タヌキになりたかった男

春風秋雄

目の前に現れたタヌキの夫婦

夜の山道を車で走っていると、50mくらい先の道路の真ん中に何かいるのが見えた。

「あれ?何かいる!」

車のライトに照らされて、もぞもぞと動く物体2つ。俺はブレーキを踏み、スピードを落とす。車が20mくらいに近づいて、初めてその物体は身の危険を察知したのか動き出した。二つの物体は左右に分かれ、ひとつは左の草むらに、もう一つは道路を横切り右側の草むらへ向かってよたよたと走る。タヌキだ。冬毛でモコモコのお尻を振りながら走る姿は可愛い。俺は物体を避けようとして対向車線にはみ出していたので、右側に走るタヌキにぶつかりそうになり、慌てて左にハンドルを切る。

「あれ、タヌキ?」

絵里奈が聞く。

無事タヌキの横をすり抜け、ミラーで確認するが後は真っ暗で何も見えなかった。

「タヌキだったね」

娘の美桜(みお)にもタヌキを見せてあげたかったが、美桜は後部座席でスヤスヤと寝ている。

「同じくらいの大きさだったから、あれは親子ではなくて、ツガイだったのかな?」

「タヌキの子供は冬には親離れして、別行動をするから、親子ではないだろうね。おそらくツガイだろう」

「そういえば、タヌキは一夫一妻制だって聞いたことある」

「そうらしいね。タヌキは夫婦愛が強くて、子育ても夫婦でして、片方が亡くなっても、新しいパートナーを探さずに、残りの一生を独りで過ごすと言うね」

「英(ひで)君も子育て手伝ってくれたものね」

「俺はタヌキと同等か?」

「でも英君は、私がいなくなったら、新しいパートナーを見つければいいからね」

俺は絵里奈の言葉に、反論したかったが、涙をこらえるのがやっとで、何も言葉を発することができず黙っていた。

「あら?ひょっとしてタヌキ寝入り?」

絵里奈がそう言ったところで、目的地のホスピスの建物が見えてきた。


絵里奈が息を引き取ったのは、タヌキの夫婦に出会ってから2か月後のことだった。すい臓がんで、手の施しようがなく、最後はホスピスでの緩和ケアしかできなかった。まだ32歳という若さだった。

あれから10年。5歳だった美桜も中学3年生になった。早いものだ。俺も最近では新聞を読むのに手を伸ばして新聞を離さなければ読めなくなった。44歳という年は、もう若くないぞと体が言っているようだった。

俺は絵里奈を失った後、再婚はしなかった。どうしてもあの時に見たタヌキのことが気になって仕方がなかったのだ。絵里奈は「英君は、私がいなくなったら、新しいパートナーを見つければいいからね」と言ってくれた。俺の両親も、そして絵里奈の両親も、美桜のことを考えて再婚した方が良いと言ってくれた。しかし、俺はその気になれなかった。生まれて初めてタヌキを見たのが、あのタイミングというのが、偶然とは思えなかった。タヌキが絵里奈への愛を貫けと言っていたような気がしたのだ。

美桜が中学にあがったばかりの頃に「どうしてお父さんは再婚しないの?」と聞いてきたことがある。俺は絵里奈とホスピスに向かう途中でタヌキを見た話をした。すると美桜は「お父さんはタヌキになりたいの?」と言った。それ以来美桜は、時々俺のことを『タヌキ親父』と呼ぶ。


俺の名前は横内英嗣(ひでつぐ)。北陸の片田舎で建築事務所を経営している。仕事の依頼はそこそこあるが、美桜のことがあるので、なるべく早く家に帰るようにしたいと思い、タイトなスケジュールの仕事は他の事務所に振るようにしている。いつも仕事をまわしている事務所の斉藤さんからは「横内さん、いつもありがとうね。本当はこれだけの案件なら横内さんがやりたいのではないの?」とよく言われる。確かに斉藤さんに振る依頼は、仕事としてはやりがいのある案件が多い。自分の腕を試してみたいとも思う。しかし、そんな仕事に取り組んだら、家にまで仕事を持って帰りそうだ。それだけは避けたかったので、俺は後ろ髪を引かれる思いでそういう仕事を手放していた。


日曜日の午後、玄関のチャイムが鳴ったと思ったら、玄関のドアが開く音がして、

「こんにちは」

と声がした。絵里奈の妹さんの友里奈ちゃんが来たようだ。美桜がその声を聞いて玄関へ走る。

「友里奈ちゃん、持ってきてくれた?」

「持ってきたよ。本当に私のお古でいいの?」

「いいの、お古で充分だから」

二人はそんな会話をしながら部屋に入って来た。

「いらっしゃい」

「お邪魔します」

「美桜、何を持ってきてもらったんだ?」

「内緒!」

美桜はそう言って自分の部屋にこもった。

「何を持ってきてくれたの?」

「化粧ポーチ。もう使わなくなった道具も一式をあげたの」

「あいつ、もう化粧なんかするのか?」

「15歳ならするでしょ。さすがに学校へはしていかないでしょうけど、それでもリップとかしていくでしょうし、普段でもビューラーでまつ毛の手入れくらいはするわよ」

「そういうものなのか?だったら俺に言えば買ってやるのに」

「父親には言いづらいんじゃない?」

「そういうものか・・・」

「それより、家から牛肉もってきたから、今日はすき焼きにしましょ」

「勝手に持って来たんじゃないだろうな?勝手に持ってきたらお義母さんが怒るよ」

「そんなことしないよ。美桜ちゃんのところへ行くと言ったら、お母さんがこれ持って行ってすき焼きにしなさいって、持たせてくれたの」

絵里奈の実家はここから車で20分くらいのところだ。シングルファーザーで苦労しているだろうからと、絵里奈が亡くなって以来、お義母さんは毎日のようにここへ来ては美桜の世話をしてくれていた。5年くらい前に友里奈ちゃんが離婚して実家に戻ってからは、友里奈ちゃんが週に3回くらいは来てくれるようになった。友里奈ちゃんは絵里奈より4つ年下で、現在38歳だ。2~3年前から、事あるごとに「友里奈をもらってくれないか」と義両親から言われ、うちの両親からも美桜が懐いているのだから、友里奈さんと再婚すればいいじゃないかと言われてきた。しかし、俺は一向にそんな気持ちになれなかった。友里奈ちゃんは絵里奈とは少しタイプが違うが、姉妹だけあって、絵里奈同様、美形の女性だった。おそらく世の男性は放っておかないだろう。しかし、俺はタヌキのように、生涯独りを通すと決めていた。だから、友里奈ちゃんのことは絵里奈の妹さんとしてしか見ていない。俺は友里奈ちゃんに「美桜も中学生なのだから、無理して手伝いに来なくても大丈夫だよ」といつも言っている。それでも友里奈ちゃんは「私が来たいから来ているだけ」と言って、変わらずに来てくれる。確かに年頃の娘を抱えていると、男親にはわからないことが多いので友里奈ちゃんが来てくれるのは助かる。それに料理は絵里奈よりも上手だ。いつまでたっても料理の腕があがらない俺としては助かる。美桜も叔母さんというよりも、親戚のお姉さんといった感じで接している。

友里奈ちゃんに再婚はしないのかと聞いたことがある。離婚した理由が旦那さんの浮気だったので、「タヌキみたいな人がいれば再婚するけど、なかなかいないでしょ?」と言った。俺が絵里奈とタヌキを見た話をしたことがあったので、そう言ったのだろう。


その日は、美桜は修学旅行でいなかった。夜になり、今日はひとりなので、夕飯はどうしようかと考えていたところに、玄関チャイムが鳴った。

「こんばんは」

友里奈ちゃんが来たようだ。

「どうしたの?美桜は修学旅行でいないよ」

「知ってる。お母さんが、おでんを作りすぎたので、英嗣さんに持って行きなさいって言うから持ってきた」

「ありがたい。夕飯はどうしようかと思ってたところだ」

友里奈ちゃんが台所で準備をしてくれる。女性が台所に立っている姿を見て、男として何も感じないわけではない。絵里奈がいなくなって10年。俺は風俗以外で女性には触れていない。だから、俺は美桜の目があることも併せて、普段から極力友里奈ちゃんを見ないように心がけていた。しかも、美桜がいない日に友里奈ちゃんと二人きりでこの家にいるのは初めてだ。俺は友里奈ちゃんを見ないように、見たくもないテレビに目を向けていた。

「準備できたよ」

友里奈ちゃんがそう言って、土鍋におでんを入れて運んできた。

「ビール飲むでしょ?」

「うん、飲む」

友里奈ちゃんが冷蔵庫から缶ビールを2本持ってきた。

「私も頂きます」

「あれ?車で来たんでしょ?」

「1本くらいなら、すぐ醒めるわよ」

そう言って自分の分のビールもプシュッと開けて口をつけた。

おでんは美味しかった。俺の好きな牛スジがたくさん入っている。

おでんが美味しいので、ビールが進む。

「もう1本持ってこようか?」

友里奈ちゃんが言うので、頼むと言うと、何故か2本持ってきた。

「また飲むの?」

「ダメだ。止まらなくなりそう」

「帰れなくなるよ?」

「その時は泊まる」

泊まるって、美桜はいないんだぞ?

と思っても、やはり飲むときは誰か相手がいた方が美味しい。今まで友里奈ちゃんがここで飲むときは、お義母さんも一緒に来た時だけだった。こうやって二人で飲むのは初めてだった。

友里奈ちゃんは、働いているパート先の出来事を面白おかしく話してくれる。絵里奈と違い、友里奈ちゃんは話が上手だ。相手を飽きさせない。美桜とすぐ仲良くなったのも、この明るい性格だからだろう。

「以前から聞こうと思っていたのだけど」

「何だい?」

「英嗣さんは、あっちの処理はどうしているの?」

俺は思わず飲んでいるビールを吹き出しそうになった。

「いきなり何を聞くんだよ」

「いきなりじゃないでしょ。以前から聞こうと思っていたと前置きしたじゃない」

「そんなの、男なら適当に処理するでしょ」

「誰か、そういう相手がいるわけではないんだ?」

「そんな相手はいないよ」

「ふーん」

「ふーんって、何だよ?」

「お姉ちゃんがいなくなってから、誰とも?」

「そうだよ。せいぜい風俗にいくくらいだよ」

テーブルの上には、ビールの空き缶がすでに4本ずつ、計8本並んでいる。俺は酔いにまかせて、やけくそでそう言った。

「私で良ければ、いつでも相手してあげるからね」

何を言っているんだ?

「別に結婚してほしいとかじゃないよ。お姉ちゃんの代わりにはならないだろうけど、私はいつでもウェルカムだから」

俺は何と返して良いのかわからなかった。このままだと、変な方向へ話が進んでしまいそうなので、俺は話題を変えた。


ビールのあと、焼酎に変えて、二人でかなりの量を飲んだ。さすがに友里奈ちゃんはトロンとした目をして、酔いつぶれてしまった。俺もかなり酔っていたが、まずは友里奈ちゃんが寝る布団を和室に敷いて、友里奈ちゃんを起こしに戻った。いくら呼びかけても起きない。5月も終わりに近づいている時期とはいえ、こんなところで寝たら風邪をひくだろう。仕方なく、俺は友里奈ちゃんを抱きかかえ布団まで運ぶ。思ったより軽かった。布団に寝かせ、その寝顔を見た俺はドキッとした。今まで、友里奈ちゃんを異性として意識しないように、まともに顔を見ないようにしていたが、こうやって間近に見ると、本当に綺麗な顔立ちをしている。「いつでもウェルカム」と言っていた、さっきの会話が思い出される。しばらく寝顔を見続けたあと、ふと我に返り、酔いつぶれている女性に何を考えているのだと自分を𠮟りつけ、俺はその場を離れた。

俺は、その日以来、友里奈ちゃんが家に来ると、少年のようにドキドキするようになった。


美桜の担任の先生から呼び出されたのは、1学期の終業式の後だった。俺は美桜が何か問題を起こしたのではないかと心配して学校へ行った。

「お父様は、美桜さんの進路について同意されているのですか?」

俺とそれほど年が変わらない男性教諭が聞いてきた。

「進路とは?どこの高校を受けようとしているのか、本人からはまだ聞いてないのですが」

「やはりそうですか。実は、美桜さんは、高校へは進学せずに就職すると言っているのですよ」

「就職?美桜がそう言っているのですか?」

「最初は経済的なことかなと思って調べたら、お父様のお仕事ですと、経済的な理由ではないようですし、どうして就職したいのかと聞いても、本人は理由を言わないのです」

俺は寝耳に水で、どうして美桜が就職したがっているのか、まったくわからなかった。

「美桜さんの学力であれば公立高校へ問題なく進学できますので、一度よく話し合ってもらえますか」

俺は、美桜のことが何もわかっていなかった。普段早く家に帰り、極力美桜と話をするように心がけていたつもりだったが、結局上辺だけの会話だったのだろうか。俺は足を引きずるようにして校門を出た。


その日の夜、俺は美桜と話した。

「今日担任の先生に聞いたけど、高校に進学せずに就職したいと言っているそうだな?」

「高校へは行かない。就職する。それで、寮のある会社に就職して、私はこの家を出る」

この家を出る?どういうことだ?

「お父さんと一緒に暮らすのは嫌ということか?」

俺がそう聞くと、美桜は俺を睨みつけるように見た。

「もう決めたから」

美桜はそう言って自分の部屋にこもった。

俺はどうして良いのかわからなかった。俺が何かしたのか?俺は美桜に対して厳しくしたことはない。美桜がやりたいことは自由にさせていた。経済的にも裕福とは言えないが、不自由をさせたことはない。何がいけなかったのだ?俺は頭の中がパンクしそうになった。


俺は友里奈ちゃんに助けを求めた。友里奈ちゃんから美桜に就職したい本当の理由を聞いてもらおうと思った。その理由が納得できるものであれば、俺も美桜を応援しようと覚悟を決めていた。

3人で夕食を食べたあと、友里奈ちゃんが美桜に話しかけた。

「美桜ちゃんは高校へは行かずに就職すると言っているらしいけど、何かやりたいことがあるの?」

聞かれた美桜はチラッと俺を見た。おそらく俺がこのために友里奈ちゃんを呼んだということを察知したのだろう。余計なことをするなという顔をしてから、意を決したように口を開いた。

「別にやりたいことがあるわけじゃない。ただ単にこの家を出たいだけ」

「この家を出たいの?」

俺は口を挟まず、友里奈ちゃんにすべてをまかせることにしていた。

「私がここを出れば、お父さんの子育ては終わりになるでしょ?」

「それはどういうことだ?」

俺はさすがに聞かずにおれなかった。

「お父さんは、私がいることで、色々我慢している。仕事のこともそうだし、再婚のこともそう」

「俺は別に我慢なんかしてないよ」

「斉藤のおじさんから聞いた。本当はお父さん自身がやりたい仕事でも、それを引き受けたら早く家に帰ることが出来なくなるから、斉藤のおじさんに譲っているって」

「それは、お父さんにはお父さんの考えがあって・・・」

「その考えって、すべて私のためでしょ?」

「・・・」

「再婚のことだってそう。お母さんとタヌキを見たからとか何とか言ってるけど、インターネットで調べたら、パートナーを失ってから生涯独りで通すタヌキもいるけど、すべてのタヌキがそうというわけじゃないみたいじゃない」

「そうなのか?」

「すべての野生のタヌキを見ている人なんていないんだから、子孫を残すために、違うパートナーを探すタヌキだっているわよ」

確かにそうかもしれない。

「そもそも、お母さんは違うパートナーを探せばいいって言ってたんでしょ?」

俺は頷くしかなかった。

「お父さんは、タヌキにかこつけて、再婚するのが怖かったのよ」

俺はハッと美桜を見た。

「再婚したら、私がどう思うのだろう?新しいお母さんと私がうまくやっていけるだろうか?そんなことを考えて、再婚が億劫になっていたのよ」

「・・・」

「お父さんは、本当は友里奈ちゃんのことが好きなくせに。友里奈ちゃんもお父さんのことが好きなのを、お父さんも知っているくせに、私がどう思うだろう?それだけを心配してお爺ちゃんやお婆ちゃんがどんなに勧めてもウンと言わなかったんじゃない?」

俺は、もう何も言い返せなかった。

「だから、私がこの家を出れば、すべて解決するの。私がいなければ、お父さんは好きな仕事を帰り時間を気にせずに取り組めるし、再婚だって、私を気にせずに、好きな人と一緒になれるし。だから私は就職してこの家を出ることにしたの」

「美桜・・・」

「あと、お父さんは勘違いしているけど、私、ずっと新しいお母さんが欲しかった」

「え?そうなのか?」

「小さい頃はお父さんが再婚するのは嫌だったけど、小学生になってからは、参観日に他の子たちはお母さんが来ているのに、私だけお父さんなのが寂しかった。お迎えの日だって、お婆ちゃんがきてくれたこともあったけど、他の子みたいにお母さんに来てほしいなと思っていた。だから友里奈ちゃんがうちに来てくれるようになって、友里奈ちゃんが参観日に来てくれたり、お迎えに来てくれた時は嬉しかった」

「そうなのか」

「だから、お父さんは再婚して良かったんだよ。そして、まだ遅くないよ」

「じゃあ、お父さんが再婚すると言えば、美桜は高校へ行ってくれるのか?」

「再婚することで、お父さんが好きなように仕事ができるなら、お父さんが本当に自分の人生を楽しんでくれるなら、私がここを出て行く理由はないよ」

美桜はそう言って、自分の部屋に行ってしまった。


「英嗣さん、さっき美桜ちゃんが言っていたこと本当?」

「美桜のことを考えて再婚しなかったということ?」

「私のことを好きだっていうこと」

俺は一瞬ためらったが、意を決して言った。

「本当だよ。自分では意識しないように努めていたけど、ずっと友里奈ちゃんのことが好きだった」

友里奈ちゃんはジッと俺を見ていた。俺が何か言わなければと思っていた時、美桜がリュックを持って部屋から出てきた。

「今日は朋美のところに泊ることにしたから、友里奈ちゃんは泊まっていきなよ」

「おい、美桜!」

「じゃあ、お二人さん、あとはよろしくやってね」

美桜はそう言って出て行った。


俺は友里奈ちゃんに誘われるまま、友里奈ちゃんの布団の中にいた。

「私が離婚したのは、旦那が浮気したのがきっかけだったけど、本当はお姉ちゃんの代わりに英嗣さんと一緒になりたかったのかもしれない」

「そうなのか?」

「姉妹だから好みが似ているのかな。初めて紹介してもらったときから、私のタイプだと思って、お姉ちゃんがうらやましかった」

「こんなことなら、もっと早くこうすれば良かったな」

「タヌキなんかにこだわるから」

「あれは、タヌキに化かされたのかな」

「タヌキの交尾って知ってる?」

「え?知らない」

「タヌキは、一度入れたら、あそこが膨張してフィニッシュするまで抜けなくなるんだって」

「言っておくけど、俺はタヌキじゃないからね」

「美桜ちゃんはタヌキ親父って言ってたよ」

「俺は、もう44歳なんだから」

「タヌキ親父44歳、頑張れ!」

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