意味の無い時間
鈴音
意味の無い時間
空を眺めていました。晴れた日に、部屋の窓から外を眺めて、じっと一日を過ごしました。
空は色を変え、雲が流れたり、太陽がぐーっと動いたり、夜になれば、たくさんの星と月が輝きました。
私はどうして、ここで空を眺めていたのでしょう。そもそも、ここはどこなのでしょう。
考えて、頭を捻っても、わからないものはどうしようもありません。胸いっぱいに空気を吸い込んで、どっかにいっちゃえと星々にふきかけましたが、ただただ私が眠たくなっておしまいです。
遠い山の端っこが白くなって、お日様が登りました。部屋の中に、かたんと音が響いたので、振り返ったら、美味しそうなご飯がありました。
空を眺めるのも、いい加減飽きてきたので、ご飯を食べることにしました。
かちゃかちゃ、もぐもぐ、かちんかちん。狭い部屋なので、音はよく響きました。
そうして、何日も経ちました。
あっという間の日々でした。でも、毎日空を眺めて、ご飯を食べて、空を眺めるだけですから、あっという間です。
ここにいる理由は、まだわかりません。部屋の中のものをひっくり返しても、ここがどこだかわかりません。
だから今日も、意味の無い日々を繰り返すのです。
そうやって過ごして、気づけば髪が長くなりました。ご飯は毎日変わるから、飽きません。空は飽きました。
もうそろそろ、終わりたいです。意味の無い日々は、嫌です。
だから、ご飯の人にお願いしました。
ここから、出してください。何でもします。出来ることなら、何だってやってみます。
ご飯の人は、静かに扉を開けてくれました。
それから、私の頭を撫でてくれました。大きくて、力強いけど、優しい手でした。
そうして、ご飯の人は言いました。
「ごめんね。ここは、忙しい誰かの為の場所。誰かが休みなく、意味のある時間を過ごす限り、君が出ることは許されないんだ。
だから、今日も空を眺めて過ごしてね。飽きたなら、眠っていてもいいからね」
ご飯の人は、私とハグしてくれました。とてもいい匂いがして、硬いけど、心が柔らかくなりました。
だから、今日も私は空を眺めます。
雲の流れが変わりました。太陽の位置も、ズレました。空の星々は、沢山ありすぎて、よくわかりません。
意味の無い、ただ過ぎる時間。今日も、私は一人、じっと一日を過ごすのです。
意味の無い時間 鈴音 @mesolem
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