第43話 稀少種の保護はいらない

 ……と、ここで【スーパースターズ】の二人が自己紹介してきた。

「スターリン・ジャージーだ。よろしくな」

「エムレル・スターレインだ。よろしく!」

 だからスーパースターズか、という名前の二人と握手をしたら、「護衛が入り用の際はぜひ声をかけてくれ!」って言ってきたんだけど。

「いらねーよ! なんでセイバーズがセイバーズの護衛雇わなきゃなんねーんだよ!」

「今回は、俺が罠に嵌められてソロでキマイラを討伐させられそうになったからですから! 二人でなら余裕で討伐できますよ!」

 俺とエドウィンがキレて言い返したら、二人が呆れたように首を横に振る。

「ばっか、何言ってんだよ、魔物はお前らが倒さなきゃ意味ないだろ!」

 って叱られたんだが。じゃあなんでだよ?

「護衛は、人からだ! お前らをつけ狙うヤバい人間どもから守るんだよ! 魔物は倒せても人は殺したことないだろ? アイテムハンターなら間違いなく人殺しの任務はしないしな。俺たちは、そういう連中からお前らを守る、ってワケだ」

「「…………」」

 俺とエドウィンは黙った。


 ……え、セイバーズって人殺しもやるの?

 チラッとシモンズ教官を見たら、苦笑していた。

「……そういう任務もある。何かから守る、というのは、魔物だけではないということだ」

 と説教された。


 やれと言われたら、やる。けど、アイテムはドロップしないのでアイテムハンターには回ってこない依頼だと、シモンズ教官が言う。

 ゆえに、護衛任務は今後も依頼としてはない、と、キッパリと言われた。

「だが、身を守るために相手を殺すくらいの覚悟はさすがにしておいてくれ。君たちを狙う人間は、今後もっと増えてくるだろう。先ほどの彼らの反応から見ると、専門の護衛がつくかもしれないが……」

 シモンズ教官が付け加えてくる。

 うーん……。それは嫌だよな。

 エドウィンも鼻に皺を寄せ、

「いらねーよ!」

 と、繰り返した。


 しばらくしたら、ジェイド学長とキャル鑑定士が帰ってきた。

「よかった~! ヤバいかと思ってたよ~!」

 キャル鑑定士が抱きついてくる。

 はいはい、どうせ通過儀礼で『絶対結婚しない』人ですからね。どうとでもしてくださいよ。

 ジェイド学長からは、

「無事だったか。安心した」

 と、淡々と聞かれたので、頭を下げた。

「お騒がせしました」

 ジェイド学長が片手を上げる。

「いや、私こそすまなかった。遺恨の残る解消の仕方だったし、家庭の事情だからと咎めなかった私の落ち度だ。……君が、弟であるユーノ・モーガンに負い目があるのはわかっていた。だからこそ、ポイントを総取りさせていたのだと。……本来、その行為は違反ではないにしろ、厳重注意の後チーム解消になる」

「え」

 …………そんなこと、校則に載ってなかったけど。

 キャル鑑定士が笑いながら言った。

「むかーしね、そういうチームがいたの。相手のポイントを総取りして、優秀に見せていた子がね。基本は半々、でもそのチームは、一人が戦って一人がサポートしているからって理由で全ポイントをもう一人に渡していた。成績だけ見れば、彼女は非常に優秀。だけど、セイバーズの試験では落とされた。個人の実力は、セイバーズとしては満たない、ってね」

 ……でも、ユーノはそんなことなかったけど。

 ジェイド学長が付け足した。

「もちろん、何もしないバディだっているかもしれない。その時は教官が二人の戦いを見るが、どちらにしろその二人は『チームを組む適性がなかった』と判断し、生徒の許可を得ずチームは解消する。あの頃、君とユーノ・モーガン君のチームはそう判断され、解消は秒読みだった」


 ……そうだったのか。

 話がトントン拍子に進んでいったのは、もともとチームの解消を考えられていた俺たちがいて、そこにエドウィンたちがチーム解消を願い出た、ものすごく間が良かったというわけか……。

 あの時のジェイド学長の、ユーノへの圧を思い出した。知っていたから、そう言った。エドウィンたちが解消したからではなく、俺たちの解消の方が決定していたんだ。

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