第5話 授業

「兵站を言っておられたのですね。魔動人は街に専門の職人たちがおりますし、動力は魔力ですからパイロットがいれば問題ありませんよ。必要な物資は人間と変わりありませんよ」


「魔動人ってだけはあるのね」


現代人からすればその職人や武器鎧の生産コストや人間1人の育成まで考えてコスト算出するのが当たり前だが……従軍する最中のパイロットの食料しか考えてないのね……。まぁ中世だとこうもなるのかしらね。銃弾1発の値段までわかる世界とは違うわよね。


「詳しい事はレフ街につけばわかるでしょう」


レフ街?


「これから行くところはそういう名前なんですよ、資料を読みますか?」


いつのまにやらメイドから羊皮紙を受け取ってレイナは資料を読んでいた。のぞいても意味不明な文字……


「あら、私には読めないみたい……」


「そうでしたか、学んでいただきましょう。落ち着いたら、もし良かったらニホンゴも教えてくださいな」


「慣れたものね……天才幼女ね」


ペラペラと読み進めている5歳児(中身ループ)

まぁ記憶にある通りか確認してるだけなんだろうけども。


「初めの頃は大変でしたよ……辺境伯家の教育の賜物です」


「やっぱりスパルタね。英才教育?まぁいいや、それで街に着いたら何をするのかしら」


「着くのは遅い時間でしょうから明日になるでしょう。代表者達と挨拶を行なって司祭様の鑑定を受けてからしばらくは各地の視察となるでしょうね」


「ふーん、鑑定ね」


「ヒーロー物みたいな力、私がどんな能力を持っているか教えてくださいます。民衆の前で力を公開して貴族として正式に認められるという意味もある事ですよ」


「一応それって大丈夫? ループがバレたりしない?」


「大丈夫なはずですよ? 残念ながら詳しくは鑑定でもわかるものではなくて……。逆に教会に認められるぐらいなら助かるぐらいですよ……」


「そうなんだ。苦労が滲み出てるわね」


「そりゃ、こんな幼女では皆の信用を得るのには苦労し、するでしょうからね」


「大丈夫ですよ」


流石にこの発言にはメイドがさりげなくフォローを入れた。

私達がどんな会話してるかはわからないだろうがこの辺境伯令嬢の発言は黙って聞いてはいられないのだろう。


「やはりプロフェッショナルね」


「プロフェッショナル?」


「専門家って感じでいいメイドってことよ」


「それはありがとうございます。勇者様があなたは良いメイドだと」


「素晴らしいメイド」


「専門家らしい素晴らしいメイドだと」


「勇者様勿体無いお言葉です」


それ以後またメイドは空気となった。


その後も街まで着くまでは会話は続く。


「その信用を得るってどんなことをする予定なの?」


「対巨同盟に対する立案や魔動人の改良ですかね。いくつか案がありますし、前線国家であるハジーメ商業連合への支援やレフ街にいる難民の方への職業斡旋なども考えています」


またしてもわからないことが出てきたけれどもとりあえず。


「わぁお、もう私はあなたのことを信用するわ。こんな難しいことをポンポン言える幼女を信用しない人がいて?」


「行き過ぎた改革は反発が予想されますから」


濁った目をする幼女、過去のループで色々あったのだろう。辛気臭いのはなしよ。

私はここぞとばかりに質問する。


「対巨同盟ってのはなんとなくわかるけど、立案? 幼女のいうことが通るの? あとハジーメ商業連合って勇者が建国した国よね、前線国家なの? 距離は? あと難民ってやっぱいるのね」


「わかりました。時間はあります。今のうちに少し授業と行きましょう」


そこからレイナは天才幼女の名を欲しいままにした。そういえば前回のループは国際連合の艦長なんて士官をやっていただけはあるのかしらね。


「対巨同盟は国際連合とも呼ばれはじめている世界的な同盟です。同盟は冒険者ギルドを通じて広く巨人に対抗する方法を求めています。情報発信もしていますね。後方国家の多くは悲惨な対巨同盟のニュースを真剣には受け止められていませんが……ハジーメ商業連合は海を挟んだ向こうにある大国です。ストラク王国は大陸北東にある半島国家であるとは言ったでしょうか? この半島の西南にある大陸への付け根の部分は帝国領であり、ストラク王国からみて南東、海を挟んだ向こうがわにハジーメ商業連合があります。ストラク王国が1とすれば帝国5ハジーメ商業連合3ぐらいの大きさと思ってください。帝国との戦争に際して連携を取ったことまあは友好国です。ああ、カイゼーン帝国も今の脳筋帝カイゼーン35世は善政を行なっており、ハジーメ商業連合と共にストラク王国と友好国ではありますよ。巨人が攻めてきているのに争うなど愚の骨頂ですからね。巨人共は笑って私たちの争いを眺めるでしょうから時間は稼げるかもしれませんが……」


「の、脳筋帝?」


ストラク王国が大陸北東にある半島で、大陸へと陸続きにつながっている南西に帝国、海を挟んだ南東にハジーメ商業連合と……


脳筋って馬鹿にしてないのかしら……。


「ええ、脳みそまで筋肉、それだけ豪快で実直な方で古き制度を断ち切り、多くの改革を行なった名君と評判はストラク王国にまで届いています。頭も筋肉でできてると呼ばれても怒るどころか笑う方だそうですよ。だから脳筋帝だなんてあだ名を自分で広めてしまった方なのですよ、ふふふ」


なかなか個性的な国なのね……。


その後も授業は続く。

レフ街はハジーメ商業連合に近い港町らしい。でも1番近いわけじゃないから交易路としてはそこまで大きい場所でもなく大した土地ではないという感じらしい。


大陸はそもそも南に広く北に行くほど丸く閉じる形になると……ひょうたんとかのイメージね。

他にも大陸の北西にはまた小さいながらも別大陸があるらしいし、北極とかは確認されていないとか……北とか南、つまりコンパスとかはあるのに……魔法もある世界だしここ、星じゃない可能性もあるのかしら。


そんなことを思いながらレフ街につくまで授業は続いた。


色々思いつく事はそりゃああるけれど巨人と戦うこの世界で私にできる事なんてあるのだろうか。

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