場になるか分からないよ。だからこそ、正しいことをしておきましょう。」
俺は床を蹴ると、天井から下がっているシャンデリアに飛びついてくるりとシャンデリアの上に腰掛けて、下を眺める。護衛は弓矢を準備していなかったようで、取りに行こうとしている者もいる。
「貴様。降りて来い。」
飛んでくるナイフを掴むと、投げ返してやった。眉間からナイフを生やして倒れ込む。面接官の席は結界で守られているから、焦ってないね。そろそろだな。
どーーん。
大きな音がして、建物が揺れた。よく考えたらこの建物は使い道がるよな。まあいいや。潰れた後で資材として回収して、再利用だ。
魔獣が建物中へと入り込んできたようだ。ここの護衛がどれ程の強さ測れそうだ。その前に魔法陣が発生したので無属性魔法のバレットで撃ち抜いて霧散させる。
「それで、BS商会って何がしたいの?」と面接官に話しかける。
「何を言ってる。」
「いや、単純な質問でしょう。質問を変えて、BS商会が今力を入れていることは何ですか?」
「答える気はない。」
「俺はダンガル王国の乗っ取りじゃないかと思うんだけど、間違ってる?」
「何を馬鹿な。」
(さっき分身から報告を受けたしな。)
「そう。ダンガル王国の王族を獣人誘拐事件で嵌めて、親王族派の貴族も嵌めて、そろそろ自分達が懐柔した貴族を中央に潜り込ませて、王政を止めさせるか、傀儡王を立てて、自由にしようとしているんじゃないかと思っていたんだけど。違ったか?」
扉の外では引っ搔いている音がする。
「おーい、ここに餌が沢山あるぞ。」俺は大声で怒鳴った。
益々引っ掻く音が大きくなったと思ったら、バリバリバリと音がして魔獣が飛び込んできた。ゴーストウルフとグリーンウルフが最初か。かなりの数だな。護衛は何とかしようとしているが、連携をとるウルフはスピードも速く、ついていけてるとは見えない。この程度か。
「何故、魔獣が!魔獣除けが効いていないのか?!」面接官がそういいながら後ろの扉から逃げようとする。
「最後まで見ていけよ。お前達の護衛だろう。それにその扉は開かないようにしておいたから。いつも安全圏に居られると思うなよ。」
「お前は誰なんだ。」
「今それが重要か?」
話している間にもどんどん護衛の数が減っている。でかいのも入ってきているね。千里眼で見たら、他の場所には胸にハート型の毛が生えているハートベアーだね。でかいな。雌でも4m位ある。小熊二頭を連れてきている。仲良しだね。
「そんな事よりも、お前達の親分は何処に居る?ファニー商会の親分もBS商会の親分にも会いたいんだけどな。」
「無理に決まっているだろう。それに我々もどこに居るか知らん。」
「予想は立てられるでしょう。インコチャ商会、アンバチャ商会、チェイス商会、ミツビ商会、ホンコバ商会の会長に会いに行けばいいのかな?どう思う?」
「…」
「やはりそれしかないか。それぞれの本社はユリザエールにあるのか?そこに行けば会えるかな?俺は殺されそうになったんだから、会いに行っても良いと思わないか?」
「…」
「まあ、あんた等が案内してくれたら良かったけど、無理なことも分っていたから、気にしないでくれ。子供達に復讐でもされな。」
護衛は全て食われてしまい、今は面接官達を狙って結界に爪を立てている。俺が後ろの扉の結界を解くと、扉が開いて俺が連れてきた4人の獣人の子供達が手にナイフを持って入ってきた。
「こいつらが君たちのような獣人の子供達を奴隷にして、記憶を奪い、売り払っていたんだよ。そうだ、フレデリカ、どうやったらこの子の記憶が戻るんだ?」
「戻らないわ。暗示だけど、脳に焼き付けてあるから。脳を削らないと無理。脳を削れば、神聖魔法で脳細胞を戻しても、記憶は戻らない。」俺は感知と鑑定をかけながら、話を聞いていた。
「正直に教えてくれて助かったよ。獣人の子供達、その女にはまだ用があるんだ。残りの3人はいらない。処分していいよ。」
「ちょっと待て。ボスの居場所なら分かるから、殺さないでくれ。」
「本当かな?誰の居場所を知っているのか?」
「ファニー商会のボスだ。教えたら命の保証をしてくれ。」
「子供たちに殺さないように言ってあげるよ。」
「ファニー商会の会長は、ノルーナ王国の王都に居る。」
「また、遠いところに。他に支部は何処にある。」
「ユリザエールとマルセイだ。」
「ユリザエールとマルセイのどこにある?」
「サックス商会内にある。」
「これは使える情報だな。感謝する。」
「俺も言う。インコチャ商会の会長はユリザエールに居る。商会長の名前はエジルソンだ。」
「これも使えそうだ。感謝する。」
「俺は言うつもりはない。こういう仕事をしてきたんだ。いつかは殺されると思っていたさ。」
「なかなか立派な考えだ。俺もいつかは殺されるだろうし、その考え方はよくわかる。すんなり殺してやろう。」
子供達3人が飛び掛かろうとしたとる。ナイフが面接官を刺す間際、
「「「スリープ」」」
面接官は意識を失った。
「良くやってくれた。ご苦労様。やはり、残念ながら記憶は取り戻せなさそうだな。」
獣人の子供達に集合してもらい、一体となる。全くばれなかったとは、大した擬態だ。完全に独立行動していたし。分身の能力も伸びている。
俺は魔獣除けをばらまいて、魔獣を追い出した後、建物を出来る範囲で修繕した。建物の周りにも魔獣除けを並べて魔獣が入ってこなくした。
子供達がかけられていた、記憶を無くす暗示を面接官4人にかけたことで、今までのイベント記憶は消えた。これで証人としては役に立たない。そこで新しい記憶を洗脳で書き込むことにする。かつて何か獣人に悪いことをして、反省する為に辺境に隠れ住んで自分が何をすべきか探しているという感じで。苦しむだろう。そして、正しい判断をすることを望む。一応、屋敷の前には掘っ立て小屋を立てて、その中には農具を入れておく。その隣に1ヘクタールの畑を作っておく。種等も置いておく。4人ともある程度魔法が使えるようだから、最新の魔力入力式の給湯システムを付けた風呂とトイレに作り替えておいた。使えるだろう。いつかここは俺の別荘にするつもりだから、風呂は必要だ。
財産も書類も全部没収。白金貨100枚はあるな。金貨100枚はもしもの時に残しておく。1年分の食糧も残して、飛んで移動した。勿論ここへの道も作り替えて分からなくしてしまう。これで外から来ることはなかなか難しいだろう。
こいつらは勿論悪かったが、ここの前に回ってきた貴族はさらに俺が嫌いな奴等だ。俺はさっき回ってきた貴族の屋敷を一つづつ逆に回っていき、最後にワイズ伯爵の屋敷に来た時にはうんざりしていた。全くろくでもない奴等だったよ。どいつも自分たちの世が来ると宴会をしていた。奴隷の子供達を牢屋から引っ張り出し晒し者にしたり、暴力をふるっていた。
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