第6話 呪術師
ジョージを触手で捕まえて、完全にパラセールの状態になったところで、風魔法。ブワッと一気に上昇すると、辺境の森の上から見下ろす。
「すげー。こっち側が辺境だから、向こうに向かって飛んでくれ。街道が見えたらもっとよくわかるだろう。」
すぐに街道が見えてきた。指示通り、かなりの高速で飛び続けて、1時間もかからないうちに街が見えてきた。リゼンブルの街だ。街の防壁の内側の目立たない所に一度着地した。
「奴隷商の場所は知っているか?」と地面に書く。
「ああ。」
「呪術師の居場所は?」
「ハンターのお気に入りだから、今は城に滞在している確率が一番高い。でなかったら、ちょっと厄介だな。俺はあいつの家を知らないから。」
「先ずは、奴隷商に行こう。それから悩めばいい。」
奴隷商の屋根にそっと着地した。奴隷商館は地上3階、地下一階建てだ。
隠形、感知、五感向上はすでに起動している。この奴隷商は短毛の黒い大型犬(カリオストロの城のカールに似ている)を飼っているので、おとなしくさせてこよう。
犬に擬態できる事はプラスなので吸収したあと、屋根に戻ってきて、ジョージをつれて裏庭におりた。裏の入り口の鍵を触手で開ける。この辺りに誰もいないことは分かっている。中に入り、ジョージを引っ張る。先ずは地下から調べよう。地下には10人の人間がいるようだ。8人がかたまっていて、2人が離れているので、2人が見張りだろう。俺はジョージがついてこれるように、隠形を低くかけている。
地下室への階段を滑らかに下りていくと手前の部屋で2人の会話が聞こえてくる。
「ダスキン様から聞いたか?明日新しい奴隷の受け取りだと。今度は楽しめそうな奴隷だといいな。」
「ああ。今ここにいるのはお子様ばかりだしな。さすがに可哀想で見たくもねえ。」
「皆、違法奴隷ってことは、誘拐してきたってことだろう。狂ってるぜ、領主とハンターは。」
「それで飯食ってる俺たちも人のことは言えねえがな。」
「明日来る奴の中に、例の騎士見習いの妹もいるんだってな。」
「らしいな。」
「えれえとばっちりだ。まともなことをしようとするとこんな目に合う。人助けする気も失せるわ。」
俺はこいつらを殺すべきかどうか悩んでいる。こいつらはただ雇われて見張っているだけで、麓でもないことをした訳でもないようだ。少なくとも子供達には。俺はジョージを引っ張って一度外に出た。そこで筆談。
「明日来るらしいな。先ずは呪術師を消しに行こう。」
「妹がここに寄らずにまっすぐ城に連れて行かれたらどうするんだよ。」
「さすがに誘拐してそのままの幼女を直接連れて行ったりしないだろう。風呂に入れたりそれなりの格好をさせて、高く売りつけたいわけだしな。他にも8人の奴隷がいたからまとめて売りつける気だろうよ。それに奴隷商が堂々と昼日中に行くとも思えないから、晩飯の後ぐらいだろう。どうせ明日には奴隷商はつぶすんだ、晩飯ぐらい食わさせてやろうぜ。それよりも、地下牢の見張りの2人はどうする?わりとまともな奴らみたいだったが。」
「そうだな。邪魔をしなければ、生かしておいて証人にでもするか。」
「了解。それで、体調はどうだ?」
「まだ変わりがないな。突然死ぬだろうとは思うんだが。」
「じゃあ、急いで城に行くぞ。さっきみたいに捕まってくれ。」
空から城の上に降り立つ。庭には警備の兵がいる。十分強くなっているはずだが、怖くなってきた。初めての対人戦だ。核を動かしながら戦う練習もしてきたが、相手は魔獣だったし。慎重にいかねば。
ジョージは城への入り口へ進んでいった。空から敵が来る前提が無いのか見張りはいない。多分一番大きな魔力を持っている奴ではないかと思う。
先ずはジョージの後に続く。誰かいればジョージに後ろから教える。ジョージが向かっている部屋には確かに大き目な魔力がある。こいつか。俺は扉の外から催眠魔法のスリープを発動する。扉を開けて入ってみると、完全に眠ってはいないようだ。もう一発スリープ。これで爆睡中だ。ジョージが入ってきて顔を確認して、頷く。
後はこいつを呪い返しのせいで死んだように偽装すればよいだけだ。ポンとジョージの肩を叩くと約束通りジョージは屋上に帰っていった。俺は仕事を始めた。
呪い返しは大抵は心臓麻痺で死ぬらしい。外傷が全くないので呪術師が死ぬと呪い返しで死んだのだろうと思われるらしいのだ。この時代では心臓の作りなんかも知らないだろうし、検死もない。
毒を使うと鑑定で状態が毒と出てしまうと思うので簡単に窒息死にしよう。細くした触手を挿入していき、肺の入り口で止める。両手両足口を他の触手で抑え、肺の入り口の触手を拡張と同時に空気を吸収する。一気に空気が無くなり肺がつぶれ、酸素が行かなくなり顔が真っ赤になるが30秒もしないで動かなくなる。念のため一分ほど待ち、触手をしまい、さらに10分程待ってから、心臓を確認。感知でも確認。ご臨終です。
一度屋上に戻りジョージを見ると、もう黒くない。やはり呪術師が死ぬと、呪いが解けるのか。良いことを知った。
ポンとまたジョージの肩を叩いて。
砂を広げて、
「おめでとう、ジョージ。顔の色が元に戻ったよ。痛みはあるか?」
「いや、全く問題なくなった。ありがとうよ。スライム。」
さてバレる前に消えたいが、俺にはもう少しすることがある。
「ちょっと待っててくれ。まだちょっと用がある。」
「わかった。隠れて待ってるぞ。」
するすると移動してこの辺りにスリープを2回かける。門番以外は皆寝たはずだ。先ずは領主の部屋で執務室で物色。いろいろな書類があるが、重犯罪っぽいものが無い。やはり隠しているなら隠し部屋だろう。すぐ見つかりました。野生の感と感知能力と経験を舐めたらいけない。本棚をずらして中に入ればかなりの額の金貨や武器、それに書類にはダスキン奴隷商との契約書と依頼書。依頼書にはハンターのサインがあるし、契約書には犯罪を大目に見て対応するとし、父親で領主のバイン伯爵のサインもある。依頼の内容も違法奴隷の要望とか入っているし、十分でしょ。後は他の領主との密約が仄めかされている手紙をいくつか。これを提供して罰せられないならば、城ごと消滅させてしまえば良い。誰も惜しまないよ。
お宝もすべて収納したし、俺の老後は明るいな。ちゃんとした宝物庫も見てきた方がいいかな。武器があるかも。ということで、宝物庫だ。此処にも金貨がかなりあるけど、これは一応税金とかだろうから今回は目をつぶろう。ただ良い武器は欲しいので、見て回る。鑑定をかけて良さそうな剣2本と戦斧一つ、盾を収納。中ぐらいの剣を3本と槍を3本。後欲をかいて、ミスリルのインゴッドを5本だけもらった。大漁である。
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