第14話 ジョージ呪われた事件 終わる

あれから1月以上経った。



もう蛇足だと思うが、簡単に何があったのかまとめる。


俺は辺境に帰って狩り三昧の生活だ。上には上がいる。一日休むと取り返すのに三日かかる。あの経験を通して、人間からもスキルがもらえると知ったので、盗賊は努めて狩るようにしている。お宝もあって二度おいしいからだ。鍛錬も続けている。転移が使いたいがまだできない。


領主一族は処刑されて、その後は辺境伯の依子のスジャータ伯爵が運営するかと思ったが、スジャータ伯爵が体調不良になったため、急遽娘のエリザベス様が一時的に(いったん始めたらそのままだろう)領地経営することになった。セバスチャンの補佐だけでは厳しかったので、何人か才能ある人間をエリザベス様が選んだ。近衛隊、騎士隊、衛兵隊も厳しく調べられ、大再編成された。ダムディは中隊長になったが、半年ぐらい経験したら大隊長になるように言われているらしい。アリアートも出世しているそうだ。

今回の事件で協力してくれた軍隊とはあれからも演習や交換体験などしているらしい。良いところを学びながらいざという時協力しましょうということらしい。軍事機密とかないのかと思うが、考えてみたら辺境だからな。人間の国との戦争はそこまで心配しなくていいのだろう。

この事件のせいで、辺境伯は凄く有名になったらしい。王との距離も近づき、信頼される貴族トップ5にはなったようだ。


ダスキン奴隷商は壊滅。ネットワークは崩壊したが、幼児誘拐はまだ存在する。俺が潰した盗賊でも何人か子供達が捕まっていた。お金を付けて、孤児院にいれたが、どうしているだろうか。


教会はスレイニー司祭が継続している。あの後、創造神教副教皇ともろもろの関係者が逮捕、処刑された。スレイニー司祭は叩かれもしたが、自浄作用は必要であり、神は見ているのだから、悪をした者は罰を受けるべきであると、堂々と宣言し、返って民衆から信頼を勝ち取った。とくに彼の解呪の瞬間を見たものは、正に奇跡と神の教えを体現するものとして崇拝している。また、これを機にスラムで炊き出しをしたり、冒険者ギルドとも協力して、仕事を斡旋したりして、皆に喜ばれている。そんなある炊き出しの日の朝に、教会の前に大量の食糧がおいてあり、信者たちは『神は正しい行いをした者を導く』を目の当たりにした。スレイニー司祭は跪いて祈りを捧げ、その日はスラムでは腹いっぱい食べられた人達があふれた。それから3か月に一度同じ日に、大きな炊き出しをする事を決めた。お互いに正しいことをしあいましょうとスレイニー司祭が話すのである。この炊き出しは将来この街の名物になる。多くの街の人がお金、食べ物、労力を提供して、スラムでお祝いするようになるのだ。そして、エリザベス様は犯罪をほぼ駆逐した領主として、称えられるようになる。


ジョージは治った後にどうやらエリザベス様に尋問を受けたらしい、鑑定石付きで。ダムディかと思ったがエリザベス様とは、好敵手だな。

「貴方に呪いをかけたのは誰?」

「領主が雇った呪術師。名前は知りません。」

「何故呪いをかけたの。」

「ハンターが殺した幼女たちを片付けていた時に奇跡的に生き残りがいて逃がしてあげたが、のちにまた捕まってしまい、ハンターに殺された。その時、俺がその子を逃がしたことがばれたので、呪いの練習と手本ということで、俺に呪いをかけました。」

「その後はどうなったの。」

「辺境の森に捨てられました。」

「どうやって生き残ったの。」

「よく覚えていませんが森の中で何かを飲んで生きながらえていたと思う。」

「人にでも助けられたのかしら?」

「違うと思います。」

「誰にも会わなかった?」

「会ってないと思います。」

「断言できないのね。その後は?」

「呪いの影響がひどかったですから、百茸も生えている場所でしたし、曖昧ですいません。俺の妹のことをハンターが知るのは時間の問題でした。俺は妹を守らなくてはいけなかったので街を目指そうとしたが、武器もなかったので、発見した眠り茸や百茸をマントに包んで持って帰ってきました。」

「よくそんな茸見つけたわね。知っていたの?」

「その茸の事は聞いて知っていましたし、捨てられたところにたくさん生えていました。」

「でもすごい量よ。助けてくれた人とかいなかったの?」

「無いと思います。」

「領主の資料をどうやって手に入れたの?」

「俺は領主の資料のことは知りません。」

「俺ができたことは、ダスキン奴隷商に茸を使って忍びこむことだけでした。妹の事だけを考えて痛みを押し殺して静かに念入りに時間をかけて茸を蒔いて眠らせて進みました。全員眠らせてから、証拠を探して見つけました。簡単な仕組みの隠し金庫でした。証拠の書類を手に入れてから地下に戻って妹たちを連れ出して、冒険者ギルドに着いて、もうその頃は朦朧としていたからよく覚えていません。」

「領主側の証拠が私の所へ届けられたのだけど、何か知らない?」

「知りません。」

「フードを被った冒険者風の男に思い当たることは?」

「冒険者に特に知り合いはいませんでした。」

「あの前の日に領主城で何があったか知っているかしら?」

「ちょっと聞きました。」

「呪術師が証拠も財宝も全て盗んでいったらしいわ。呪術師は未だに逃げているはずだけど、先ず見つからないでしょうね。貴方に呪いをかけるときに何か言わなかった?」

「捕まらないでしょうね。呪いをかけられたとき別に何か特別なことを言われた覚えはありません。」

「辻褄はあってるし、鑑定石は問題ないわね。これで終わりにしましょう。ご苦労様。」

「お疲れさまでした。」


犬用の肉をどこで手に入れたか訊かれなくて良かった。完全なポカでしたね。近くに茸を落としておくべきだった。次は気をつけよう。小道具の確認。犬が肉を全部食べていれば問題なかったのかもな。小さい肉だったんだし。甘かったな。反省。呪術師が領主の証拠をエリザベス様に渡す動機が弱いな。まあ、財産全部盗んだぐらい腹立てていたと解釈してくれて、その影響で証拠も渡したと思ってくれたようで助かった。これも次に生かそう。スムーズな動機。


だいたいうまくいったけど、運が良かった。強運スキルの御蔭だ。


これがだいたいジョージから来た手紙に書いてあった内容だ。

ジョージは結局田舎に帰って両親を手伝うことを選択したらしい。エキサイティングな人生かどうか知らないが安定した生活だろう。辺境の近くには変わらないので、魔獣と戦うこともあるらしい。一度遊びに来いと言っているので、行ってみた。


そして、ここからジョージ毒状態事件が始まる。

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