第44話 女性に年齢は禁句です

 キャル鑑定士は、怒りながら笑っていた。

「ちなみに、校則に載ってないのは~、載せると抜け道を探すおバカちゃんがいるからさ〜。対策を立てられないように即解消! あと、最初にソレをやった子、君もよーくご存じの彼女だよ~」


 え。

 彼女って……。


「そう! ユーノ君の母上さ~。彼女、君のお母さんとチーム組んでて、君のお母さんがサポート専門だからって、ポイント総取りしてたんだよ! で! その手口をユーノ君に直伝したんだよ!」

 キャル鑑定士の話を聞いて、俺は口を開けて呆けてしまった。


 母さんは義母のバディだってのはユーノから聞いたけど、ポイント総取りしてたって? しかも、セイバーズ試験を落とされたって……。

「……ユーノはなんかいいように言ってたけど、もし試験に受かってセイバーズになっていたら、自分が父さんと組むつもりだったんじゃないか……!」

 そうとしか思えない。


 親友である母さんが父さんを好きだから身を引いたんじゃない。

 母さんを利用してポイントを総取りして、自分の成績を上げて、セイバーズになったら母さんより先にバディを申し込もうとしていたけど、セイバーズの試験に落ちて、母さんが申し込んだ。恐らく母さんも、俺と同じようにワーストワンだっただろう。絶対に断られる、そう内心で嘲っていたのに父さんは受けた。……父さんは、誰でも良かったから。

 ユーノの父親は父さんを親友だって言ってたけど、父さん自体はどう思っていたか……。


 ――そして、そんな連中の犠牲になって、俺は幼少期からいじめられ、ついには殺されそうになったのかよ……。

 俺は、怒りのあまり、思いきり息を吐いた。


 ジェイド学長が、慰めるように肩を叩く。

「次からは、もう少し周りに相談するといい。アカデミー生はすべて等しく相談に乗っている。アイテムハンターはもちろん、セイバーズだって人手不足だ。給料は高いが常に命の危険が伴うし、怪我をして引退せざるを得なくなったりもあるし、そもそもずっと働ける仕事でもない。私もキャルも年齢を理由に引退したしな。教官たちもそうだ。だが、年の功でいろいろ相談に乗ってやれる。頼ってきなさい」

 ……ありがたい言葉をいただいた。

 そうだな、俺、もう少し周りに頼れば良かった……。


 …………ん?

「え……っと? キャル鑑定士が年齢を理由に引退? あ、ジェイド学長もですが……セイバーズの年齢的顕界ってそんなに短いんですか?」

「そうだな、君の父親は今三十五歳か……。あと十年は厳しいだろう。私は三十八のときに引退した。キャル鑑定士もそのくらいだったか?」

「ジェイド君、女性に年齢の話題は禁句ですよ~」

「「はぁあ!?」」


 どう見ても俺よりちょっと上、いって二十代にしか見えないキャル鑑定士、三十八オーバー!?

 俺は目を剥き、エドウィンはボソリと呟いた。

「ロリババァ……」

「天誅!」

 エドウィンは、二発目の踵落としを喰らった。

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