第20話 堂々と聞け!
次に、グレッグ・クワンの報告を聞く。
「チームを元に戻すよう訴えてるらしいぜ」
という、ある程度は予想していたけど、なんてバカなことを……という話を仕入れてきた。
「いや、無理だろ」
元よりチーム解消は重い決断だ。命を預け合うバディなのだから、解消よりも二人で問題を解決し、結束を深め、チームワークを築くべき。これがセイバーズのチームのあり方、と考えられているからだ。
だから、チームを解消するということは、そうとうな軋轢があり、修復不可までに絆が壊れている、ということを指す。
そんな二人なのに、再結成するわけがない、どちらにしろまた解消するか、下手をしたら命を落とす、だからあり得ない。
そういうことで再結成は認められていない。
さらに、俺とエドウィンは稀少中の稀少、Sランクのアイテムハンター候補生だ。学長からも、俺たちのチーム解消は認められないと宣言されている。
ユーノがどう画策しようとも、大人の事情で絶対に認められないのだ。
そこまで思考してハッとした。
そうだ、俺たちが……いやエドウィンがどれだけやらかそうが、ほとんど揉み消されるんだった。何か違反をしでかしても、学長を筆頭に教官たちが後付けで理由をつけ、せいぜい罰則を喰らう程度で済むだろう。
ユーノがそれを依怙贔屓と騒ごうが、絶対に覆らない。罠に嵌めて退学に追い込もうとしても、学長が揉み消すに決まってる。
特に俺とエドウィンが「やってない」と言い張れば、徹底的に調べ上げて、どんな状況証拠が出ようとも、必ず罠に嵌められたことを掴んでくれる……と信じている。
ようやくそれを思い出し、胸をなで下ろした。
「ん? どうした?」
ホッとしたのをグレッグ・クワンに悟られたので濁す。
「いやなんでもない。えーと、訴えてる以外にないか?」
「無理なら、代理として互いの元バディをつけてくれ、だとさ」
「…………」
さすがユーノ、というべきか。抜け穴を見つけてくるよな。
確かに代理は認められている。というか、普通は代理だよ。解消するのがおかしいよ。
「……で? その話ってどうなんだ?」
俺のところにその話が来たことはないが……。これから来るのか? ユーノに直接頼まれると、俺としては断れないだろう。
俺が尋ねたら、グレッグ・クワンがキョトンとして言った。
「何言ってんだよ、どう考えたって無理だろ。〝代理〟って普通、バディが怪我とか病気とかしたときに頼むものだぜ? どっちもピンピンしてんじゃねーか。もしまたチーム解消を考えてて、相性を見るため代理を頼むのなら、二度と組めない相手に頼んでどうすんだ、って話だろ」
「確かにな」
グレッグ・クワンでもわかるその理屈、教官は当然わかっていて、ユーノに諭したんだな。
「そもそも、それってミエミエだろ? ユーノの奴、お前のポイントがほしくて代理を頼むんじゃないか。そんなん誰だって許さねぇって思うよ。そこまでして個人成績を上げたいのか、ってよ」
グレッグ・クワンが吐き捨てる。
俺は困って頭をかいた。
「……ユーノとハムザ・ヘンダーソンの相性が本当に悪いのかもしれないじゃないか。……別に、俺とユーノの相性は悪くなかった。エドウィンとの方が最初は大変だったんだ。ユーノは、自分ではあまり動かないけど、よく気がつく奴だったから……」
ボソボソ弁解を入れたら、グレッグ・クワンが呆れたような、生温かい眼差しで俺を見る。
「はいはい。……でもな、お前とエドウィンがランキングから外されたの、俺らからすれば結構ショックな出来事だったんだよ。確かにお前らのチームは努力じゃどうにもなんねーところを評価されてるけど、だからってランキングから外すか? どっちも元バディにポイント総取りにされた結果、ワーストだったんだぜ? トップの連中の鼻を明かせるはずだったのに、ランキングから外されて、さらにトップの奴がポイントほしさに代理やれ、って言ってくるのって、俺からするとそうとうムカつくんだけど」
グレッグ・クワンが憤っていた。
……知ってたけど、コイツってホント……。
「短気だよな……」
「うるせー! お前、俺がお前のために怒ってんのにそんな感想かよ!?」
今度は俺が怒られた。
――と、コソコソ偵察していたら、エドウィンに見つかった。
「気にしてんなら、コソコソしてんじゃねーよ! 堂々と聞け!」
そう怒鳴ると、どこかへ行ってしまうエドウィン。
俺は非常に不安になったので後を追いかけると……。
「おいテメー、ユーノだったか? いつまでもニーチャンに心配かけんなよ、自立しろ、自立!」
と、トパーズクラスに乗り込んで叫んでいた。
マジでバカだった。
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