第41話 強制鎖国
マイクロフ聖王国の西の端の海岸。
ここは俺がよく塩を作りに来ている海岸だ。先ずはここから国境の塀を作り始める。どのぐらいの魔力でどの位の塀を作れるか実験だ。高さは10m、厚さ1mの塀を目指す。
「ストーンウォール。」
一度で30mの幅の塀ができた。全く疲れない。もっと幅広くいけるか。
「ストーンウォール。」
50m幅。今度はもっと魔力を意識的に増やしてみよう。どんどん続けた結果、一度に幅100mまで達した。これは疲れるし、緊張しすぎる。この塀は地下に3mほど埋まっているから、見える塀の高さは実際は7mほどだ。いつもの土魔法で相手側の土を抉って作るほうが効率的か?それも試してみよう。マイクロフ聖王国の側の土を抉り、それも使って塀を作り石化する。高さは同じだが、厚さは1.5mにしてマイクロフ聖王国の側からは高さが10mになった。これもいいな。魔力消費量はこちらの方が少ない位だ。根元部分も石化しているので十分な強度もある。これは一度でどのくらいの幅でできるかというと100mぐらいだった。やはり見ながらしたほうが安全だから、これ以上の幅は試さずにおく。
どんどんやっていく。昼ぐらいまですると、さすがに飽きてきた。20㎞位はしたか。この辺は人がいないからいいが、人がいるような所は夜するべきだ。気付かれると面倒なことになる。
昼食はアージを焼いて、パンで挟んで食べた。
感知で人の有無を調べながらがんがん進めていった。午後はさらにペースが上がって、50㎞は進んだろう。一度空を飛んで確認。あと50㎞程で国境の街道にぶつかる。街道の両側を2㎞程開けた状態にしておいて、最後にそこを塞ぐようにすればバレずらいはず。まだ先は長いからペースを上げよう。ネイラード近くまで行けば、人もいないだろう。これからの夜が勝負だ。
先ずは街道近くまで。今は安全性を低くして、幅300mにしている。まだまだいけるぜ。街道手前1㎞でいったん停止。街道の国境検問所に催眠魔法を掛けて、街道の反対側1㎞から再スタート。マイクロフ聖王国の側の土地を削っても気にしない。そこまで正確な測量してないだろう。もう、なるべく真っ直ぐにして、一気に幅500mだ。
川があるところは塀の代わりに柵にした。水は流れるよ。大きな魚は通れないが、将来の課題だな。どんどん作って行く。真夜中になる頃、更に180㎞ほど進んだ。とっくにネイラード王国との国境に到達していた。飛んで確認。合ってるね。もう30㎞ほど進むと湖がある。これが悩みの種だったんだよ。とにかくまず湖まで塀を作ろう。
1時間して湖まで来た。先に湖の反対側も終わらす。湖から海までの50㎞を2時間で終わらせて戻ってきた事になる。今は朝の3:30頃だろう。あと2時間ほどでけりを付けたいが。先ずこの辺りに人はいるか?漁師とかはいないのか?感知で半径150kmで探しても誰もいない。全く利用してない場所だし、誰も開発もしていない。道もない。なら俺が勝手に柵を建てるよ。俺は動物が水を飲みに来る可能性も考え、マイクロフ聖王国の側にも少しだけ湖の淵を与えるように柵を建てていった。水辺だから柵で水の動きを阻害しないように、配慮した。よし。後はユリーザ大国との街道を封鎖するだけだ。今気が付いたが、マイクロフ聖王国とネイラード王国の間には街道が無い。素晴らしい判断だ。いつかネイラード王国に行ってみよう。
街道に戻ってきた門もいらないよ。ただの塀でいいよ。俺は最後の2㎞を塀で塞いだ。更に街道の両側には、特別に塀の上を広くして階段を付けて下から登れるようにした。広くした部分には石で作った東屋を設置し、物見やぐらとして利用できる。東屋の中には竈も作っておいた。冬場の警備もあるし。この後俺はこの手の櫓を約5㎞ごとに作っていった。慣れれば同じだから、全部で40個ほども作ったか。ユリーザ大国とネイラード王国とマイクロフ聖王国の国境がぶつかる部分の塀はには、大きな櫓を建てた。櫓の上に寝泊まりできる程の大きさだ。大きな東屋で、竈も二つにした。壁が欲しかったら後から足してくれ。
良し頑張った。もう日が昇る。呪いは今夜だ。サシントン領主の城に分身を潜入させて、今日の報告が聞きたい。
俺は国境の街道横に作った東屋に横になっていた。日が昇ってから1時間ほど経ったか。馬の足音が寄ってきた。マイクロフ聖王国側は、街道もえぐれていて塀のそばまでは来れない。それでも眺めている。面白れぇ。暫くすると今度はユリーザ大国側から2頭の馬が来た。彼らも塀に近づいて、触っている。階段を見つけたので、登ってきた。俺は見つからないように天井に張り付いている。
「何なんだこの塀は。幻ではないようだ。向こう側も焦っていることだろう。一晩でこんなもんができたんだから。」
「全くだな。しかも明らかにユリーザ大国びいきだ。階段をを付けてくれて、屋根と竈もある。ピクニックが出来るぞ。さて報告に帰るか。」
「そうだな、後二人づつ左右に派遣して、この塀がどこまで続いているか調べさせよう。もしかしたら、マイクロフ聖王国全体を囲い込んでいるかもしれない。」
二人が帰ったあとは、俺の新しい土地に行った。
あーでもない、こーでもないと土地の開発を考えると楽しかった。昼前には国境の情報が領主様に届いたようだ。
「一晩で10m程もある塀ができてマイクロフ聖王国への街道が封鎖されただと!それも、どうやら国境に沿って延々と。デメトリアス、わしは疲れた。替わってくれ。」
「領主様、兎に角陛下にご報告しませんと。今のことを書いて、送るだけですから。」
「馬鹿にされないだろうか?」
「いまさら何を恐れるのですか?この半年でどれだけ異常なことがこの領で起きていることか。さっさと終わらせましょう。」
「ああ、そうだな。報告などは楽なもんだ。考えることの方がつらい。スレイニー司祭を呼ぶべきだろうか?」
「まだよろしいのでは、国境の事ですし。」
「新展開があればお呼びしよう。」
昼過ぎには俺もスポケーンに入った。領主様は分身に任せて、犬の俺はふらふらする。国境の壁のことはもう噂になっていた。暫く聞いていたが、新しい情報は無いので、スマイルになって商業ギルドにやってきた。受付のお姉さんに、
「街中国境の塀のことでもちきりですよ。これは戦争になるんでしょうか?」
「何も国からの発表はありませんね。」
「鉄鉱石を買いたいのですが、いくらぐらいでしょうか?」
「今は、1㎏が小銀貨2枚ですね。少し上がっています。」
「何故上がってきたのでしょうか?」
「戦争の噂もあるかもしれませんが、この領にあるググーイ鉄鉱山とアマゾーイ鉄鉱山からの産出が減っているからですね。」
「もう取れないということでしょうか?」
「何かの影響でうまく掘れないという噂は聞きましたが、詳しくは知りません。専門の者を呼びましょうか?」
「いえ、次の機会で結構です。では、鉄鋼石を10kgお願いします。」
鉄鉱石が手に入ったのでいつか魔力炉を手に入れよう。自分で作れないか?そのためには錬金術を磨かないと。
2階に行って、司書に鉱山への行き方とダンジョンへの行き方を聞いた。彼女は地図を見せながら丁寧に説明してくれて、俺は地図を書き写した。次にどこに行けば海に出る大きな船を作ってもらえるか訊いてみた。この国ではもちろん無理で、有名な国では、北端のノルーナ王国とスエーナ王国らしい。北は寒いので行くなら夏を薦められた。一つ不思議な話を聞いた。獣人の国、ダンガル大国、には大きな穴が開いていて、あまりの深さに誰も底まで行ったことが無い。ダンジョンとはまた違っていて、そこで取れる物を売買して生計を立てている者たちがいる。俺は礼を言って別れた。
外の屋台で串焼きとジュースを食べた。塩の値段はどうなったのか気になって親父に訊いてみたら、少し安くなったらしい。まだまだだけど、少しづつ前に進んでいるのだろう。俺としては胡椒が欲しい。辺境に探しに行かなくてはな。うちの土地の近くに生えてたらいいな。
その頃には、領主様は新たな報告を聞いていた。ユリーザ大国とマイクロフ聖王国の国境は完全に端から端まで封鎖されていた。そして、見たところ、ネイラード王国とマイクロフ聖王国の国境も封鎖されていた。
「デメトリアス、やはりこれもカーズの仕業と考えるか?」
「他に思い当たる人もいないので。」
「しかし、これで戦争は無くなったな。我が国は隔離されている者にわざわざ手を出さん。」
「塩が先に手に入っていて良かったですよ。タイミングが良すぎる気もしますが、神は我々に機会をくれたと思いましょう。」
あぶねー。しかし、バレたら逃げるだけだ。俺は自由に生きる。
飛んで、自分の土地に戻った。土魔法でいつもの家を建ててから、大仕事の前にスキルチェック。
名前:タロウ(仮)
種族:スライム(Huge)small -> medium -> large -> great -> huge -> giant -> gigantic->mammoth->monstrous->behemoth-> mountainous-> mighty->ultimate -> chaos
年齢:0
レベル:75 (冒険者で言えばBの中あたり)
HP:1852/1900
MP:2220/2300
能力:成長促進:70 魔力増進:73 強運:15 異常耐性:99 隠形:100 感知:99 五感向上:99 器用:99 変装:29 体捌き:36
鑑定:61 魔力操作:99 身体強化:99 硬化:89 糸操作:92 糸生成:87 毒耐性:99 毒生成:83 水泳:21 吸着:99(壁でもどこでも移動できる)水魔法:83 火魔法:83 土魔法:92 風魔法:90 光魔法:51 闇魔法:95 生活魔法:52 無属性魔法:74 状態異常魔法:87 呪術:86 魔法耐性:88 隠蔽:52 錬金術:59 解錠:34 罠感知:35 罠設置:35 毒付与:36 神聖魔法:5 剣術:25 短剣術:10 弓術:5 話術:11 詐術:8 斧術:10 馬術:22 槍術:17 盾術:20 兵術:22 武術:18 記憶術:10 木工:2 千里眼:22 投擲:28 鍛治:26 栽培:5
種族能力:吸収:60 分裂:63 集合:63 収納:69 物理耐性:99 リサイズ、擬態:42 腐食:20
特殊能力:自由。
加護:ラレイロ(小)
新しい戦闘スキルが増えた。木工と鍛治が手に入ったのでこれからの生活が楽になる。使えるスキルが増えた。今夜の仕事は吸収は無いから残念だがスキルは伸びないな。死んでから回収すればいいかもしれないが、気分次第だ。呪術はこの距離からかけられるか?名前だけでは厳しいな。いや待て、俺はリストに名がある120名の魔力パターンを記憶している。試してみる価値はある。スリージー商会の会長、副会長に試してみるか?しかしパニックになられて閉じこもられたら面倒だぞ。では、明日の朝発症設定にして、状態だけ確認すればいいだろう。
では、ここでスリージー商会の会長に呪いをかけよう。頭の中には会長の名前と魔力パターンを思い描き、俺は呪術を念じる。明日の日の出に発症。一週間で死亡。強力な痛みと幻覚。懺悔する。
まだ早い時間だが行くか。国境で副会長に同じ呪いをかけよう。
国境で牝馬がいるか調べることを忘れないようにと。
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