第2話 勇者と言われても……
「勇者様、お待ちしておりました。どうかこの世界を、人類をお救いください……」
画風の変わった幼女に涙ながら跪かれ、そう言われる。
チベットスナギヅネはどこに行ったのかと言われる状況になってしまった。
殺しても死なない私と謎の幼女ということでお互いの状況を話そうと言う感じになったのだ。
そこでもう一度私が
「いや、日本とかアメリカとか知らないかな〜知らないかー多分異世界から来てどうやらあなた、こんな幼女に取り憑いてしまったと思うんだよ〜」
と蛮族幼女にビビりながらも、私の口がなんとか言うと、幼女はしばらく呆然としたのちに涙を流しベッドから出てきて跪いて冒頭のセリフを言う始末だ。
それに対して私は……
「あー、ワタシ、一般人、平民、understand? ok?」
テンパった。
「あ……なるほど。そういえば、ハジーメ商業連合を作られた先代勇者の日本という国には貴族制度や魔法に馴染みがなく相当困惑されたと記録がありましたね……いきなりのこと、失礼しました。それでは、私のことを話しましょう」
「お、おけー」
どっちか子供かわからない。
しどろもどろは私で、泣いていた幼女は既に切り替えたのか冷静だった。
ということで幼女らしからぬ幼女の話を聞く。
色々気になる単語が既に出ているがこれでまぁ異世界なのは確定だ。
魔法って言ったわよ……この子。
「私の名前はレイナ・トラベルタ。今はストラク王国トラベルタ辺境伯後継令嬢というところです。そうですね、どこから話したものか……」
ふむ、辺境伯?
なんだか話しづらそうだったので相槌がわりに私は思ったことを口から出す。
「辺境伯っていうと辺境の田舎者って馬鹿にされて冷遇されたりする感じのあれ? というか今は?」
ちょっと失礼かもしれないけど、勇者様って言われてるし、話しやすくなるかなってフランクに話す。
既に一度首切られてるし跪いて助けを乞われたし後々のことを考えると誤解はない方がいい。
女は度胸よ。
階級社会で名誉を傷つけるのは死あるのみ、辺境伯ディスは地雷なんて可能性は十分にある。
けれどこの幼女、レイナ・トラベルタは私にそう言われても冷静だった。
「いえ、ストラク王国における辺境伯は王国の防衛を担う重要な地位ですので伯爵や宰相とも並ぶと言ってもいい高貴なものですよ」
蛮族幼女ではなかったのかもしれない。
続けて答えてくれる。
「……そう、今はです。この国もあと5年もしたら前線国家になります。滅亡は避けられません。ついさっきまで私は国連軍の飛行戦艦の艦長をしていたのですが……それは今から15年後のことで……さらにその前は魔動人の1パイロットでしたけど……何から話したらいいものか……」
苦痛と悲壮感を漂わせた幼女はさらっとなんだかたくさんの情報を投げつけてきた。
前線国家? 滅亡? 国連軍? 飛行戦艦? 15年後のこと? まどうじんのパイロットって?
はー、お姉さんもうお腹いっぱいかもしれない。
きっとこれは白い世界のいわゆる転生の間に神様からの説明ってやつが必要なやつだわ。
こう頭にインストールされるやつが欲しいわね。
「私は5回同じ生を繰り返しました。その全てにおいて、巨人族には敵いませんでした」
目の前の幼女は色々話した後、そう結論づけた。
彼女、レイナ・トラベルタ辺境伯令嬢が言うには、この世界ラーシアには巨人という人類に敵対的な種族がいるらしい。
こういうのってテンプレだとゴブリンとかだったり魔王だったりしないかしら、巨人ねぇ……。
私は詳しく巨人の事を尋ねた。
巨人は一言で言えば蛮族。
煙をモクモクして何も考えず人間を捕食するなんて生優しいものではなく、地上の生物絶対殺すそれが誉れ……みたいな社会を持つ感じの地底に住む蛮族らしい。
それがどう言う感じかは追々知るとして、経緯としては約100年前に大陸最南端で地下に眠っていた巨人に遭遇した人類は宣戦布告を受けたらしい。
「此度の地上種よ。我々を楽しませろ」
とかなんとか言われたそうだ。
なんと言葉を喋るけれど、価値観が異なりすぎて意思疎通は困難な相手らしい。
それ以来巨人に侵略され続けて今は大陸の半分は巨人によって滅ぼされたそうな。
遭遇から100年経っても滅んでないのは巨人族が縛りプレイをしてるからとかで……それがさっき言ってた誉れってやつ。巨人族の社会にも色々あるらしい。
そして彼女はそんなこの世界でループしているという。
その初めは彼女曰く、この国が滅んだ後、逃げ込んだ先の島国で行われた勇者召喚の儀を改造する実験に参加した結果、ループし始めたとかなんとか。
彼女の話によればこの世界の人類はいずれ巨人に滅ぼされるようだ。巨人のこない島国に逃げ込んでもなぜが息苦しくなって次第に人が倒れるようになってそのまま滅ぶらしい。
巨人に支配された地域は森林さえも無くなるらしいので酸素でもなくなったのかしら……
でも確か、大半の酸素は海で作られてるはずだったような気もするからあるいは魔法的なサムシングかもしれない。
「なんともヘビーね。まぁループしてるなら今回も行けるところまで行けばいいんじゃないかしら? こう言うのって諦めないことが肝心よね。あなたには無限の残機があるわけでしょ」
そんな話を聞いても私の口から出るのは他人事。
ただのオタクの私が力になれることなんてあるのかしらね?
まぁ2度目の人生だし、この世界に滅びが迫ってると言われても私自身は気楽なものだった。
だってなんの思い入れもない世界だし……。
急に転生して異世界を救ってくれなんて言われて、よし助けようだなんて、普通は思わないのだ。
それこそ神格クラスの存在の介入ぐらいなければと、転生ものに一家言ある厄介オタクの私は考える。
前世知識チートで成り上がってハーレムよ!とかもそんなガツガツ飢えてないしね。
スローライフ! とかも別にもう死んだし今更ねぇ〜。
娯楽もどうせ大したものないでしょ。
別に今すぐ死んでもいいわよってぐらい冷めてるというかなんというか……輪廻転生って罰的なサムシングじゃなかったかしら、死後にこんないきなりハードな世界とか救いはないんですかって感じね。
そんなわけで見た目幼女、心はどうやらボロボロな存在に助けてくれだなんていわれると……同情よりもドン引きね。
あ、そもそも世界に関してはこんな子供1人からの情報じゃ何も判断できないわね……。
「いつまでこのループが続くかはわかりません、実験で起きた予期しない結果ですし、あなたが来た。ループに変化が起きたのですから次があるとは限りません。だから今回のチャンスも無駄にするわけにはいかないのです」
私の内心も知らずに真面目に目の前の幼女、レイナ・トラベルタ辺境伯令嬢はそう言う。
私はとりあえず黙って頷いておいた。
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