第3話 助け人 3

 休憩時間では食堂があるのだが、そこで食べ物を売っているわけではなく、ただ、細長い白い机が何台か、駒付きの椅子が何脚もあるだけだ。

 そこで、パートの女性たちや、正社員の男性たちは食事をとる。一応飲み物だけはここでセルフサービスにて売っている。集金ボックスにお金を入れて冷蔵庫から飲み物を取るという仕組みだ。

 食べ物は港で、弁当を路上販売で売っている。これが各々の物流会社たちには人気なようで、最近ではあちこち店を開いている。

「三島は、今日もおにぎりか?」

 食堂で僕の隣に座った人は、島範一という僕よりも十歳近く年上の先輩だ。ここに来た時からお世話になった人でもある。

「あ、はい」

「それだけで、足りるのか?」

「まあ、忙しい時もあるんで、僕はこれだけで十分です」

「ふーん」

 そう言って、島は足を組んでサンドイッチを頬張った。この島も小食ではある。体格は痩せ型だ。

 僕と島の二人は仕事の話をした。朝のトラックの話やセンター長からいわれたフォークリフトの充電の話。それほど、深い話ではないが、お互い五年近く一緒に仕事をしているだけあって、どういった性格の人かは何となくわかる。

 僕は食べ終わった後、セルフで冷水を紙コップに入れて、それを一気に飲み干すと、紙コップを握りしめてゴミ箱に捨てた。

 そこで自分が所持している会社の携帯が鳴った。相手はここの事務所からだった。

「はい、三島です」僕は電話に出た。

「お疲れ様です。事務所です」

「はい、お疲れ様です」

「こないだ欠品があった件についてなんですけど、向こうの営業所の方がお怒りになっているので、もう一度荷物の方を確認して欲しいんですけど」

「あ、はい」

「確認してもらいます?」

「はい、分かりました」

 そういった後、「お願いします」と、向こうの女性の事務はいって電話を切った。

 僕は電話をポケットに入れた後、面倒くさいことが起こったなと、焦っていた。

 

 荷物の検品をした後に、僕ら物流はフォークリフトにモノを運び、トラックに積むのであるのだが、先方の方に、全て荷物を運んだとは思うのだが、一つ部品が見つからないといった苦情があったのだ。

 その荷物を探しているのだが、なかなか見つからない始末。こちらの方は全て送り込んだし、向こうの営業所で、更に配達をしてもらい、先方の方に荷物が行き届いたのだが、それが無いということは、どこかで荷物の中身を抜き取られているということになる。

 そんなことは、ほぼあり得ないので、先方が細かく見ていないのか、向こうのセンターに荷物があるのか、それともこの物流倉庫に荷物があるかである。

 それが分かったのが、二日前であり、センター長に報告できずにいた。報告すると、色々と怒られることは間違いないし、とにかく荷物を探せといわれるだけで、僕自身も翌日には荷物は出てくるか、出てきたという誰かから報告をもらえると思っていたのだが、今、事務所からいわれたということは――未解決ということなのだろう。

 僕は、物流の荷物をくまなく探した。部品は包装グループが担当したので、全てを段ボールに入れたといっていた。なので、それを探せといわれても……。

 僕は包装グループに足を運んで聞いてみた。

「三島、まだ、荷物が無いのかい?」

 そう聞いたのは、包装グループのグループ長、滝沢だった。

「すみません。もう一度、この前の件で包装してくれたパートの人に聞いてもらっていいですか?」

「前、聞いた時は、ウチは、全て出したつもりなんだがな」

 滝沢は少々嫌悪感を出しながら腕組みをする。

「すみません。僕も包装がミスをしたとは思っていないんですが、お願いします」

 僕は軽く頭を下げた。

「分かった。もう一回聞いてみるよ」

 白髪交じりの滝沢は六十手前である。確かに歳を取っているだけあって、顔には皺も出来てはいるのだが、キビキビ動いているところを見ると、とても六十近い人間ではなかった。

 一見頼りにはなるが、その物わかりの良さが、逆に腹の中ではどんなことを考えているのか、怖さを持っている人でもある。

 僕は包装グループを後にしたときに、昼休憩が終わったチャイムが鳴りだした。

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