第12話 援軍
カスカスカスカス。
まだ日が昇る大分前に誰かが扉を引っ搔いている。昨夜の事件のせいか気が張っているのか眠りが浅い。扉を開けるとあの犬がいる。
「朝飯には早いと思うんだが。」
ずんずん犬は入ってきて、キッチンで座り込む。
「分かったよ。喰わなきゃ帰らないんだろう。ほれ。」
肉とパンを少しやると、嬉しそうに食っている。
「いいねー犬は、幸せそうで。俺なんて明日から仕事が無いかもしれないんだぞ。そしたらお前に飯を奢ることもできなくなるんだからな。分ってるか?」
「わん。」
綺麗に食べた後にまた俺の袖を咥えて引っ張る。
「また、何かあるのか?今日は非番だし、付き合ってもいいぜ。」
俺は犬の後をついて歩く。段々と犬が早く走るので、こっちも鍛錬の為と走ってついていく。北門はまだ開いていない。門番が一人で居眠りしている。犬はそろそろと歩いて行って、門を引っ掻く。
「この門開けるのか?俺が怒られるんだが、お前は気にしないよな。」
犬はさらに引っ掻く。門番が起きる前にそっと開けてやれば、満足するだろう。
閂を外して、ゆっくりそうっと開けると隙間から犬は出て行った。俺も首だけだし、
「おい、すぐ戻って来いよ。」
犬は走っていって目の前に並ぶ20人の剣士団に向かって吠えている。
「こら、吠えるな。すいません。こいつはいつもは頭の良い犬なんですが、ちょっと今日はおかしくて。」
「委細問題ない。私はフレイクと申します。できるだけ早く街に入りたかったため待っておりました。」
「そうなんですか。私はダムディと申します。おはようございます。では、門番を起こしてきましょう。」
「失礼ながら、貴方はダムディ隊長で間違いないか?」
「その通りですが。」
「神の配剤であろうか。我々は辺境伯の騎士です。エリザベス様の援護の為にまかり越しました。よろしく、案内を頼みたい。」
紋章を確認して、
「分かりました。私はこの門の警備ではなく、犬に連れられてきただけなので、こっそり入ってください。なるべく知られない方が良いでしょうから。」
「心得ました。」
そろりそろりと全員門内に入り、ダムディは門を閉め、急いで全員を辺境伯屋敷に案内した。
エリザベス様とフレイクさんが挨拶していると、犬がまた吠えて、袖を引っ張ったあと、走り出した。
俺も走る。最後まで付き合ってやる。
次は東の門だった。ここは日頃からほとんど使われることが無い門なので門番さえいない。俺は、門を開けてみる。やっぱりだ。今回は軍隊です。
「お早うございます。衛兵隊長のダムディです。」
「リーゼ子爵家のピース軍団長です。陛下からの要請で辺境伯へ協力いたします。」
「先ずはエリザベス辺境伯令嬢と会われますか?」
「いえ、我々は城を直接包囲します。万が一にも逃すわけにはいきませんから。エリザベス様には副官のオーツを送ります。」
「では、こちらへ。」
ピース軍団長を城の前に案内すると、また犬が吠えて、走り出した。今度は南の門。ここの門番も居眠りしている。俺は犬を見る。この犬何かしてないだろうな。門を静かに開けると、ここにも軍隊がいた。
「おはようございます。衛兵隊長のダムディです。」
「チリオー伯爵騎士団のフロストです。陛下の要請で辺境伯令嬢の指揮下に入ります。」
「先ずはエリザベス辺境伯令嬢と会われますか?」
「いえ、他にも援軍が来ていると思いますので、先ずは城を直接包囲します。エリザベス様には副官のクエイカーを送ります。」
これで城全体が包囲されたので、オーツ副官とクエイカー副官を伴い、エリザベス様へと案内した。
疲れたダムディは犬をなでて気分転換をはかった。
そのころようやく日が昇り始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます