第2話

 は? は?


「俺もそう思ってた! お互いのために元に戻るべきだって!」


 お互いのため? えっ? 何言ってんの、眞尋。

 私のこと好きなんでしょ? なのに、なんでそんな笑顔なの?


 全っ然頭追いつかないんだけど。


「眞尋? ちょっと落ち着こ?」

「どうして? 2人の新たな門出に乾杯したいぐらいだよ。楓は俺の理解者なんだって、十分伝わったし」


 そんな不思議そうな目で見ないでよ。

 それに理解者ってなに? 眞尋は別れたがってたってこと?


 なんでなんでなんで……本当に意味わかんないよ。

 ここは眞尋が落ち込んで、でも優しいからそうした方がいいねって切り出すとこじゃん!

 それで私がまだ納得し切れてない眞尋の手を握ってあげるとこじゃん!


「あのさ、一応確認しておくけど、私たちこのままだと別れるんだよ?」

「そんなのわかってるよ。わかってるから、笑っていられるんだよ」

「現実を受け止められなくて、情緒可笑しくなった訳じゃなくて?」

「むしろこれが夢だなんて言われたらもうおかしくなっちゃうね!」


 そんな喜色溢れた顔で言われたら、もう何も言えないって……。

 告白してきたとき、あんなに手が震えてたのに。


 てか覚えてる? ここ、そのときと同じ場所だよ?

 真剣な空気感じて逆に固まっちゃうかなって気遣って、明るいけど人が少ない時間で落ち着けるここに私が場所変えたの、ちゃんと覚えてる?


「 俺たちの始まりと終わりが同じ場所っていうのもなんだかエモいね」


 あっ、覚えてはいるんだ。


「む、むしろすこし寂しいというか、明るかった思い出が暗くなった感じがして嫌じゃない?」

「俺は違うかな。別に喧嘩別れするわけじゃないし、どちらかといえば互いに前を向いてまた歩き出すための第一歩だと思ってるよ」

「本当に前向ける? 眞尋って甘えん坊だから、次の人が構ってくれないときに私と比べちゃわない?」


 あれ? 私なに言ってんだろ。

 別れようって提案した側なのに、これじゃあ逆に離さないよう袖引っ張ってるみたいじゃん。


 眞尋も不思議そうに首傾けてる。


「えっと、だから……そう! 今の話、本当は嘘なの!」


 これだ、もうこれに頼るしかない。

 だって嫌でしょ? 今まで一度も経験してきたことない、別れを喜ばれる結末を事実にするなんて。皆、惜しんできたのに。


 私だって別に眞尋のことを嫌いになったわけじゃないし、眞尋も私のことが好きだって言ってたし、この展開ならまだ巻き戻せるは――


「あのさ」


 初めて聞いた眞尋の声に思考は遮られ、目は吸われるように合った。

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