第20話 制圧

その日は突然来た。

ある者には解放、復讐。

ある者には終焉。

ある者には改革。

ある者には神の降臨。


ブリサワルス皇国は「ベツレム事変」と言われた第16宙域3276区の3丁目6番付近で始まった連合との戦闘位置から約20光年程の位置にあるブリサワルス惑星を母星とする。


皇紀5000年という皇帝が統治する独裁国家だが、国民に対して圧政を行っていた訳でもなくむしろ国母として人気があった。


この惑星の種族は第4.5種知性体だが皇帝だけは第4種知性体だ。


他星から来て統治したのか、ミュータントなのかは不明だ。


不老不死でネオテニー化しているので見た目は子供のようだ。


皇国艦隊のパトロール隊員や司令官がピータンを見て戸惑いを見せたのはピータンに国母の姿を見たためかもしれない。


ブリサワルス皇帝は1人しかいないので名前はない。


遠い昔にはあったのかもしれないが忘れてしまった。


この宙域では他星に先んじてワープ航法を実用化した事で3000の惑星を皇国の支配下においた。


善政を施し人気はあったがそれは全てではない。


それはまず統治している各惑星と母星の各軍事拠点との連絡不通から始まった。


目に見える範囲では何の変化もなかった。


宇宙船が攻撃してくるわけでも軍事施設や都市が破壊されるわけでもない。


まず、頭の中にインターコスモpと言う星間連合の公用語がダウンロードされインストールされた。


それは一斉に全皇国民になされた。


言語が理解できるようになると連合法の要約がダウンロードされる。


「星間通商連合宗主国M76星団 ウリアレス恒星団、惑星ヴァイ統一国家星間通商連合新規事業部開拓課課長ピータンが宣言する。現時点でブリサワルス皇国は星間通商連合の占領下におかれました。」


頭の中に宣言が下った時には全てが終わっていた。


軍事施設や行政機関のコントロールは既に連合におさえられていた。


「初めまして、皇帝。」


ピータンが玉座の前に立つ。


自分達よりも上位に立つ存在があるとは考えていない訳ではなかったが実際に目の前に立たれると圧倒され、戦慄する。


皇帝は玉座を立ちピータンに近づいて譲ろうとする。


「いや、座っていてください。それは帝の功績です。連合は貴国を一時的に占領しましたが直接統治する事はありません。」


ピータンの横に事務を担当するアーフが転送してくる。


「既に初期教育は終了して基本的なな連合法と公用語、そして連合の慣習や技術についてはご理解はいただいきました。」


アーフは説明を続ける。


「貴種族のレベルでは未だ連合に本加入する事は出来ません。そこでとりあえず不可侵条約と通商条約、それから安全保障条約に調印いただきます。さらに進化教育保護を受ける事をおすすめします。」


このアナウンスは皇帝だけではなく全国民にも配信された。


連合は保護教育を条件に今後の皇帝の統治を承認し保護する事を伝えた。


それって洗脳だったり、皇帝による独裁を強化していない?


「大丈夫だよシン、アーフは人間第一だし間違える事はないよ。ふふふ。」


「こわ。」


ただ今回も連合は人を殺してはいない。


艦隊は無力化して次元カプセルに収納しただけ。


知性体はマーケットとして貴重だしね。


殺してしまうことの禍根は深くて取り戻し難いから、殺すつもりなら殲滅する覚悟がいるよ。








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