第4話 スライム街のスライム達
ここはライルが育ったスライム街...。
毎朝毎晩...そう、いつもかも活気で溢れかえっている。
周りを見れば大小様々、形も色も様々なスライム達が沢山愉快にそして元気に飛び跳ねている。小さなものは体長10cmほどのスライムから、3mを超える大きなモノまで、それはもう様々である。
ただここはスライム街。スライムたちの街。だからスライム同士が交流し、文化も文明も存在する街。それが...スライム街。
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人族の殆どが知らない事...。それが"99%の法則"。
ツリート星には人族やエルフ族、ドワーフ族、同様、魔族など、多くの異なる種族が共存している。特に魔族は、大きく"ノーマル"と "スペシャル"に分類される。
ノーマルは、魔王"ツクヨミブレイド"が生み出す魔核による本能的な支配に縛られ、他の種族を無意識に攻撃する存在。一方で、スペシャルは自己意識を持ち、自発的に行動する能力を持っている存在。この割合は99:1とされ、魔族社会ではこれを "99%の法則"と呼んでいる。
要するに魔族の中には、無自覚で人族、エルフ族、獣人族などを襲うモノが99 %もいるという事だ。残りの1%は、どこぞの場所で同族種族間、知性の持つモノ同士が固まりコミュニティを作っている場青が多い。
人族が知らないだけで、スライム街のように街や国家を形成している場合も多い。例えば、ゴブリン族は魔族領で、、"ロドリン"というゴブリンジェネラルを中心に、大規模なゴブリン国家を統治している。
自身の意志を持つが故に、その行動は多岐にわたる。一部は凶暴化し、他国を滅ぼす道を選ぶ。一方で、他の種族と友好的な関係を築くモノ達もいる。
これらの存在は、魔核から生まれたとされている。しかし、彼らは意志を持つため、魔王に絶対的な忠誠を誓っている、というわけではない。
コミュニティーによって違いがあり、同じスライムでも、スライム街以外のコニュニティーでは、絶対的魔王主義の国家も存在する。
ただし、スライム街では、世界中の心理や教えを深く吸収した結果、他種族の多くの者が信仰する、全知全能の神"エメラル"を崇拝し、スライムの"ペラ神父"を中心に教えを広めている。
しかし、人族たちは知らない。魔族の中に、スペシャルなるモノが存在することを...。魔族だからと言って全部が全部魔王の支配下にないことを...。
なぜなら人族は、その事実を知りえる前に短命だから死んでしまう。また、他種族のエルフやドワーフ、獣人は知っているが、ずる賢く他種族を奴隷として扱う人族を嫌っている者が多く、教えてももらえない。
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"99%の法則"はスライムにも勿論当てはまる。しかし、スライム街に住むスライムは、独自の進化を遂げ、2つではなく3つに分かれた。それぞれ、"ノーマルスライム"、"スペシャルスライム"、それに"サポートスライム"と呼ばれている。
ノーマルスライムは、無自覚で他種族を襲う99%のモノにあたり、残りの1%をスペシャルスライムとサポートスライムという割合となっている。
まあ、ノーマルスライムなど長ったらしい呼び名の為、通常はそれぞれを"ノースラ"、"スペスラ"、それに"サポスラ"と略されて語られることが多い。
ノースラは世界各地に存在する魔核によって行動を支配されたスライムをさす。ノースラはスライム街には生息していない。
サポスラはスペスラのサポート役として存在するスライム。
スライム街に生息するのはスペスラとサポスラの2種類。比率的には圧倒的にサポスラの方が多く生息している。
スペスラは一つのことに特化したスライムたち。
鉄を生産する鉄スライムや、布を生み出す布スライム、治療を行うヒールスライムなど、多種多様のスペスラがスライム街には存在している。
また、スペスラは自身の能力をサポートするサポスラも生み出せる存在。その状況下によって生み出せるサポスラの数は決まっている。サポスラはその任務が終わると消滅する。
愛しあうスペスラ同士が融合して新たな
例えば水スライムと氷スライムが掛け合った冷水スライム。または鉄スライムと鋼スライムを親に持つ、鋼鉄スライム"など。スライム街には多種多様のスライムが存在する。
ただし、愛しあったからと言ってすぐに新たなスペスラが誕生するとは限らない。これは他種族と同様の様だ...。
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サポスラはスペスラからの命令に従って行動するスライム。もちろんライルの言う事にも従う。そう考えるとスライム街でライルの存在は、スペスラと同様の位置に存在していると思われる。
スペスラである農業スライムからは、耕しサポスラや水やりサポスラなどが生み出される。冬場になるとそれら多くのサポスラは消滅し、また必要な時に生み出される。
そんなスペスラやサポスラが沢山いる街。それがスライム街...。
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街には他種族同様に出店や既存のお店が立ち並び、ショッピングを楽しむスライムのファミリーやカップル達で賑わっている。至る所で大小のスライムたちがポヨーン、ポヨーンと飛び跳ねている。
「安いよ安いよ!活きのいいマグロが入ったよ!」
「ママ、食べたい!」
「私も!」
そんな楽しそうな、ファミリーのスライムたちの声。
「今日のデートの予定は?」と、頭の上にキュートなリボンを斜めにつけたスライムが、楽しそうに体を揺らしながら、相手のスライムに尋ねている声...。
かたや、「今日は、"ビバスライムホテル"の最上階に部屋を取ったんだ...。よかったら俺と一緒に...」、「まあ...はい♡」等など、色々な声が聞こえてくる。
見た目や大きさ、身につけているモノはそれぞれ違えど、みんなが幸せそう。それがライルの育ったスライム街...。
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スライム街は文明も発展している。街は夜でも昼間のように明るい。発光サポスラ達も沢山いるが、街には街灯が沢山設置されている。もちろん車や電車も走っている。電力は太陽エネルギーだ。
車道、歩道、自転車用の道、原付用の道、そして自動車道などがはっきりと区別されている。
また、歩道は少し柔らかく作られているので、飛び跳ねても体を傷つけることは無い。
さらに、ゴミ一つ落ちていないし、空気も非常に綺麗だ。ゴミ拾いサポスラ、空気清浄サポスラたちが街の至る所で大活躍。それがスライム街...。
そんなスライム街には他種族の姿もちらほら見受けられるが、スライム街に入るには入念な管理下で、パスした者だけが入ることができる。
バーモンド共和国同様、真理の勾玉の着用が義務付けられている。また、町の出入り口には真理の宝玉もしっかりと設置されている。
一説には、バーモンド共和国はスライム街の防犯設備をマネしたとも言われている...。まあ、その真相は定かではないが...。
これまでも他国の暗部がスライム街への侵入幾度となく試みられたが、住民の大部分がスライムであるため、スライム以外の者はすぐに目立つ。変装の達人であっても、スライムに変身することは難しい。すぐに警官スライムに見つかり、捕獲サポスラによって捕まえられてしまう。
そんな噂をしていると...。
「侵入者発見!捕まえろ!」と警官スライムが勢いよく飛び跳ねながら、捕獲サポスラに指示を出している。
これはスライム街の日常の一部。住民たちは慣れたもんだ。
「パパ、また変なモノ達が忍び込んだようだね」
「全く、無理と分からないのかね...」
やれやれという感じである。
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スライム街で、スライム以外でよく目にするのは、意外や意外、"ゴーレム族"である。
ゴーレムたちの多くは3mを超す。そんな大きなゴーレムと小さなスライムが並ぶと、何とも言えないこっけいさを感じさせられるが、2種族たちは非常に仲がいい。
何百年も前から、まだ村が発展し始めた頃から、彼らはお互いに協力し合ってきた。
柔らかく素早い動きのスライムと、硬く力強いゴーレム。
まさに柔と剛。
真逆だからこそ、何か通じ合うところがあるのかもしれない。彼らの親交の深さは本物で、お互いの足りないところを補いながら、それぞれの街を発展させていった。
今日も、そんなゴーレムたちが協力して作った高い城壁の前で、検問が行われている。スライムたちだけでは困難な作業も、ゴーレムたちが総出で助けてくれたから、あっという間に終わった。そんな親交を示す城壁が、スライム街を延々と取り囲んでいる。
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スライム街が大いに賑わっている。
その理由は、ジェルスライムのジェラと布スライムのヌーノが、ライルに会ったという噂を広めたからだ。そのニュースは、街のスライムたちの間で大きな話題になり、興奮が広がっている。
「本当にライルに会ったの?」と疑うスライム。また、「ライルは元気だった?」と心配そうに尋ねるスライム。
「次は僕の番かな?」と期待に胸を膨らませて呟くスライム。また、「ライルが呼んだら~、忙しいけど~、行ってあげるし~」と少しツンデレ気味に話すスライム。
それぞれの声が街を活気づけている。
そして、それらの声が大小さまざまなスライムたちを興奮させ、そわそわと動き回らせている。
スライム街のスライムたちは、ライルが子供の頃から一緒に育ってきた。ライルの優しさや思いやりをよく知っている。だから、スライムたちはライルが大好きだ。その愛情は、街の至る所で感じられる。
そして今、彼らは梅の花びらが散る広場の前でライルからの呼び出しを今か今かと待ちわびている。
その様子は、春を待つ花びらのように、そわそわと期待に胸を膨らませていた。
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