第34恐怖「百鬼夜行」
人間の暮らしぶりは発展していくものだ。それと同時に、怪異なるものたちも進化している。
とある田舎町のとある踏切では、奇妙奇天烈な目撃談が尽きない。
うすら寒い夜のこと。Kさんという男性は友人宅でひとしきり遊んだあと、自転車で帰路についた。
街灯はあまりなく、視界のほとんどが闇に包まれている。自転車の灯りだけでは心許なく、道の荒れた箇所をかわすのに神経を使った。
踏切を前にしたとき、霧が出ていることに気づいた。外灯のほのかな灯りが霧によって幻想的な広がりをみせていた。
と、渡ろうとした瞬間、カーン、カーン、と警報音が鳴り出した。
遮断機が下りる前に渡ってしまおう。そう思ったのだが、警報器のランプがおかしいことに気づき、目を奪われた。
横に並んだ二つのランプが、交互に点滅する。それはいいのだが、速度が異常なのだ。一秒間に何度も高速で点滅する。
故障しているのだろうか。考えているうち、遮断機が下りてしまった。
電車が過ぎるのを待っていると、線路の向こうに灯りが浮かび上がった。だんだん近づいてくる。が、こちらも、どうもおかしい。
あれは電車なのだろうか。
それにしてはあまりにゆっくりだし、霧が出ているにしても灯りの具合が妙だ。ヘッドライトや窓から漏れる灯りのほかに、青白いものが宙を舞っているような気がする。
電車がよく見えるところまできて、Kさんは腰を抜かしそうになった。
やはりそうだ。車体の周りに、青白く光る細長いものや、ひらひらしたものが、まとわりつくように舞っている。
いよいよ電車が目の前を通過していくときになって、Kさんはさらに驚くこととなった。
電車の進むスピードは緩やかで、窓から中の様子がよく見えるのだが、そこには、およそ人間とはおもえない白い人々が乗っているのだった。なんといえばいいか……色のついていない紙粘土みたいな連中だ。
おかしな電車が時間をかけてすっかり通り過ぎてなお、Kさんはその場でしばらく呆然とした。
自分は一体、何を見たのだろう……
まったくわからなかったが、それからしばらくして、Kさんは自分と同じようなものを目撃したという人物と知り合った。
その人が言うには、電車というよりも、百鬼夜行みたいなものだったとのこと。車体は歪で、中には人間ではなく鬼や妖怪が乗っていたというのだ。
さすがに嘘くさいなと思ったが、それをきっかけにKさんは独自に調査を進めた。すると、同じ路線での百鬼夜行の目撃談は複数件に渡った。
人それぞれ、目にしたのものに多少の違いはあったが、共通するのは、必ず霧の出た夜に目撃していることだった。
Kさんは、夜霧が町を包み込むたび、必ずその踏切を訪れるようになった。が、その奇妙な電車を目撃できたのは、最初の一回きりだという。
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