君がいなくなった日
だばこ
第1話
あの夏の日君は私を置いていなくなった。
全身の穴という穴から汗が吹き出し、とても歩くことなど困難のような暑さの中、真横に見える海を片目に私〈菜々海〉がド田舎の坂をのぼっているのは高校生の時の友人の家に行くためだ。汗が額から流れ落ちるがそれを拭うのも面倒になっていた。数分歩き続けやっと目的地に着いた。一旦水分補給をし、深呼吸をし、錆び付いたインターホンを押そうとしたが、
「や!」
突然声をかけられた。びっくりして声のする方へ目を向けるとそこにはこの家の主で私の友達〈由希〉が居た。
「…久しぶり、由希」
「あれれ?あんまし驚いてないじゃーん!!」
正直結構驚いていたが由希に気づかれるのは少しプライドが許さなかったので隠した。なんにせよ由希が元気そうでよかった。と思いながら少しの沈黙が流れ気まずい雰囲気を変えようと文章を頭の中で考えたがどうにも暑さのせいで頭がまいってるらしく私のスーパーエリートな脳は答えを導き出してくれなかった。それも無理もない。なんせ由希と会うのは3年程ぶりだ。そんな私を見て気を遣ってくれたのか、
「菜々海は変わってないね」
と、由希が言葉を発した。
「そうかな?自分では結構変わったと思うんだけど…」
「いーや!変わってないね!どうせまだぬいぐるみと一緒に寝てるんでしょ?」
由希が笑いながら言ったが断じて私は成人過ぎてもまだぬいぐるみと一緒に寝ているような女子ではない。断じてない。
まぁそんな茶番は置いといてとにかく暑い。髪の毛についた汗が先っぽから雫となって垂れる。
「あっ暑いよね!とりあえず家の中入ろうよ!」
由希に言われるがまま私は家の中へ入っていった。家の中は少しホコリっぽく、年季の入った家という感じだった。そして何より気になったのは、
「…なんでクーラー着いてないの?」
「あー…それがね?クーラー壊れちゃっててさ〜ごめんね?」
「いや、まぁ別にいいけど、とにかく暑い〜!」
家の中というだけで日陰なので外よりは幾分マシだったがそれはそうとして暑い。由希がキンキンに冷えた麦茶を持ってきてくれた。麦茶の中の氷をクルクル回しながら由希が
「ここにはどれくらい居るの?」
「ん〜1週間くらいかなぁ…夏休みとはいえ仕事あるし」
「あーそっかぁ…大変だね。都会人は」
「仕事に都会も田舎も関係ないでしょ。まぁ来年も帰ってくるつもりだし!…私が居なくて寂しかった?」
「そりゃ寂しいよー!3年も帰ってきてくんないしさ!」
「ごめんて」
昔のようなやり取りをしながら喉が渇いていた私は麦茶を一気に飲み干した。
君がいなくなった日 だばこ @dabadaba5109
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