第13話 治安部隊
「やっぱりここは面白いよ。」
「雑多で雑然として混沌とした感じが性に合うわ。」
人造人間(Artificial Human)アーフなのに性に合うとかあるのかな?
シン首長がエデンの治安部隊となるMPO=マッポ(Artificial Human maintaining public order)のAGM(アンダーグラウンドマーケット)詰所に来ている。
もちろんラドも。
「なんかいかがわしい雰囲気を出す様な演出は出来ていたね。あれって古代中国の上海シティの偽物マーケットを参考にしたんだよ。」
「外国が知的財産権をやかましく言う様になって当局としてはぼちぼち取り締まるふりぐらいしようかって頃の感じ。」
ラドがまるでその場にいたかのように語る。
いや、多分いたんだと思う。
「で、シン首長何買ったの?」
「ラドのフィギュア。すっごく良く出来てる。」
「いつも一緒にいるのにそれいるの?」
MPO隊員のアーフが言う。
「それに、首長がイミテーション買っちゃダメなんじゃない?」
MPOとしてはとりあえずはパトロールしなければならないけどそれはあくまで治安のためで、まともにイミテーション売買を取り締まるつもりなんかまるでない。
じつはイミテーションと言いながら製造工場ではライセンス料を支払っている。
そうでないと製造機械が動かないように設計されているからだ。
AGMはかなり前からテーマパーク化されて観光局に運営されている。
但しこの事はごく一部の者しか知らない。
だって胡散臭い方がなんかワクワクするでしょう。
密入国にしても全てMPOが把握しているしその上で黙認している。
本人達は気がついていないけれど入国と言うか入星した段階で連合法やエデンでの言語や慣習などが脳内にインストールされる。
暴れたり、他人に危害を加えたり、犯罪などは起こすことはできない。
しかもアカシックネットワークに常時アクセスした状態になるので法的なガイドラインを超えるとMPOではすぐにわかるようになっている。
まあ事故とかがないわけじゃないのだけれど。
洗脳?プライバシーの侵害?
その辺はAIだとかアーフが連合のガイドラインに沿ってコントロールしているから大丈夫らしい。
本当かな?
「ラド、五平餅は食べる?」
「シン、それ好きだよね。」
もう7000年ぐらい前、キミちゃん帝王様やピータンがエデンに来る前の頃、両親とドライブに行った時の事が思い出される。
と言っても両親とはちょくちょく会っているんだけど。
高速道路のパーキングエリアにあるお店で五平餅やソフトクリームなんかを買ってもらった。
エデンではまだそう言う設備は残っているけれど今では実用性はなく遊園地のアトラクションみたいになっているらしい。
意外とエデン黎明期以前の施設や生活文化みたいなものは修復や再現などをして残しているようだ。
ついて歩いていたMPOの隊員が「私も」と言って五平餅を買って食べ始めた。
アーフでも食べるんだよな。
アーフと人の違いってなんなのかな?
人の代わり以上にちゃんと働くってだけであまり違いを感じないし、そう言う事はあまり考えない。
アーフ側からはどう考えているんだろう。
「聞いてもインストールされたプログラム以上の事は答えないよ。それっぽい仕草はするけど考えたりしているわけじゃないんだよ。」
ラドがそう言う。
ラドもだんだんエデン人に近くなって少ししゃべるようになったような気がする。
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