第4話 助け人 4

 僕は三年前まで、一人の女性のことを想っていた。それは小さくてかわいい女性だった。

 名前は関根鈴……。今でも、名前だけはハッキリ憶えている。彼女は事務担当であり、みんなから好かれていた。

 何というか、実直な性格なのだろう。それでいて愛嬌もある。当時僕は三十代前半だった。前にも話した通り、正社員になってここに来た。

 その時は、多分彼女は二十代半ば……。

 最初に見た時の印象は凄く健気な印象だった。目は釣り目で、髪型はボブヘアーで、ややぽっちゃりとした体型で、少しばかり大人しい雰囲気も醸し出していた。

 ああ、この子もきっと、今彼氏がいて、何年後かには結婚するんだな……。

 そんな温かい気持ちだったし、この子の幸せを応援したい。そんなよく分からない気持ちを想っていた。

 でも、当時事務所の人たちは僕よりも年下の女性がたくさんいた。それだけではない。物流にしても、包装にしても、若い男女がたくさんいて、僕が前パートで勤めていた鳴越物流の時は、殆どが僕よりも年配の男性女性だった。その為、色々と可愛がってくれたし、教えてもらい勉強にもなった。

 そんな、年上慣れしている僕だった――いや、今までいろんな仕事に勤めていたが、殆どが年上の上司や同僚だった。

 それが、この場所で、正社員としてやってきたときには、年齢が若い人たちばかりだったので、どう接したらいいのか困惑した。

 でも、意外と、こんなクソ真面目な僕に対して、ユーモアあふれる言葉をいってくれたり、何かとポジティブな発言が多かった。

 また、いじられたりもした。――僕も、自分がそういったキャラだったのかと再確認させるものだった。

 僕は昼から仕事に取り掛かるのだが、結局荷物のことで心が落ち着かなかった。

 ――今日、見つからなかったらセンター長にいおう。

 そう決心した。暗い気持ちの中である。

 関根さんがいたらこんな気持ちも、どうってことないんだなと、彼女がいた時のことが今にも幸せに想えている。

 半ば、諦めの気持ちで仕事をしていたのだが、構内作業していた時に、また会社の携帯電話から着信が鳴った。

 包装グループの滝沢からで、僕が電話に出ると、

「ああ、三島?」

「はい」

「あの欠品の件だけど、ごめん、ウチの女性が入れ忘れてたみたいで、探したら見つかったんだわ」

「え、本当ですか?」

 僕は思わず声高になった。

「ああ、本当にごめんな。それで、これはどうすればいい?」

 僕は思わず、目の色が変わった。

 その後、滝沢からその部品をもらい、事務所の方に足を運んだ。

「すみません、この製品ありまして……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る