第3話 本編2
「がんばれー、その調子」
お母さんの励ましを背中に聞きながら、私は自転車をこいでいた。
家から歩いて片道30分。遠かった。でも頑張って歩いてよかった!
公園の中に本物みたいな広い道路があって、交差点もあって、橋もある! そこで他の子も自転車やゴーカートこいでた。
水遊び場をぐるっと囲むみたいにクロスしてる自転車道路と、その道路脇にいっぱい緑。植え込みや木がいっぱい。虫よけスプレーしてるけど、あの植え込みに突っ込んだら絶対蚊に刺されそう。
それなのに、植え込みの近くに女の子がいた。白い服と帽子が目立つ子。
なんだろう。誰かとかくれんぼでもしてるのかな? その真っ白さならすぐ見つかりそうだし、なによりそこだと虫に刺されまくっちゃうよ。
自転車練習に飽きてきて、チラチラ余所見。そしたらその子も私に気付いて、手を振ってきた。片手だけ上げて私も挨拶を返したら、ニコッて笑って女の子はどこかへ行っちゃった。
私も、違うエリアに行こうかなぁ。だって混んでるから練習しててもぶつかりそうになるし。他の遊び場も行ってみたい。
もう充分かなって、後ろについてきてるお母さんをチラって見たら、なぁに? って顔。
「お母さん、そろそろ他も行きたい」
「そうね、いろんなエリアがあるし、お姉ちゃんにも声かけてくるね。次はどこいこうか?」
「動物エリア!」
「じゃあ、自転車返しておいで」
「はぁーい」
キコキコ音の鳴る自転車をこいで、私は返却しに行った。
「すっごいふわふわ。うちの千夜吉もちっちゃい方だけど、モルめっちゃちっちゃい」
「かわいいねぇ、ふるえてるね。こわくないよー」
モルモット触れ合いタイム。係のお姉さんに案内されて、ベンチに座って待っていたら、お膝に四角い布を置いてくれた。注意事項のお話をして、一人に一匹ずつ、お膝にモルを乗せてくれたんだ。
「わー、お母さん、こんな小さい子は怖いわぁ。うっかり怪我でもさせたらどうしようって思っちゃう」
しっかりがっつりモルを撫でてるお姉ちゃんと、そっと撫でてる私と、膝に乗せて動けないお母さん。
こんなちっちゃいモルを怖がってるお母さんがおかしくて、他の人達はそんな怖がってないよって見回したら、遠くにさっきの子が見えた。
足元に白猫を連れて、真っ白なワンピースと帽子の女の子。おばあちゃん家の日本人形みたいに、まっすぐで綺麗な長い黒髪。
こんなにいっぱい混んでいても、その子はすっごく目立ってて、つい目が追っかけた。
あ、気が付いた。また手振ってくれてる。どうしよう、今はモルちゃんいるから、ちょっとだけ手を振っとこう。
「ねえ、そろそろお弁当食べようよ。おなかすいた」
お姉ちゃんに声かけられて、一回目を離したらもういなかった。あんなに目立ってたのに、もうどこにも見つからない。あれぇ?
モルタイムも終わって、動物に触った後の手洗い場で手を洗ってから、芝生広場でテントを張ってお弁当にした。
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