第9話 誰ですか...?
「ちょっと、ねえ、リューファン!起きて、ねえ!リューファンたら!ねえ...」
私を呼ぶ声がする...。その声の主のことを...私は知っている。
奴隷商会で私と一緒にデス・キラー病にかかり破棄された、ソフィーナの声だ。全身の皮膚はただれて痛々しい姿。そして、髪も無いエルフの娘。
ソフィーナは奴隷狩りに遭遇した時、弟や妹を守るために自らが囮となり捕まった。その後、傲慢な貴族に買われ、無理やりに犯されそうになった為、相手の男性器を噛み千切って抵抗した。
怒った貴族は、ソフィーナに煮えたぎる熱湯を頭からかぶせ、生死をさまようギリギリのところで無理やりポーションを飲まされ、死ぬことさえ許されなかった。
そんなソフィーナが一生懸命、私を呼んでいる。何?魔物でも来たの?でも、こんな体じゃ戦えないよ...。せっかく、スライム使いの彼に奴隷紋を消してもらったのに...。って、今...確か治療中だったはず。
錬金術を扱うスライムのレンちゃんに、全身を覆われて...。消化されると思った...。
「はっ!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「リューファン!ようやく目が覚めましたか!何度も呼んでいたのに!今日、主様たちはバリジン森林地帯の手前まで行く予定のようです!ご迷惑をおかけしちゃダメじゃないですか!」
目の前に現れたのは、サーコートをクールに着こなした見知らぬ女性で、彼女は私を必死に起こしている。
だ、誰ですか?
今までに見た中で、こんなに美しい女性は初めて見た。それに...お胸もデカい。何だかイラっとする。私だって小さくないのに...。私を揺する度に、揺すっている本人のお胸も、何故だかプルンプルンと揺れている...。
「すみません、あの、どなたですか?ライル様たちと一緒に旅をしているお方ですか?」と、私は目の前の女性に恐る恐る尋ねた。
先ほど、ライル様と一緒にいたサルンサさんやモーリーさんも美しかった。でも、目の前のエルフの女性はその美しさのレベル、いや次元が違う。
「何を言ってんですか?私ですよ。ソフィーナですよ!もう、リューファンさんたら、しっかりとして下さい!!」と、自称ソフィーナに叱られた。
嘘だ。絶対そんなわけがない。皮膚も滑らかだし、背中まで伸びた黄金色の髪の毛まで生えている。ソ、ソフィーナじゃ無いわよね?
「う、嘘でしょ...わ、悪いけど信じられないわ💦いくらなんでも変わり過ぎよ。あ、あの痛々しかった面影が、どこにも無いじゃない!それに、キラキラした小麦の様な髪の毛も生えているし!」
私はあろうことか自称本人を目の前で、ぶっちゃけトークをかましてしまった💦それぐらい信じられない事態だった。
「本当に私ですよ。主様の呼び出したスライムさんたちに治して頂いたのです!それに、リューファンだって主様に治して頂いた一人じゃないですか。あと、主様がヌーノちゃんとチクチクちゃんに頼んで、私たちの下着から靴、それにサーコートまで、全部用意して下さりましたよ!」
本当にソフィーナなの?もし本当なら、全身の傷が治っていて、私は本当に嬉しいよ...。それにしてもライル様の呼び出すスライム達の能力は驚異的だ。あんな職人顔負けのオシャレな洋服まで作ってしまうなんて...。
私が自称ソフィーナの衣服や靴を呆然と見つめていると、やれやれという表情で「自分の顔を見ましたか?傷は癒え、見違えていますよ?」と問いかけてきた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
彼女は私に手鏡を差し出してきた。
"自分で確認しみて"という事だろう。
私はその手鏡で自分の顔を覗き込もうとした。
だけど...。
でも、やっぱり見るのが怖い。本当にあの大きな右頬の傷が消えているの?信じきれない自分がどこかにいる...。
ライル様を信じている。だけど、心の奥底ではまだ完全には信じきれていない。そんな自分が恥ずかしい。
だが、自称ソフィーナは私の行動を見て...。
「まだ気づいていないのですか?」と、彼女は少し呆れたような表情をして私に言ってきた。
「え、何が?」
彼女が何を言っているのか分からない。私は"何に気づいていないの?"と思い、「え、何が?」と呟くと、「あなたは...どちらの手で手鏡をお持ちですか?」と尋ねてきた。
あ!ああ...!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そ。そうだ。あ、ある!失っていたはずの左手が...。まるで当たり前のように手鏡を握っている。信じられない!本当に信じられないよ...。
「ある!!私の左腕と右脚が!!握れる...動く!切り落されたはずの腕も脚も...。本当に戻っている!」
もしかして...と思い、鏡を見つめると、今度は顔の傷が消えていることに気がついた。
右頬にあった大きな傷が無い!あんなに忌々しいほどの傷が、まるで最初っから無かったかのように消えている。私は驚きと喜びでいっぱいだった。
信じられない!全てが元に戻っている!戦争に行く前の、あの頃の自分に!
私は感謝の気持ちをすぐに伝えたくて、毛布を脱ぎ捨て、生まれた姿のままライル様の元へと駆け寄った。
「ダ、ダメですって、リューファン!服を...!!」と、後ろからソフィーナが大声で叫んだ。でも、その最期の方は聞こえていなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いた!!ライル様だ!!モーリーさんやサルンサさんと話している!!
「ライル様~!!」と叫び、私は過去の戦いの中で一番の好敵手、"ウバラホルスキーの"ロングスピアの攻撃よりも、素早くライル様の懐に飛び込んだ。
「ラ、ライル様、ありがとうございます!見て下さい!私、走れます!自由に動けます!これからはお約束通り、あなた様の鉾となり盾となって一生涯お守りします!」と、私はライル様に飛びついた。
「ちょ、ちょと、リューファンさん!落ち着いて下さい!!」と、私から離れようとするライル様。その顔が真っ赤になって、とても可愛い♡
ライル様は強力なスライムを従えているのに、幼さもあって、もうダメ...♡ライル様の鉾で私を攻めたてて欲しい♡
そう、一人で欲情しきっているると...。
パチーン!!
私の頭を殴り、「何をやっているんだい!乳を揺らして!!さっきのエロフといい、同じことをするんじゃないよ!!」とサルンサさんに叱られた。
「本当に、あの元奴隷たちは...乳をブルンブルン揺らしてイラッとする...何を見てんだい、あんた!!」と、彼女は大きな声でブツブツと言っている。
「ソフィーナも同じことをしたんだ...」と、洋服を持ってきてくれたソフィーナに尋ねた。
「はい...抑えられませんでした。この感謝の気持ちを。主様は照れて「よかったね」と言ってくれたましたが...とんだ邪魔が入り、抱きしめられませんでした...」
ソフィーナはとても残念そうな表情を浮かべているが...。
「絶対にあきらめません!!」と、ソフィーナは"ふんすっ!"と、一人気合を入れた。
その一つ一つの仕草が "ぞくっ"とするほど可愛い。
あんな痛々しかったソフィーナが、今では何をやっても可愛らしい。それに何か行う度に、たわわなお胸がプルンプルンと揺れる。
何だか...イラッとする💢
あと、ああ...そうだ。レイメントの姿が見えないのに、今頃になって気が付いた。ごめんねレイメント!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ねえ、ソフィーナ。レイメントはどこに行ったの?姿が見当たらないけど?」と、ヌーノちゃんとチクチクちゃんが作ってくれたというサーコートと下着に着替えながら、私は尋ねた。
「レイメントの変化は本当に驚異的ですよ!主様は、"今回の治療の目玉はレイメントだよ!"と話されたそうです。私の目から見ても、彼の変化は衝撃的でした!リューファンもレイメントの姿を見れば、主様のお言葉がすぐに理解できますよ!」とソフィーナは教えてくれた。
「え、何?レイメントがどう変わったの?」と、ソフィーナに思わず聞き返した。
レイメントは戦争犯罪者として、見せしめとして大衆の前で四肢を切り落とされた元武道家。だが、デス・キラー病に侵されるまで、彼は生きる希望を捨てなかった、信じられないほどの前向きな男。
彼もまた、私たちと同じくライル様の"祝福"を受けたのね...。よかった。
「レイメントならヨハンさんたちと一緒に、狩に出かけましたよ。でも、あれはただ単に新しい力を試したかっただけですよ。凄くはしゃいでいましたもの...。正直..."うざかった"です」
ソフィーナは苦笑いしながら、ため息を吐いた。
でも、何だろう。ソフィーナが楽しそう。ひたすら死を待っていたあの頃が、もう遠い昔の様に思える...。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ソフィーナと話しをしていると、ライル様が私たちに近づいてきた。「2人ともすごく綺麗になったね。痛いところはない?」と、わざわざ私たちのところまで聞きに来てくれた。
「そんなお言葉をかけて頂け...」と、言いかけたところ、ソフィーナが"すー"と、私の前に出てきて「主様。勿体ないお言葉です♡」と言って、エロボディーで包み込む様にライル様を抱きしめた。
わ、私がやろうと思ったのに!
いけない。ここでライル様の取り合いを始めたら、またサルンサさんに叱られてしまう。「ソフィーナ!ダメだって!いい加減にしなさいって!」と言って、ソフィーナをライル様から引き離す。
ソフィーナ、いい?今は我慢よ!!抜け駆けは絶対に許しません!!
そんな時、遠くの方から「お~い!大冒険から帰ってきたぞ!!」と、聞き覚えのある声が聞こえた。その声は『あと、至急若様を呼んで来てくれ!!』と続いた。
レイメントだ。ソフィーナの言った通りだ。うわ~あ。なんだか....発言がうざい。それに若様を呼んでって...。ライル様に迷惑かけるんじゃないでしょうね...💦
もしもライル様に迷惑をかけたら...私が許さないからね!!
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